11. まちから の とんそう
よろしくお願いします。
少し短いです。
無理矢理決闘の約束を取り付けて去って行くベルナルド達を見送っていると、そこに周りで僕達の様子を見ていた冒険者の男性が1人、話しかけてきた。
「おい、大丈夫かよ爆影虎。今のあいつ『決闘屋』だろ?」
「『決闘屋』?」
彼に聞くところによると、何でもあのベルナルドという男、ここ最近ドーヴ市において、悪い意味で有名になってきた高ランク冒険者らしい。
なんでも目を付けた他の冒険者などに決闘を持ちかけ、金品やら高価な装備品を巻き上げたり、恋人の女性に一晩相手をさせたりする常習犯なのだそう。
厄介なことにこの男、剣だけではなく徒手格闘の方も腕が立つので、挑発されて決闘に応じてしまい、被害にあったという人が増えてきているのだとか。
やっぱりろくでもない奴だった。
話を聞いて、僕の横ではユーナが肩を落とし、アリサが顔をしかめている。
「ユーナ……そんな奴に言い寄られていたのか?」
「知らないよ。私が3級に上がったら、一方的にまとわりついて来るようになったの。それまではまともに話したことなんて無かったもの」
「あの男、あからさまに私の身体を値踏みしていたぞ。気色悪い」
「私の時も最初からそうだったよ。だから嫌だったの」
「後ろにいた女達も、よく一緒にいられるもんだ」
「……」
「なんだ?私をじっと見て」
「コタ、私ときたんだから、次はアリサ関連で何か面倒な奴が来たりして」
「まさか、そんなことは無いだろう」
「わかんないよ?軍隊時代にアリサを好きだった人とかが追いかけて来てさ、『みなまで言うな!お前の気持ちはわかっている!黙って俺様に付いて来い!』とか」
「仮にそんなのが来たとして、私が付いて行くわけが無いだろう……」
「私とコタに厄介事が起きて、アリサにだけ起きないなんて不公平じゃない。アリサも1つくらい面倒な目に遭ってみたら?ていうか、遭え」
「お前は……」
愚痴っている奥さん2人は置いといて、僕は冒険者に答える。
「僕達は大丈夫です。今からすぐにこの町を出ますので」
僕の返答に、目を丸くする冒険者。
「へ?じゃあ、決闘は」
「僕決闘するなんて言いました?」
僕はベルナルドには、勝負をするとも決闘に応じるとも言っていない。
僕がそう言うと、冒険者は呆れたように笑った。
「……やれやれ、そういうことかよ」
「明日多分あの人、やる気満々でここに来るでしょうから、そしたら笑ってやってください」
「わかったよ。どこに行くのか知らねえが、気をつけてな」
苦笑いを浮かべている冒険者に、僕は頭を下げて別れを告げた。
もうこれ以上の長居は無用。
結果としてこの冒険者の人が、僕達がクロウ共和国の首都ドーヴで出会った、最後の人となった。
そして僕はユーナとアリサに声をかけ、3人でその場を離れて町の西門へ向かい駆け出したのだった。
◇
「……ねえコタ」
「何?ユーナ」
「もしさ、私がベルナルドと一緒に行くって言ってたら、キミどうしてた?」
「泣く。どっか部屋に引きこもってアリサと一緒にいっぱい泣く」
「そ、そっか……フフッ、よしよしどこにも行かないからね〜」
「……私も泣くのか?」
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク、誤字のご指摘等いただき誠にありがとうございます。
誤字報告にてご指摘いただきました「鳴きついて」につきましては、造語のようなものになりますがこれで合っています。
にゃあにゃあ鳴きながら相手にまとわりついて、おねだりをしているところです。
次回、エピローグになります。




