15. ぼうけんしゃ に ついて
よろしくお願いします。
今回もまた説明回になります。
説明回が多くてすみません。
そもそも『冒険者』とは何なのか。
簡単に言ってしまえばそれは『冒険者ギルドに登録している、町の外における何でも屋』だ。
魔物・盗賊の討伐をはじめとして、薬草・魔物の角や牙や毛皮などといった素材の採集、行商人など町の外に出る人の護衛、未開地の探索などが主な仕事になる。
町の中での仕事というのは基本的には無い。
……のだけれど、高ランク冒険者になると、要人や施設の護衛を依頼されたりすることがあるのだそうで、そういうのは町中での仕事になる。
他にはたまに『下水道に住み着いた魔物の駆除』なんて依頼もあったりするみたい。
今回僕は町の入口で衛兵に身分証の提示を求められたわけだけど、この場合の身分証というのは要はギルド証のこと。
冒険者ギルドは全国組織なので、どこか1つのギルドで登録を行えば、あとはそのギルド証でどこの国へ行っても身分証明が出来る。
これは全国組織ではない商業ギルドや運輸ギルドであっても同じ。
なので冒険者や行商人のように頻繁に町を出入りする人や、旅をする人は基本的に持っている。
ただしこの身分証明はギルドの支店がある国や町に限られていて、支店の無い小さな町や村では対応がまちまち。
ギルド証で入れてくれる所もあれば、持っていても入り口の通行税を請求する所もある。
話を戻して、冒険者というのはランク制になっている。
1番上が特級でその下に1~7級。
目安としては6、7級が新人、4、5級が一人前、3級でベテラン、2級は一流、1級は超一流、特級は化け物、という扱い。
依頼にも難易度に応じてランクが設定されていて、自分のランクより高いランクの依頼は受けられない。
またランクの他に期限が設定されていて、その期限を過ぎても達成されない場合は失敗という扱い。
ランクアップは、依頼を消化して実積を作ってランクアップする方法と、月1回行われる昇級試験を受ける方法がある。
パーティを組んでいる場合は、そのパーティのリーダーのランクがパーティランクになる。
依頼失敗の際の罰則は、罰金やランク降格など。
あまりにも頻繁に失敗が繰り返される場合や、失敗の内容が悪質と判断された場合は、ギルドの使用停止や除名。
失敗になった依頼は募集し直すか、どうしても急ぎの場合は、指名依頼などの形で他の冒険者に引き継がれたりする。
1年以上依頼を受けなかった場合はギルド除名、要は引退もしくは死亡したものとみなされる。
また、ギルド証の初回発行は無料だけど、無くしたりした場合の再発行には銀貨1枚かかる。
それから、ギルドの役目はあくまでも冒険者への依頼の斡旋とその達成までの補助であって、冒険者の保護などではない。
つまり冒険者が何かトラブルを起こしたとしても、ギルドはかばってなどくれない。
そのまま逮捕、実刑となる。
また冒険者同士の争いなどにもギルドは一切関わらない。
ただしギルドの建物内での争い、ギルド職員への暴行などはご法度。
それからお金のやり取りについては、依頼で指定の採集品以外でも、魔物の毛皮や薬草などの素材を採ってくればギルドで買い取ってくれる。
ただし原則としてその時の相場関係無しの定額払いなので、商人につてを持っている冒険者はそちらに直接売りに行ったりもする。
ただしその際に商人と揉めたりしても自己責任。
初心者はギルドで買い取ってもらう方がおすすめ。
その他わからないことや気になることは、ギルドの壁に規則が貼ってありますのでそれを見るか、その都度受付に訊くというのが基本なのだそう。
それから町に着いたのでお金について解説します。
この国のお金の単位は上から白金貨、大金貨、金貨、銀貨、大銅貨、銅貨、黒銅貨。
下から、銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で大金貨1枚、大金貨10枚で白金貨1枚、となる。
大銀貨というのは無いけれど、これはこの国とその近辺の国々では、銀の産出量が他の金属と比べて少ないのが関係しているらしい。
黒銅貨というのは長い間使われ続けて錆びたり、変形したり劣化した銅貨のこと。
これは劣化具合で価値が変わるので、店員に見せて「これでいい?」みたいにして使う。
大体の感覚で決めてるらしい。
一時期「『賎貨』って呼ぼう」なんて言った人もいたけど、「いや、長い間役に立ってきたから劣化してるのであって賎しくはないだろ」という反対意見が上がって、結局定着しなかったそうな。
庶民が普段使うのは、黒銅貨からせいぜい銀貨くらいまで。
