エピローグ
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クロウ共和国首都ドーヴにて、共和国政府会議の一員であるレン・ダイ議員への襲撃という大事件が発生した。
レン・クロウ・ダイ議員は、元を辿ればクロウ共和国の前身であったクロウ王国の王族に連なる名家の出身であり、4代前のダイ家当主が設立したダイ商会の経営と共に、ドーヴ市の代表としてクロウ共和国政府会議の議員を務めている。
襲撃の発生場所はダイ議員の自宅前。
犯人はまずダイ家のお抱え馭者であるマンサ氏を殺害、氏になりすまして議員に近づき、犯行に及んだものである。
幸い護衛に当たっていた者達の対応により襲撃者はその場で討伐され、ダイ議員に怪我などは無かった。
捜査当局の調べによると、襲撃を行った犯人は議員の家の元使用人の夫妻であり、犯行の数日前には業務態度を理由にダイ家を解雇となっていた。
犯人夫妻の所持品からは、夫妻が日々習慣として付けていたと見られる日記が見つかっており、その記述から、夫妻は今から約200年程前のクロウ王国時代にこの国で流行した宗教である、フロイグ教の熱心な信仰者であったことが判明している。
その日記には、ダイ家の人々を足がかりにしてクロウ共和国内にフロイグ教を広め、やがては夫妻を指導者とするフロイグ教の国家の設立を描いた、壮大な計画というよりも妄想のようなものが記されていたという。
当局では仕事を解雇されたことによる恨みか、もしくはフロイグ教が何か関係している可能性があると見て調査を行った。
しかしフロイグ教については、200年前の伝来から間もなくして当時の王国政府により禁教の指定をされており、それ以来歴史の表舞台からは姿を消しているものである。
当局ではフロイグ教の信者数名を発見し話を聞くことが出来たものの、フロイグ教は現在宗教としてはほぼほぼ消滅状態となっており、伝えられている家系や個人が独自にほそぼそと信仰をしているだけで、信者間での連絡の取り合いなども無いということが確認出来たのみとなった。
結局はフロイグ教は、宗教としてはこの事件には関わりは無く、日記の内容については犯人夫妻の個人的な妄想、襲撃は夫妻が仕事を解雇されたことによる怨恨により行った犯行であるとのことで決着。
犯人夫妻が既に死亡しているということもあって、調査は終了となった。
レン・ダイ議員は事件の約1週間程前に、ドーヴ市より西のヤッヒル村にて発生した盗賊の襲撃事件において、自費を投じて冒険者を手配。
盗賊の迅速な討伐と事態の収集に貢献している。
一部では売名行為にすぎないという意見もあるものの、概ね市勢からは好意的な評価がなされており、他の議員からの評価も高まっている。
今後はダイ議員の、さらなる活躍が期待されるところである。
また、ダイ議員からは先日、今年で16歳になる孫娘が病気にて死去したとの発表がされており、議員宅では家族のみでの葬儀が執り行われたばかりである。
ここ最近の一連の出来事については何か関連があるのではないかという声もあるが、議員はこのことに関しては一切のコメントを出していない。
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