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5. たちいりきんし の りゆう

よろしくお願いします。

長ゼリフがあります。

僕達はそんなギルドマスターに頷く。


「はい。こちらにはちょっと顔を出しただけで、依頼を受けるつもりは無かったので」



僕の返答に、残念そうな表情になるカワーグギルドマスター。


「そうですか……ところで、お会いするのは初めてかと思いますが、他の町から来られた方ですか?一応ランクをお聞きしても?」


「3級」


「3級」


「2級」



僕達がそれぞれ答えると、周囲からは「ほうっ!」と驚いた声が上がった。


「あの歳でか?」「マジかよ」「いやでもあの服、シャドウタイガーだぜ」なんてホール内がざわめく中、驚いたのはギルドマスターも一緒だったらしい。



彼は一瞬目を見開くと、続けて話しかけてきた。


「その若さで高ランクとは……大したものですね。それだけの実力者であれば是非、今回の大規模依頼にも参加をしてほしいのですが?」


そんなギルドマスターの勧誘に、僕は再度首を横に振る。


「僕達は今旅の途中で、この町には立ち寄っただけです。数日だけ滞在したら出立する予定でした。依頼を受けるつもりはありません」


「しかし……今回の大規模依頼は、この冒険者ギルドテアレラ支部の威信をかけた一大事業です。高ランク冒険者の方が参加していただければ、皆の士気も大いに上がることでしょう。ここはなんとか一つ、お力添えいただけませんか?」


食い下がるギルドマスター。


よっぽどこの大規模依頼に思い入れか何かあるらしい。


とはいえ、僕の方にはこの依頼を受けなきゃならない理由は無いし、ついでに言うと受けたくない。


理由は……




「いえ、やはり今回の依頼は遠慮させていただきます。なんか不安なので」


「不安……ですか?」


僕の返事に、眉をひそめるギルドマスターとアーニング氏。


ありゃ、口が滑ってしまったかな。



「何が不安なのか、お伺いしても?」


とギルドマスターが尋ねてくる。


さすがに思わせぶりなことだけ言って、そのままはいさようならというのもどうかという気もする。


アリサとユーナに目を向けると仕方ないという顔で頷かれたので、僕はギルドマスターとアーニング氏に向き直った。




このままこの場で話しても大丈夫なのかという確認と、話を聞いたからといって依頼を受けるというわけではないことをあらかじめ伝えて了承をもらってから、僕は思ったことを話し始める。


「今聞いた話だと、その『禁断の森』ですか?物騒な名前と由来がある様ですが、そこがどういう森でどんな危険があるのか、入って何と戦えばいいのかというのが見えてきません。その『禁断の森』という所は村のすぐ側にあって、古くから人が入ってはいけないと言い伝えられている森なんですよね?ええと……バラーズさん」


「あ、ああ。その通りだ」


僕に話を振られたアーニング氏が、少し戸惑った様子で答える。


「何故でしょうか?」


「何故?……いや、私は早くから村を出ていたので詳しくは知らないが、田舎によくある迷信の類いだろう。今のブラウン村では、年寄りはあれこれ言う者もいるが、若い者達からはあの森を開拓すべきだという意見が増えているのは事実だ。私は何も村の歴史を否定したがっているわけではない。村の将来のことを考えた上での、今回の依頼だと理解してもらいたい」


「たとえ田舎で迷信深いところがあるにしても、森1つ立入禁止にする理由がただなんとなくだけ、なんてことは無いと思います。言い伝えの中で、そういう立入禁止の理由などは何か伝えられたりしていませんか?恐ろしい魔物がいるとか、神聖な場所だからとか、昔何か事件があってその犠牲者の慰霊のためとか」




この世界、人が立ち入れない領域というのはあちこちに存在する。


ただその多くが、険し過ぎる山や深過ぎる森、寒過ぎる雪原や広大過ぎる砂漠など物理的に踏破が困難という場合や、強力な魔物が多く生息している地域で危なくて近寄れないといった理由がある。


そしてそういった領域は基本的に、人の住む地域からは大きく離れた場所にある。


というよりも、そういった危険過ぎる場所を避けて人間が生活しているというのが正しいか。


ただし今回の依頼については、入っちゃいけないとされているその理由がわからないというのが解せないところだ。


何か危険なものがいるという場合が第一に注意なのだけれど、他の理由がある場合ももちろん気を付けなければならない。


例えばそこに大昔の偉い人が埋葬されていたりして、知らず識らずの内にそのお墓を踏み荒らしてました→お前らなんてことしてくれたんだ!→死刑!なんてことになったら目も当てられない。




「先程も言ったが、私は言い伝えの詳しい内容については把握していない。何しろ田舎の老人の言うことだから話が二転三転したり、人によって話すことがまったく違ったりもするからな。危険については、冒険者であるそちらの方が専門だろう。何も蛮勇を振るえと言っているわけではない。注意して、慎重に探索を進めてくれれば問題は無いと思っている」


確かに、年寄りにはそういうところがあるにはあるな。


でもそれならそれで、話を聞くことにまったく意味が無いということにはならないだろう。


人によって言っていることが違うなら、その話を集めて比較してみれば見えてくるものがあるかもしれないし、場合によってはそのいくつもある話が全部正しいという可能性だって無いわけじゃない。



入っちゃいけないとされている所に踏み込むというなら、少しでも多くの情報がほしい。


だってなんか怖いし。




「せめてその言い伝えに詳しい人に話を聞いて、その上で偵察か何か出して森の内部を確認してから動くということには出来ませんか?今のままでは、そこがどういう森で中に何があるのかもわからないまま足を踏み入れることになります。魔物とかならまだ良いとして、他の何か、冒険者では対応出来ないようなものがあった場合は、勇ましく入った結果ただの犬死になんてことにもなりかねません」

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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