大金貨や白金貨なんてのは、主に大きな商取引や国家間のやり取りなどで使うもので、僕も見たことは無い。
で、硬貨なので金額が大きくなれば、どうしてもかさ張るし重い。
なのでギルドではお金の預り業務も行っている。
お金を預けて証明書をもらうのだけど、この証明書を他の町のギルドに持っていけば、全国どこでもお金が引き出せるというわけだ。
お金は目的地の町で引き出せばいいだろうと現金の用意をしないで行ったら、着いた町が思いの外小さい町でギルドの支店も無くて、お金が用意出来ずに大慌て、なんて話もたまにあるそうな。
あとお金はそれぞれの国で当然違う。
なので国をまたいで引き出す時は、当然その支店がある国のお金で受け取ることになる。
つまり内戦中や不景気だったりしてお金の価値が下がっている国や、質の悪い貨幣が流通している国のギルドでお金を引き出すと、損をすることになるわけだ。
実際、そういう国のお金での支払いは受け付けないという商会もあったりする。
数字そのままの金額じゃなくて、為替相場に応じた額を受け取れないものかと思うのだけど、まだシステムがそこまで発達していないというのが現状だ。
ただデザインと金属の含有量は違えど、どの国のお金も金貨と銀貨と銅貨なので、別に他の国のお金でも普通に使えたりする。
貧しい国ではその国のお金での支払いが嫌がられて、他の景気の良い国のお金での支払いが喜ばれるなんてこともざらにある。
人間というのはほんと、ややこしいものである。
以下余談。
冒険者に似たところのある職業に『傭兵』というのがある。
どう違うのかというと、傭兵はあくまでも「対人相手を専門にしている」というところが違う。
傭兵団もしくはフリーランスとして、国や貴族や組織から依頼を受けて戦争や紛争、内戦、盗賊や海賊の討伐などに参加して戦うのが仕事。
逆にどう似ているのかというと、「冒険者も依頼を受けて戦争に参加することが出来る」というところ。
「冒険者ギルドは中立であり、国家間の争いには関わらない」というのが建前ではあるけど、実際戦争が始まった際には多くの場合ギルドに「○○国との戦争への従軍」や「行軍の際の道案内」「軍事物資の魔物からの護衛」などという依頼が出される。
もちろん依頼者は国や貴族。
ただしこれも受けるかどうかは冒険者の自由だし、戦争に行って死んだり捕まったりしてもギルドは関知しない。
ただ依頼者が国ということで金払いが良いことが多いので、参加する冒険者は少なくないそうな。
盗賊の討伐依頼などに至っては、普段から普通にギルドに出されている。
ちなみに傭兵ギルドとなどというものは無い。
傭兵の中には冒険者ギルドに登録している人もいるし、いない人もいる。
以下余談の余談。
報酬次第で敵にも味方にもなるイメージのある傭兵だけど、意外な話、その傭兵達の間でも特に嫌われている行為が「逃亡」と「寝返り」
戦闘中はあくまでも雇い主の勝利のために力を尽くし、契約破棄などの交渉は戦いの前か、終わった後というのが傭兵のルール。
僕もこれを聞いた時は意外に思ったけど、実家にいた時に会った傭兵の人に話を聞いたらこんなことを言っていた。
「考えてもみろ、いつ勝手に逃げ出すかわからない、いつ敵に寝返って襲いかかってくるかわからない、そんな奴わざわざ高い金出して雇おうなんて思うか?雇ったとして、戦場でそんな奴信用して背中向けられるか?そんな奴がいたら、大抵は周りの傭兵連中から袋叩きさ。そんなのを許しておいたら、傭兵って仕事そのものの信用に関わるもんな」
ごもっともなことではあった。
お読みいただきありがとうございます。
傭兵のルールについてですが、当然の話として例外はあります。
雇い主が先に傭兵を裏切った場合についてはその限りではない、というのが暗黙の了解となっています。
雇い主が報酬をケチろうとしたり傭兵を切り捨てようとしたりした結果、傭兵団が壊滅したり、逆に傭兵団から猛反撃を受けて大被害、なんて話もあります。
それからこの世界のお金について色々と書いてはみましたが、為替相場などについては基本気にしないでいただいて問題ありません。
コタロウは商人ではありませんので、内戦をしている国やインフレが発生している国などは基本避けて旅をします。
新しい国に行ったらお金の価値が大幅に変わって大慌て、なんて展開の予定はありません。
また、この世界での単位(時間、距離、重さ、その他もろもろ)については、基本地球のものでの表記となっています。
皆様が読んでいる言葉に翻訳されていると考えていただければと思います。
今後もコタロウの旅に、よろしくお付き合いをお願いします。




