エピローグ
よろしくお願いします。
クロウ共和国首都ドーヴ市の冒険者ギルドにて、ある日2つの騒動が発生した。
1つは隣国アト王国からやって来た騎士の一団が、冒険者ギルドに無理難題を強要しようとして一時ギルド内が騒然としたというもの。
対応に当たったギルド職員によれば、彼等はアト王国ベリアン侯爵家に仕える騎士と名乗っており、5人程の集団で人を捜すためにアト王国からドーヴ市まで来たものとのことである。
その捜し人の捜索をギルドに依頼しようとしたものの、彼等が提示したその捜索対象の外見的特徴が非常に漠然としたものであったこと、同じく提示の依頼料がこれまた非常に低額であったことなどにより、依頼を謝絶しようとしたギルドとの間でトラブルが発生することとなった。
結局騎士達は、冒険者ギルドの職員に恫喝まがいの大声を張り上げたり、ギルド内にいた冒険者に対して剣を抜いたりなどの目に余る行動により、その場にいた衛兵により逮捕されギルドを退去。
屯所において警備隊及び軍による取り調べが行われ、結果は恫喝及び傷害未遂の現行犯として1週間の留置。
その後、アト王国へ送還の処置となった。
彼らは騎士の身分ということで、ドーヴ市から政府を通じてアト王国にも抗議の文書が送られており、帰国後も何らかの制裁措置があるものと思われる。
彼らの捜し人については、冒険者ギルド内で見つかったような素振りもあったとのことであるが、詳細は不明である。
もう1つは、ドーヴ市を拠点にしているランク3級の男性冒険者が、同じく3級の男性冒険者に決闘を申し込んだというもの。
冒険者ギルド支部の前で発生したこの騒動、女性を賭けての決闘であった様であるが、一方の決闘を申し込んだ側である冒険者の宣伝により、決闘の当日には大勢の見物客が支部前に詰めかけた。
しかしその場で待てど暮らせど決闘を申し込まれた対戦相手の冒険者が現れることは無く、結局決闘自体は申し込んだ側の不戦勝に終わることとなる。
不戦勝となった冒険者は、相手は怖気付いて逃げ出した、勝った勝ったと喜んでみたは良いものの、気が付いてみれば周囲からは、勝負を見られず中途半端な気持ちを抱えた見物客からの冷ややかな視線。
更には勝利の賞品であったはずの女性の姿もその場には無く、状況から決闘相手の冒険者と一緒に逃げて行ったのは明白。
結局決闘を申し込んだ側の冒険者は、見物客からの嘲笑を浴びながらそそくさとその場を退散して行ったとのことである。
ちなみにこうした場では、半ば公然として賭博が行われるのが通例となっている。
当事者である決闘を申し込んだ冒険者も自身の圧勝に多額の金を賭けていた様であるが、不戦勝確定後金の回収も行わず逃げるようにその場を引き上げているため、結果として大損という顛末となった。
一方でその賭博において、決闘を申し込んだ側の不戦勝に大枚を賭け大儲けをした冒険者がいたという。
他の賭博への参加者からはイカサマではないかとの声も上がったが、賭けに勝った冒険者本人は、賭け金の回収後即座に雲隠れを決め込んでいるそうである。
◇
「おい受付!昨日俺と決闘するって言ってたあのガキはどこに行きやがった!?」
「実家に帰らせていただきます、と……」
「実家!?実家ってどこだよ!アト王国か!?誰か知ってる奴はいるか!?」
「あ〜あいつなら、ラネット神聖皇国から来たみたいだぜ」
「何言ってんだ、ドルフ王国出身だって言ってたじゃねぇか」
「俺は魔王領の生まれだって聞いたけどなあ」
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。
5人の騎士ですが、彼らはベリアン家の家臣なので、隣国から苦情が来たからといってアト王国政府が直接彼らに制裁を科すことは出来ません。
この場合は政府からベリアン家に「お宅の〇〇という騎士達、お隣の国で騒動起こしたらしいけどちょっと問題あるんじゃない?」という連絡(という名目の嫌味)が入るに留まります。
ただそうなれば当然、ベリアン家での彼らの立場は悪化するということになります。




