30. たちいりきんし の しんそう
よろしくお願いします。
ツタ人間と化した村人達の後を追いかけて、森の様子を確認した僕達。
村長さんの屋敷を訪ねると、ちょうどツタ人間が出てきた家の人達が事情聴取を受けているところだった。
「それでは、あの……ツタ人間か?エギュがあれと戦った際に腕に傷を負って、その傷口から変わり始めたと?」
「……はい」
「なぜ、儂らに言わんかった?」
「その……本人から、寝ていれば治ると言われていて……だけど、だんだん痛みが酷くなってきているみたいだったので、今日にでも村長に相談しようと思っていたんですが……」
話によれば、先程村内の家から出てきたツタ人間は、やはりここの村人達の家族。
この村にツタ人間が現れ出した際に応戦して、ツタ人間に手傷を負わされた人達だった。
そして先程のマルシオさんと同じく、受けた傷口から異変が起こり出し、そして遂に彼らもツタ人間になってしまったということだ。
当初魔物と思われていたツタ人間と戦おうとするなど、皆元気で身体も丈夫で我慢強く、普段から多少の不調など寝てれば治る!みたいな人達だったこと。
布団や衣服の下で変異が進行していたので、家族も気付きにくかったことなどが手遅れとなった理由。
傷を負わされたところから、徐々に身体がツタ人間と化していくとか恐ろしい。
聞き取りを終えてこちらを見る村長さん達に、話は理解したということで頷いてみせる僕。
「話を聞いた限りですと、あのツタ人間に襲われるか、禁断の森のツタに巻きつかれるかして傷を負うと、その傷口からツタ人間になってしまう、みたいな感じでしょうかね」
確か、前世のゾンビ映画で見たのがそんな感じのシチュエーションだったな。
この世界では無いことだけれど、ゾンビに噛まれた人がゾンビになってしまい、そうやってゾンビがねずみ算式に増えていく。
まさか同じような状況を目の当たりにすることになるとは。
そして、もう間違い無い。
昔のブラウン村の人達が恐れたのは、あの森が禁断の森になった理由は、これだったんだ。
少し気になるのが、ツタ人間と戦って傷ついた村人はツタ人間に変わるのにかなりの日数がかかっているのに対し、マルシオさんはツタに絡まれてから、わりとすぐに変貌が始まっている点。
ツタ人間に傷を負わされた場合と、森のツタに絡まれた場合とでは、変化の速度が違うということなのだろうか。
気にはなるところだけど、だからといってわざと怪我して確かめるというわけにもいかない。
マルシオさんは、腕を切り落とした後は今のところ身体に変化は無いらしい。
彼については、しばらく様子見だな。
僕はユーナと一緒にツタ人間と化した人達を追った結果、全員が禁断の森の中へ入って行ったこと、先程油の入った瓶を投げて火を付けたにもかかわらず、森はほとんど燃えていなかったことを報告。
火を放って焼き払うという手段も通用しない可能性があることを伝える。
確認のためもう1度森に火を付けてみても良いかと提案してみたけれど、それについては村長はじめ村人達から了承はもらえなかったし、正直僕としてもやろうという気にはなれなかった。
禁断の森に火なんか放つことで何か事態がより一層悪化するということも考えられるし、燃えたら燃えたで山火事になってこの村にも被害が及ぶ恐れだってある。
そういったことを踏まえ、少し迷った上で、僕は話を聞きながら考えていたことを皆に告げた。
「退きましょう。これはもう完全に、僕達で手に負える事態じゃありません」
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