3. ぎるど の しゅうかい
よろしくお願いします。
アルカール様やアルバート様達と別れて5日後、僕達はスカール公国の公都ボーンズから南にある、テアレラという町に来ていた。
公都ボーンズの冒険者ギルドに、アルカール様からもらった書類を提出して報酬を受け取った僕達。
ちなみにボーンズ市でバンザ伯爵からもらったご褒美の袋には、大金貨が2枚入っていた。
もう国境を越えたし、ギルドにはアルカール様からの書類を出しているので国際指名手配扱いになることはないだろうけど、それでもここスカール公国はルフス公国から近く、また関わりも深い国。
場合によっては追手が来る可能性もなきにしもあらずということで、僕達はなるべくボーンズ市からは離れるようにして、出来れば早くにこのスカール公国を出ることにしようと考えていた。
スカール公国では特にしなきゃいけない用事や予定なども無いので、僕達は報酬を受け取ったその足で運輸ギルドへ直行。
ちょうど南へ行く乗り合い馬車があったので、それに乗り込んでそのままここテアレラの町までやって来たのだった。
テアレラ市はスカール公国南部では最も発展した都市と言われていて、実際町の規模も大きく町中は非常に活気がある。
山の上で木々が紅葉に色付いていたルフス公国とは違い、こちらでは森の色も濃い緑と深い闇に包まれて、これまで見てきた北の方の森とは違った意味で底が見えない感じがしている。
国境はこの町からさらに街道を南へ2日程行ったところで、その国境を越えればいよいよグランエクスト帝国だ。
この町にも特に用事などは無い僕達だったけど、ここまで来たんだしまあ数日くらいは休憩しても良かろうと宿を取り、せっかくだからと顔を出した冒険者ギルドで、僕達は今回の騒動に巻き込まれることとなった。
「大規模依頼?」
「へえ、そんなの出されてるんだ」
「凄い人出だな」
その日の朝、例によってベッドから出てこないアリサの起こし方もそろそろネタが尽きてきた僕。
苦肉の策でアリサの掛け布団の上でのしりと丸くなってみたのだけれど、なんと彼女は一切堪えた様子が無かった。
しばらくしてようやく起きたアリサと、面白がって僕をじゃらしていたユーナと一緒に、特に依頼を受けるつもりは無いけどこちらの方ではどんな依頼があるのかなと覗いてみた冒険者ギルド。
そこで見たのは、昼過ぎで大抵は閑散としている時間帯なのに、やたらと人でごった返しているホールと、壁の依頼掲示板に他の依頼を押し退けるようにしてデカデカと貼られた『大規模依頼、参加者急募!!』の貼り紙だった。
大規模依頼というのは、以前クロウ共和国でゴブリンの群れを討伐した時に出されたような、大勢の冒険者を集めて行われる依頼のこと。
こういうのが出されるのはよっぽどの緊急時ぐらいなものなのだけれど、何か近場で強力な魔物が出たりでもしたのだろうか。
これがあったから、参加の冒険者でギルド内が溢れかえっているのか。
ざっと見た限りでも、おそらくは100人以上は集まっているだろう。
依頼の紙を遠目に見ても詳細は書かれていない様だし、何よりも今は人混みであまり動ける状況ではない。
別に依頼を受けに来たわけじゃなし、ここは帰ろうかとアリサとユーナと話をしてギルドを出ようとしたその時、受付のカウンターの方から大きな声がかかった。
「ただ今より、ギルドマスターからの大規模依頼の説明があります!皆さんお静かに!!」
その言葉に、ざわめいていたホール内が静かになる。
「……どうする?」
「聞くだけ聞いてみない?なんか興味はあるし」
物見高いユーナに誘われて、僕達も話だけは聞いてみることにする。
3人で壁際に寄って見ていると、皆の前で2人の男性が進み出た。
1人は細身で長身、年齢は30代後半くらいで、どこか神経質そうな顔をしている。
もう1人は年齢は40代くらい、中背のがっしりとした体形で、日焼けして浅黒い顔をしている。
男性の1人、細身の方は設えられた立ち台の上に上がると、皆に向かって声を張り上げた。
「皆さん、今日は大規模依頼に集まっていただきありがとうございます!知っている人も多いとは思いますが、私はここテアレラ支部のギルドマスターのカワーグです!」
へえ、あの人がここのギルドマスターか。
やっぱり冒険者上がりなんだろうか。
壇上のカワーグギルドマスターは続いて、隣りにいたもう1人の男性を示した。
「こちらはブラウン村の名家、バラーズ家の現当主アーニング様、今回の大規模依頼の依頼者です」
紹介を受けて、軽く頭を下げるアーニング氏。
ギルドマスターの話では、ブラウン村というのはここテアレラの町から南西へ5日程行った所の、隣国イノン侯国との国境近くにある、はっきり言ってかなり田舎の村。
アーニング氏はその村の旧家で、代々村長を務めてきたラーズ家という家の分家である、バラーズ家の出身。
若い頃からここテアレラに来て、今はもう亡くなったお祖父さんお父さんと一緒に懸命に商売に励み大成功、今は公都ボーンズにまで店を構える大商人に上り詰めた凄い人なのだそう。
ギルドマスターはそんなバラーズ一家のサクセスストーリーを少し話してから、肝心の依頼の話に取りかかる。
「それでは今回の依頼の内容ですが、そのブラウン村には古くから、人が入ってはならないと言い伝えられている大きな森があります。私達の仕事は、その森の探索です!」
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