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7. ぎるどから の たいしゅつ

よろしくお願いします。

ギルドの建物から少し離れたところで、僕は一緒に歩いていた皆に頭を下げた。


「なんていうか、すみませんでした。変な空気作ってしまって」



そんな僕に、皆はいやいやと首を横に振る。


「いやまあ、いいさ。正直気が進まなかった依頼だし。何て言うか……苦手なんだよな、あのギルマス」


そう言うのは先程僕を呼び止めた女性冒険者で、名前はラルバさんという。


短槍を使う女戦士だ。


一緒にいる杖を持った男性は旦那さんで、名前はダンさん。


支援魔法を使える僧侶だけど、どちらかというと薬草などの採集や調合などが得意な薬師寄りの人らしい。


2人で『風の流れ人』という4級パーティを組んでいるのだそう。



「オレ達はギルドから集まれって言われたから来ただけで、依頼は最初から受ける気なんか無かったからな」


と、4級パーティ『黒衣の蟷螂(とうろう)』のウーゴさん。


先程「集団行動は苦手」と言っていたパーティの人だ。


「俺達も、自分でこの依頼は止めたほうが良いと判断したから断ったんだ。君に言われたからじゃない」


と、3級パーティ『巨熊(きょゆう)の剛爪』のミゲルさん。




「でも、依頼にギルマスがわざわざ同行して指揮を執るなんて、相当な力の入れ様なんだね」


依頼にギルドマスターが同行するというのは、以前クロウ共和国のホウロの町でもあったことだけれど、あれは町からほど近い集落にオークの群れが巣を作るという緊急事態だったからの措置。


だけど今回の依頼に関してはそこまで切羽詰まっているわけでもない。


何かこの依頼にかける思い入れでもあるのだろうか。



ユーナが言うと、ウーゴさんが苦虫を噛み潰したような顔で答える。


「大規模依頼を成功させて自分の手柄にしてぇんだろ。あのギルマス、半年くらい前にギルド本部から来た人間でな。実際のところはわかんねぇが、本人は左遷されたと思ってるみてぇだ。何かデケェことやって、本部に戻ろうと躍起になってるって、ベロニカが言ってたぜ」


ベロニカさんというのは、ここのギルドの受付嬢さんらしい。


「何て言うか、何かに付けてスカール公国を見下すようなことばっかり言うんだよな……」


とぼやくラルバさん。



「まあ、色々と思うところもあるだろうがそれぐらいにしておけ。それじゃ、俺達はここで。またな」


とミゲルさんが話を締めると、軽く手を振ってパーティの人達と街の雑踏の中へ消えて行った。


「よし、オレ達も行くか。じゃあな」


と『黒衣の蝙蝠』も他のパーティも去って行き、後は僕達とラルバさん、それから旦那さんのダンさんが残った。




「さて、アンタらはこれからどうする?」


「元々予定とかはなかったからなあ、どうしようかな」


今は昼過ぎ。依頼を受けるには半端な時間だ。



少し考えたところに、


「なら、武器屋に行ってみても良いか?例の剣と槍の調整を頼めればと思うんだが」


とアリサ。


そうかそれがあったか。



例の剣と槍というのは、先日ルフス公国の公都エレストアの市内で戦った際に、敵から手に入れたもの。


どちらも相当な業物らしい。


今さら返しに戻るというわけにもいかないし、かといって捨てるか売るかというのもどうかだし。


アリサが元々使っていた閃火玉の大剣と、予備武器の大型メイスは両方共先日の戦いで失ってしまったので、この大剣と槍はもうこのままもらってしまって、2本共アリサが使うことにしている。


なんやかやでこのテアレラまでは急いで来たので、アリサに合わせての調整をする暇も無かったのだ。


ここなら大きな町だし、調整を頼める武器屋もあるだろう。


滞在は多少延びることになるけど、特に問題は無し。



これまでは気にしていたルフス公国からの追手の可能性だけど、この町で聞いた話によれば、ルフス公国は現在急な政変の余波で絶賛大混乱中らしい。


これまでの政務大臣制を止めて公王様が直接政治をするというやり方に変えたは良いものの、人心一新の名目で今まで政務大臣に付いて仕事をしていた人達も軒並み解任してしまったものだから大量の仕事が公王様に集中してしまい、実務に慣れていない公王様がてんてこ舞いになっているのだそう。


アルカール様達については、既にここスカール公国が保護を表明しているのでルフス公国としては無闇な手出しは出来ないし、政府がそんななので、冒険者数人に対して国として追手を出せるような状態では到底無いとのこと。


粛正の対象になりかけて、僕達よりも少し遅れて逃げて来たルフス公国元官僚の人が言っていた話だから、信憑性は高いだろう。




そんなわけで、今の僕達には少し余裕が出来ている。


「何だ武器屋か?それなら良い店教えてやるよ」


アリサの言葉を聞いたラルバさんがそう言ってくれた。


彼女達はテアレラの出身ではないもののここに住んで長いらしいので、それならどこか良い武器屋も知っているだろう。


せっかくだしこの際に、半ば放ったらかしだった僕のククリやユーナの弓の手入れも頼むことにしようか。


ついでに僕のククリはエレストアの戦いで1本失くしてしまっているので、新しいものを頼むこととかも出来るかな。



そう決めた僕達は、彼女達の案内に付いておすすめの武器屋へと向かったのだった。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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