21. きょてんへ の とつにゅう
よろしくお願いします。
残酷な描写があります。
ご注意ください。
「うわあ……」
「お前というやつは……」
「ひええ……」
引き気味の顔で僕を見てくるユーナとアリサ。
そして数秒前まで盗賊の拠点であった場所を呆然と眺める、ケイとリヴとシュナ。
降りしきる雨が爆発の土煙を洗い流し、拠点の中の視界が少し開けてきたところで、そんな彼女達に僕は号令をかけた。
「よし、突入!」
僕の声に我に返った彼女達。
アリサが「行くぞ!」の声と共に拠点に突入し、僕達がそれに続く。
『斬羽ガラス』の3人は対人戦は初めてということで、突入したら決して前には出ない。
基本僕から離れない。
負傷している敵を優先して攻撃。
ただしどれだけ相手が弱っているように見えても、絶対に油断はしないようにと念を押している。
アリサが真っ先に向かうのは見張り台。
上では見張り番の盗賊2人が、いきなり眼下で起こった惨事に慌てふためいている。
アリサは事前の打ち合わせ通りにその櫓に突進し、背中から引き抜いた大剣で櫓の柱の根元を一刀の下に斬り倒した。
支えを失って倒れる櫓。
上にいた盗賊2人が悲鳴を上げて落下し、10m近い高さから地面に叩きつけられる。
その内の1人に僕は駆け寄り、痛みにもがいている盗賊の首をククリで切り裂き続けて胸板に刃を突き刺した。
もう1人にはケイとリヴが向かい、逃げようとする盗賊を、雄叫びを上げながら剣で滅多刺しにする。
そうしている間にアリサはボトルの爆発で破壊されて一部燃え上がっている宿舎に向かい、屋根を支える柱を大剣で次々に斬り倒していった。
倒壊する屋根の下からは男達の悲鳴。
少しして、這々の体で屋根の隙間から抜け出してきた盗賊を、僕とケイ達で片っ端から仕留めていく。
食堂や屋外にいて爆発や建物の倒壊を免れた奴は、突然の惨禍で右往左往しているところに大剣を振りかざしたアリサが襲いかかる。
いち早く逃げ出そうとする者は、その背を次々とユーナの放った矢が撃ち抜いていく。
続いて緑ボトルに着火して屋根の下に叩き込んでやると、やがて屋根の隙間から上がってくる煙と中で咳き込む声。
建物から離れて少し待っていると、中から次々に盗賊達が這い出してきて、その誰もが口から泡を吹いて地面の上でのたうち回る。
そんな中、「てめえら……っ!」という野太い声がしたのでそちらに向き直ると、少し離れた所で盗賊が1人、ふらつきながら立ち上がり、僕達に向かって剣を構えるのが見えた。
まだ暗い中なのではっきりと確認出来るわけではないのだけれど、どうもこの男、他の盗賊達よりも質の良い服を着ているように見える。
もしかしたらこいつがこの盗賊団の頭だろうか。
拠点を破壊され、仲間をやられまくったことで頭に血が上り、僕達に燃えるような怒りの目を向けている。
そんな盗賊は、闇に紛れて後ろから忍び寄るアリサにまったく気づいてはいない。
「クソが、ただじゃすまさ……!」
と盗賊がそこまで言ったところで、忍び寄っていたアリサが彼の剣を持った腕を肩口から斬り落とした。
絶叫を上げて地面に転がる盗賊。
負傷した敵はアリサに任せて、僕達は即座に再度周囲を警戒する。
拠点内に立っている者が僕達だけになっているのを確認して、警戒は解かないまでも軽く一息を吐いた。
「まあ、これでほぼほぼいけたんじゃないかなあと思うんだけど」
そこらの地面から響くうめき声も次第に治まってきているし、屋根の下から新手が這い出してくる様子もどうやらなさそう。
辺りを見渡して敵の気配を探る僕に、ケイがおそるおそる声をかけてきた。
「あの……生かして捕まえるって話、なかったっけ……?」
そうだそれがあった。
「……あいつにしようか。アリサちょっと待って!」
僕はたった今アリサが腕を斬り落とした盗賊を指差す。
なんかこの盗賊団の頭っぽい奴だし、ちょうど良いかもしれない。
とりあえず見つけたら殺すでいって、生け捕りについては余裕があれば、くらいに考えてたのだけど、まあ今であれば大丈夫かな?
見た感じ良い具合に無力化もされてるし。
とはいえ念には念を入れてと……
僕は肩の傷口を押さえてうめき声を上げる盗賊に止めを刺そうとしていたアリサに、声をかけて制止。
アリサとシュナに頼んで盗賊の残った腕と足を切り落とし、切り口部分には回復魔法をかけて止血をしてもらう。
後は自決などされないように、口に布を噛ませて終了。
なにやら泣きながら猿轡の下でもがもがと叫んでいるけど、今は特にこいつに訊くことなどは無い。
僕の処置に、アリサを始め女性陣がドン引きした顔で僕を見てきているけど仕方ない。
生け捕りにするということは当然、相手が隙を見て逃亡や反撃をしてくる可能性があるということ。
五体満足で半端に自由な状態にしておけば、その可能性は余計に高まる。
とはいえ今の僕達では厳重に拘束するといっても限度があるし、であれば出来る限り動けない状態にしておくのが必要な措置ということで。
どのみち町に連れて帰れば取り調べの後に処刑なんだし。
などといったことを、僕は彼女達に説明した。
小降りになってきた雨の下、捕まえた盗賊を木に縛り付けて、僕達は地面に転がっている残りの盗賊に止めを刺して回った。
「そ……そこまでやるの?」というリヴの問いには「死んだふりしてるだけの奴とか、いるかもしれないから」と答える。
実際何人か立ち上がって逃げ出そうとした盗賊がいたけど、即座に周囲を警戒していたユーナの矢に撃ち抜かれていた。
村を見張ってでもいたのか、外から戻って来た敵も2人程いたけど、そいつらは拠点の惨状を見て驚いているところを捕まえて喉元をかっ切る。
そんな作業の最中、戦闘の興奮状態から覚めてきた『斬羽ガラス』の3人が、初めて人を手にかけたショックに襲われてダウン。
リヴとシュナが吐き気をこらえきれなくなった様子で口を押さえて森の中に駆け込み、ケイは気丈にその場に残ってはいるけど、顔色は真っ青で膝をガクガクと震わせている。
無理をさせるわけにはいかないので、ケイには戻ってきたリヴとシュナと合わせて、その場で休憩がてら捕まえた盗賊の見張りを頼んでおいた。
そうしている内に雨も止み、残りの盗賊の始末にかかっていると、突然「うわっ!」というアリサの声がした。
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