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19. さいあく の きゅうじょ

よろしくお願いします。


残酷な描写があります。

ご注意ください。

「……見つけた」


その遺体は、ゴミ捨て場として掘られた大きな穴の中に、生ゴミ同然に投げ込まれていた。


さほど深くはない穴の中に、ゴミに半ば埋もれて白く細い腕と脚が微かに見える。


それも数人分。


最悪の予想が当たってしまったなあ。



1人森の外に出て地面に這いつくばり、ゴミ捨ての穴を覗き込んでいた僕は、とりあえず一旦森の中に戻る。


様子を見ていたケイに首を横に振って見たものを伝えると、彼女もドーランでまだらになっている顔を歪ませた。


「駄目だった。多分拐われた人、全員あの中にいる」


「マジか……クソッ。っておい、なんで服脱ぎ出してんだよ?」


驚いた表情でこちらに目を向けるケイに、僕はシャツを脱ぎながら話を続ける。


「今からちょっと穴に入って助け出してくるから、ケイはここで周囲を見張っててほしいんだ。敵が出てきたら、穴に石を投げ込んで合図して」


「あ、ああ……わかった」



僕は脱いだ上着と靴とズボンをケイに預けてパンツだけになり、町で買ってきた黒布を被った。


再び森から出ると、マジックバッグとククリを手に持って、音を立てないようにゴミ穴の中に入る。


穴の中に山盛りになっているゴミや汚物を探り、粘つく悪臭に何度か吐きながらも、中から4人の女性の遺体を掘り出してマジックバッグに収納。


服を着ている人は1人もいない。


全身に酷い暴行を受けた痕が見受けられる。


リリナお嬢さんの遺体もその中にあった。


散々殴られたか何かした様で顔は腫れ上がって変形し、似顔絵では長かった髪もばっさりと切られている。


なんて酷いことを。


でも彼女達のために悲しむのは後、今は行動する時だ。



穴の外に這い出した僕は森に戻る。


自分に『クリーン』をかけたいところだけど今はだめ。


盗賊の中に魔法使いがいるというのは村で聞いていたけど、魔法使いの近くで魔法を使うと、その魔力を察知される可能性があるのだ。


僕はゴミ穴で汚れた身体を降り続いている雨で軽く拭って、ケイから受け取った服を着る。


装備を整えると、僕とケイは来た道をたどって皆の所へ向かった。




途中でユーナと合流して皆の所に戻る。


待機場所に着くとアリサ達が出てきたので、そこで一旦マジックバッグから遺体を出して地面に寝かせ、アリサとユーナが布で彼女達の身体を軽く拭う。


彼女達の見開かれた状態だった目を閉じさせ、続いて別の布を取り出して遺体をくるんで、改めてマジックバッグに収納した。


悲痛な表情を浮かべながらも黙々と作業をするユーナとアリサ。


そんな2人の口からも、思わずという感じで小さく声が漏れた。


「酷すぎる……」


「外道が……」


『斬羽ガラス』の3人にとっては女性達の無惨な姿は相当に衝撃的だったみたいで、愕然としているケイとリヴに、シュナにいたっては堪えきれない様子で側の草むらに頭を突っ込んでいる。



彼女達が少し落ち着いたところで、僕達は今後の確認。


皆「この後はどうする?」と僕を見る。


僕は皆にざっと拠点で見たことを伝えて提案。


「見てきた限りだと、敵は今かなり油断してるし、見張りもいるけど外側に目が向いてるし何よりだらけてる。内側から破壊する感じならいけるんじゃないかと思う。だから……仕掛ける」


「了解した」


「わかったよ」


「そ……そっか、やるんだな……」


了承をくれるアリサとユーナに、緊張の面持ちで呟くケイ。


「大丈夫か?何度も言ってるが、今回の相手は人間だぞ」


アリサの言葉にケイ達は一瞬躊躇ったものの、すぐに3人共僕達をまっすぐ見据えて頷いた。


「ああ、やる」


うん、この様子ならいけそうかな。


後は戦いが終わった後でショックがまとめて襲ってくることがあるから、そこら辺に注意しておくことにしよう。



「それで内側からって、また潜入するわけ?」


リヴの問いかけに僕は頷く。


「ちょっとね。考えてることがあるんだ」


「考えてること?」


「あらかじめ警告しとくけどね。ほぼ間違いなく、ろくなことじゃないから」


とこちらをジト目で見てくるユーナ。


それはもちろんだ。『敵の嫌がることをやる』これが僕の基本戦術。


「それで、どう戦うんですか?」


シュナの問いかけに、僕は首を横に振る。


「戦う?そんなことしないよ」



そう、これから僕が始めるのは戦いなんかじゃない。


アト王国のクレックス領で、ロホスさんの家族を助けた時と同じ。


相手は人の道を外れた盗賊なんだから、わざわざ同じ戦いの舞台に上がる必要なんかありはしない。



スイッチが入る。


後で聞いた話では、この時の僕は普段とは似つかない、ゾッとする程の冷たい表情を浮かべていたそうな。


僕は皆が少し怯えた様子で見守る中、小声でぼそりと答えた。



「狩る」

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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