20. きょてん の こうりゃく
よろしくお願いします。
残酷な描写があります。
ご注意ください。
僕は今度は、1人で盗賊の拠点の中に侵入した。
他の皆は外周の鳴子罠がある場所、先程ユーナがいた地点で待機して、僕の合図で突入する手筈だ。
ただし僕が見つかったりした場合は、作戦を中止して僕を待たずに即逃げるということになっている。
僕は夜闇と雨に隠れ、櫓の見張りに注意しながら拠点内を走る。
移動しながら新作のボトルを拠点内の、建物の中や軒下や裏手や物陰など、雨が当たらない所を選んで設置していった。
ボトルはこれまでよりも大きめの、ボトルというより壺。
中に入っているのは油と、火と雷の魔石。要は改良型赤ボトルの大型版。
先日のゴブリン大規模討伐の経験から、僕も何か拠点破壊の手段を持てないかと思って作ってみたもの。
ボトルの口の油紙を開いて、着火はせずにそのまま置いて次の場所へ移動する。
これを使うのはもう少し後だ。
僕は目的の場所である、明々と明かりが灯されている食堂に侵入。
並べられたテーブルに隠れ、ベルトに差していた木杭をかまえて、かまどの前で鼻歌を歌ってシチューか何かの寸胴をかき混ぜていた調理番の背後に忍び寄る。
調理番が1人だけだったのは幸運だ。
この天気もあり、他に建物から盗賊の仲間が出てくる気配も今のところ無い。
僕は後ろから調理番に飛びかかり、その口を押さえると同時に喉に木杭を突き立てた。
ククリで喉をかっ切っても良かったのだけれど、他の盗賊に感づかれないように、出来るだけ血を流さないように仕留めたい。
そのまま引き倒して地面に顔を押し付け、声を出させないようにして背中から心臓にククリを突き刺す。
蛇貫石の刃は、まるで草むらを縫って移動するヘビのように、盗賊の肋骨をすり抜け心臓を貫いた。
痙攣していた調理番の身体が動かなくなったのを確認して、マジックバッグに収納する。
そして僕は火にかけられている寸胴4つの中のシチューに毒薬を溶かし、気配に注意しながら食堂のテーブルに運ぶ。
テーブルの上に寸胴を置くと、合わせて食堂内にある水瓶にも次々毒薬を流し込み、そのまま身を潜めて食堂から外に抜け出した。
急いで暗がりに隠れて周囲を確認するも、盗賊の様子に変化は無い。
ただ宿舎の中から「そろそろ飯出来たんじゃねえか?」なんて声が聞こえてきたので、少し急ぐ必要がありそうだ。
僕が続いて向かう先は倉庫。
建物の陰に隠れながら倉庫の中に人の気配が無いこと、入口には仕切りとして布を垂らしてあるのみで特にドアなど取り付けられていないことを確認する。
壁もあるけど、見たところそこまでしっかりしたものではなく、柱に木の板を大雑把に打ち付けてある程度。
外部からの泥棒を警戒しているわけではなく、仲間が略奪品をちょろまかすのを防ぐためのものなのだろう。
入口の脇に設けられた雨避けの下、火の燻る松明の側で椅子に座ってうつらうつらと舟をこぐ見張り番に、僕は後ろから忍び寄った。
調理番と同じく口をふさいで喉に木杭を突き刺し、そのまま倉庫の中に引きずり込んで心臓にククリを突き立てる。
見張りとマジックバッグから出した料理番の死体を倉庫の隅に押し込み、暗い部屋の中を確認してみるとそこには案の定、麦や野菜や干し肉など食料品の入った袋や、おそらく略奪品だろうよくわからない物が入った袋や箱が積み上げられていた。
これだけの品物、盗賊ごと処分してしまうにはあまりにももったいない。
ていうか普通にこれを逃す手は無いわけで。
しめしめと。
僕は中に積み上げられている略奪品や食料品などを、手当たり次第にマジックバッグに放り込んでいった。
めぼしい物をあらかたマジックバッグに収めた僕は、拠点の各所に置いてきたのと同じ大型ボトルを、倉庫入口脇の死角になる暗がりに設置する。
今回は拠点攻略になる可能性ありと、10個程作って持ってきたけど設置はこれで7個目。
使えるなら全部使いたい気持ちもあるけど、まあ無理は禁物だ。
ボトルの周囲に空箱を置いて簡単に隠し、倉庫奥の壁板を切って外へ逃げるための穴を開けていると、やがて外から戸惑った様子のざわめきが聞こえてきた。
「おい、どうした!?」「大丈夫か!?」「しっかりしろ!」などといった声もしてくる。
夜食の時間になり食堂へ行った盗賊が、僕の置いておいた毒入りのシチューか水を口にして苦しみだしたのだろう。
僕はボトルの口の油紙を開き、中の魔石が浸るくらいに入れてあった油に着火。
中に入れてある火の魔石は赤ボトルのような粉末ではなく、拳大のものをまるごと数個なので火が回るまでに少し時間がかかる。
ボトルの中で燃え上がる炎を横目に見ながら僕は息を吸い込み、倉庫の入口から外に向かって思い切り叫んだ。
「わああぁぁぁあぁあああ!!」
たちまち母屋や食堂から「なんだ!?」「敵か!?」という声と共に、あわただしく大勢の気配がこちらに向かってくる。
僕は即座に奥の壁に開けた穴から外へ抜け出した。
建物の裏手を逃げる途中、通り道にあるボトルに次々種火を放り込む。
森に飛び込み、待機していた皆に「伏せて!耳ふさいで!」と叫んで僕も木の後ろに隠れた。
覗いてみれば盗賊達がそれぞれ武器を構え、警戒しながら僕が叫んだ倉庫の中に入って行くところ。
壺の中、油に付いた炎が火の魔石に引火し、その炎と熱が魔石の中の火属性を一気に活性化させ魔石は発火。
同時に火の魔石の魔力が同胞の軽く砕いた雷の魔石の中に流れ込み、雷の魔石の魔力もまた暴走。
火と雷の魔力が混ざり合い、盗賊達のいる倉庫の中で、宿舎の周囲で、次々に炎と雷撃の合わさった大爆発を引き起こした。
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コタロウのボトルキープシリーズ
No.1+:赤ボトル大
設置用大型爆弾。赤い塗料でラインの入った火炎瓶の大型版。壺程の大きさの瓶に、中身は油と火属性と雷属性の魔石。炎と雷撃を伴った大爆発が発生。着火から爆発までに時間がかかるが、従来よりも大幅に火力がアップ。




