プロローグ
よろしくお願いします。
本章は短めでバトル無しの、間章的な話になります。
拝啓
初秋の候、貴家におかれましては爽やかな実りの季節を迎えられていることと存じます。
僕達は現在も、クロウ共和国首都ドーヴに滞在しています。
山の中の町ということで、山の景色が次第に秋の、鮮やかな紅葉の色に染まっていくのを実感する日々です。
さて、この度ちょっとした縁がありまして、僕達はここクロウ共和国の政府の中枢である、政府会議の議員の方とお話をさせていただく機会に恵まれました。
冒険者の仕事として依頼を受けた形ではあったのですが、こうした政府の要人の方と関わる機会というのはそうそうあるものではなく、得難い体験をさせていただくことが出来たと考えております。
クロウ共和国政府はご存知のとおり『共和制』という政治の形を取っておりまして、これは国内各都市の有力者などが市民の代表として、話し合いで国政を行うというものになります。
王国出身の僕の目には目新しいものとして映りましたが、市民の意見や要望が政治に反映されやすいことなどを考えると、これもまたひとつの形なのかなというふうにも思われます。
一方で皇族や貴族などとは違い、政治家の方々の地位が決して盤石ではない、全ては代表者に選ばれるかどうかで決まってしまうものということで、こちらの政治家の方は貴族などよりもはるかに、市民からの評判に気を使っているという印象も受けました。
国の100年後200年後を見据えた政治よりも、今現在市民の人気を取るための政治が優先されるということにはなったりはしないか。
王国のものと共和国のものと、一体どちらが良い政治の形なのか。
今の僕にはまだ、答えが出せないでいます。
それではまた、機会がありましたらお便りいたします。
末筆ながら、伯爵様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。
敬具
追伸1 ドーヴ市にて購入した化粧品を同封いたします。妻達に選んでもらった物なのですが、奥様方に喜んでいただけたら幸いに存じます。
追伸2 神様って、何なんでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。




