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エピローグ

よろしくお願いします。

大陸東方面中央部に位置する中央諸国連合の一角、ルフス公国にて政変が勃発した。



ルフス公国は建国当初より公王ではなく、家臣筆頭たるヴィクトリア侯爵家の当主が『政務大臣』という役職に就いて、国政を指導する慣わしがあった。


ヴィクトリア侯爵家は元はグランエクスト帝国貴族の家系であり、ルフス公国建国の際に帝国から招聘(しょうへい)されて国政に携わるようになったという経緯がある。


この度の政変は、そうした体制に不満を持つ者達が公王ハティマス・オーギュスト・ルフスを擁し、政務大臣を排して公王主導による政治体制への回帰を目指した改革とされている。




改革派は、ルフス公国にて毎年開催されている建国祭の最終日夜半に決起。


内々に改革に賛同していた軍を動員して、公城内の行政府中枢並びに公城に集まっていた貴族達を押さえ、さらに翌日未明には公都エレストア市内に部隊を繰り出して、警備隊本部や政府主要施設及びエレストア市街地を制圧した。



しかし、制圧目標のひとつとしていたアルカール・ヴァン・ヴィクトリア政務大臣とその家族については、大臣及びその護衛達の激しい抵抗により身柄の拘束は成らず、大臣一行の市外への脱出を許してしまう。


また、改革派の中心人物であったブライ・ウラ・ロデン男爵及び、軍の総指揮を執る手筈となっていたルフス公国国防軍将軍レッガー・ウィン・マウント、加えて公王の側近たる近衛隊長のセーラ・ウォル・ヴァッテンが騒乱の最中に重傷を負う。


それにより軍の統率は大いに乱れ、改革派は逃走したヴィクトリア元大臣の追跡もままならないままに、市勢の混乱や改革に不賛成の貴族達の反抗など次々発生する問題に対して、その場その場でなし崩し的に対応せざるを得ない状態であった。



結果としてヴィクトリア元大臣は捜査網をかい潜り国外への脱出に成功、家族と共に隣国スカール公国を通じてグランエクスト帝国への亡命を果たす。


ルフス公国はスカール公国並びにグランエクスト帝国へヴィクトリア元大臣の身柄の引き渡しを要求するも、帝国はこれを拒否。


ヴィクトリア元大臣はその後、グランエクスト帝国にてルフス公国での政務大臣職における実績が評価されたことで、帝国貴族であるヴィクトリア伯爵本家へ帰参が認められ、ヴィクトリア領での領内行政に参加していくこととなる。




一方政権交代の成ったルフス公国では、ロデン男爵やマウント将軍の復帰後、改めて公王ハティマスを中心とした新たな政治体制の構築に着手。


政府内での新規人材の登用、公城の大掛かりな改築、徴兵制の導入、それらに伴う大規模な増税計画、国内の金融機関に対して債権放棄を命じる徳政令の施行、訴訟制度の見直し、新貨幣の鋳造及び発行、冒険者ギルドへ出される依頼の事前検閲制度や、有事の際に冒険者を軍へと組み込む制度の成立など、強国を目指した政策を次々打ち出していく。



ルフス公国から貴族や国民、そして冒険者が相次いで離反したことで新政権が瓦解し、ローザリア王国から事実上の属国として大掛かりな国政介入が行われるようになる、およそ10年前のことである。



「おのれアルカールめ、悪あがきを……だ、だが『マジャル・ハランド』は私が手に入れた。私の物だ。封印の鍵だって、調べれば新たに作ることだって出来るはずだ。そうすれば、我が国が……いや、私こそが世界の覇権を……」


「あの……畏れながらロデン男爵閣下。鑑定してみたのですが、金庫の中にあった石は……ただの宝石でした」


「……は?何を言っているのです?これは『マジャル・ハランド』です。カースドキマイラの封じられた宝玉なのです。馬鹿なことを言ってはいけません」


「い、いえ……何度も鑑定しましたが、間違いありません。この石は……ただの紫青金剛石(しせいこんごうせき)です。カースドキマイラどころか、魔物が封印されてなどおりません。おそらくは、すり替えられていたものと……」


「あり得ません。これは『マジャル・ハランド』です。私が命をかけて、逆賊ヴィクトリア家から奪取した金庫に入っていた物です。ただの石ころなどということがあるわけがない。早く解析して、封印を解く鍵を新たに作るのです」


「は、はい……(仕方ない、今は何かそれらしいものを作って、お心を休めていただくしかないか。カースドキマイラの復活など、まず行われることなんて無いだろうし)」


「フフ……新たな鍵さえ作れれば、最早この国……いや、私の前には敵は無い。そうだ、新たな鍵は常に私が持って、一世一代の大きな局面で使って見せるのが良いだろう。この国の危機か、何か大きな戦の際か。その時こそ、世界が私にひれ伏す時なのだ。フフフ、楽しみだ……」

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク、ご感想等いただき誠にありがとうございます。

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