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27. よくじつ の あさ

よろしくお願いします。

盗賊を縛り付けた馬を連れて、僕達は冒険者ギルドへ向かう。


そこには門番の衛兵さんから連絡が行っていたんだろう、軍の人が数人、盗賊を引き取りに僕達を待っていた。


ソランさんは不在だったので、ギルドの受付で簡単な報告を済ませた後、軍人達に瀕死状態になっている盗賊と、合わせて持ってきた証拠品の剣を引き渡す。


盗賊については、この後軍で取り調べが行われた後に刑の執行。


僕達へは後日、冒険者ギルドを通して連絡をくれるとのことだった。


ドン引きの表情で盗賊を荷車に積み込み、そのまま走り去っていく軍の人達を見送って、僕達は同じくホールで待っていた『斬羽ガラス』の所へ。


正式な依頼完了認定や報酬については、依頼者であるレンダイ先生の了承を得てからになる。


彼女達にその事を伝え、簡単な打ち合わせをした後翌日の昼頃にまたここで集合ということにして、その場は解散となった。



僕達は受付に馬商人の店の場所を教えてもらい、ケイ達がギルドの裏手に繋いでおいてくれた大量の馬を引き連れて店へ向かう。


通りの通行の邪魔になりながら馬商人の店に着き、店員に驚かれつつも連れてきた馬24頭を全頭買い取ってもらった。


買い取り額は1頭が金貨2枚、全部で大金貨4枚に金貨8枚となった。


その後は各々自由行動ということにして解散。


ユーナとアリサは2人でバーへ、僕は魚が食べられるお店の物色に向かった。


さー気晴らしだ。食べるぞ~。




翌日、僕達は改めての依頼完了報告にレンダイ先生のお宅へ向かった。


今日は予定が入っているということで、アリサも普通に起きてきた。


報告内容が内容だけに少々気を重くしながらもレンダイ先生の屋敷に着くと、門の前には馬車が停まっているのが目に入る。


外出するところだったのだろうか。


近寄っていくと、ふとある臭いが僕の鼻につく。


あれ、これって……



馬車を背に、後方を警戒しながら門番の人に挨拶していると、玄関の扉が開いて中からレンダイ先生とロウダイさん、秘書のセインさん、それから護衛の人数人が出て来た。


僕達を認めて、手を上げながら門を出てきたレンダイ先生に頭を下げて挨拶をする。


「おはようございます。この度はお嬢様のこと、改めましてお悔やみ申し上げます」


「君達か、おはよう。……いや、よくやってくれた。おかげでリリナもこの家に帰ってこれたし、敵も討ってくれたらしいからな」


「おい」とレンダイ先生が声をかけると、セインさんが1枚の紙を取り出して僕達に差し出した。


「依頼完了証明です。この度はご苦労様でした」



依頼完了証明書というのは名前の通り、依頼者が依頼が達成されたと判断した際に冒険者へ渡す書類。


冒険者がこれをもらって、ギルドに提出することで依頼完了とされ、ギルドから冒険者に報酬が支払われる。



リリナさんの遺体は痛みが激しいため、今夜火葬にされて、家族と屋敷の人達だけで葬儀を執り行う予定とのこと。


聞いた話ではなんでもフロイグ教では火葬が禁止されているらしく、レンダイ先生は意趣返しを狙っているのではないかと思うのは裏の読み過ぎだろうか。



まあとりあえず僕達のやることはこれで終わり……だったのだけれど、ついたった今、もう1つすることが出来た。


アリサが秘書さんから書類を受け取り、僕は皆に軽く頭を下げる。


「今回はご依頼いただき、毎度ありがとうございました。それから最後になんですけど……」


とそこまで言うと僕は左手を上げて、親指で後方を指差した。


右手の、ククリの柄を握る手に力がこもる。


親指の先には馬車の馭者台に座り、帽子を目深にかぶった男。


馭者のはずなのに馬の手綱を持ってない。


馬車の扉も開いてない。


先生が屋敷から出てきた時も、挨拶の言葉も無ければ会釈1つしない。


そして……



「そこの馭者さんは以前の方と違うみたいですが新人さんですか?その方から新しい上に、かなり強い血の臭いがしてきてるんですが……っ!」


言い終わると同時に、僕は振り向いてククリを構えた。


僕の言葉に、さっと顔色を変えた護衛の人達が、瞬時に先生を囲んで防衛体勢を取る。


振り向いた先で馭者ががばりと立ち上がり、帽子をはぎ取って忍ばせていたナイフを振りかざした。


帽子の下から出てきた顔はゴーフェ。


その顔を認めたその場の皆の顔が驚愕に染まる。


「エスク様、お赦しくだ……!」


ゴーフェがレンダイ先生めがけて飛びかかりながらそこまで言いかけたところを、僕が横から蹴り飛ばす。


吹き飛ばされて地面に叩きつけられるゴーフェの身体。


「馬車の中にもう1人!」


「応!!」


僕の声に護衛の1人が応えると同時に、馬車の扉が弾かれるように開いた。


中からはゴーフェの奥さんが、小型のボウガンを構えて飛び出してくる。


「私達が、この世を……!」


叫びながら、レンダイ先生に矢の先を向けようとするゴーフェ夫人。


その手からアリサの剣がボウガンを叩き落とし、衝撃で彼女の身体が地面に転がった。


レンダイ先生もロウダイさんも、愕然と言葉を失っている。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。


本章につきましては昨年初頭の段階で考案・執筆を開始していたもので全て架空であり、現実の事件などとは一切の関係が無く、またモデルなども無いことをご報告いたします。

現実に、宗教が関係する恐ろしい事件が起きてしまったことに遺憾の意を表すると共に、被害に遭われた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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