表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/453

18. もりのなか の きょてん

よろしくお願いします。

茂みの中を3時間程も進んだ頃だろうか、前方に微かな明かりが灯っているのが見えてきた。


どうやら、大当たりだったようだ。


僕は後ろの皆に「警戒」と指示を出し、体勢をさらに低くしながらなおも進むと、次第にはっきりとしてきた灯りに何か建物のようなものが浮かび上がっているのがわかった。



僕は皆に指示を出してその場に停止する。


振り返るとアリサやユーナはともかく『斬羽ガラス』の3人は、かなり緊張した様子で僕と前方の灯りとを見ている。


僕達はその場で輪になって少し打ち合わせ。


「こんな時期に森に入る村人もいないだろうから、前方のあれが盗賊の拠点だろうね」


「でも、あの建物何だろうね?廃村跡みたいなものは無いって話だったのに」


「もしかしたら、簡易的なものを自分達で建てたのかもしれんぞ」


なるほど、情報では盗賊はかなりの人数がいるみたいだし、人手があればそういうことも出来るか。


小声で話す僕達の横で、ケイが震える声で呟く。


「そ、それじゃ……これからコタロウとアタシがあそこに行くのか」


「うん。でもその前に、僕達もここにちょっと拠点を作ってと」




僕達はそこらに適当な窪地を探し、周囲に気を払いながら木の枝や草を集めて、窪地に被せてちょっとした覆いのようなものを作った。


アリサとリヴとシュナがその中に身を隠して待機し、ユーナが少し前進した所で敵の警戒。


そして僕とケイが拠点に潜入という手筈だ。


覆いが完成したところでアリサとリヴとシュナが中に入り、彼女達に見送られて僕とケイとユーナはさらに前進。


ここからは僕を先頭に3人腹這いになって、見張りや罠を警戒しながらじりじりと進む。


慎重に草木をかき分け、罠がないかククリで前を探りながら時間をかけて、建物がはっきりと見える所にまでたどり着いた。



明かりに照らし出されて、確認出来る建物は全部で7棟。


もうちょっとした集落の規模だ。


建物が木で出来ているところを見ると、やっぱり洞窟や廃村跡などに住み着いたというわけではなくて、アリサの言う通りにもう自分達で住処を作ってしまっていたのか。


暗い中ではっきりとは見えないけど、周辺の木もかなり切り倒されているような感じがする。


こんなことが出来るとなると、こいつらはやっぱり以前僕が討伐したような、チンピラに毛の生えた程度の連中じゃない。


アリサの言った通りどこかの戦の敗残兵の集まりか、それとも傭兵団崩れか。


とにかくそうしたプロの戦闘集団だ。


これは手強そう。




7棟の内3棟は大きな建物で、柱を立てて屋根から布を垂らして壁代わりにしている。


おそらくはこの3棟が盗賊達の宿舎。


布の奥からは明かりが洩れて、話し声や笑い声が聞こえてくる。


屋根は草や木の枝などででも葺いたのだろうか。



建物の内1棟は小さな建物。


そんなしっかりしたものではないとはいえ、壁には木の板を張っている。


他の建物よりも念入りな作りなので、これは略奪品を保管する倉庫かもしれない。


入口の前には見張り番が1人。



残りの2棟には壁は無い。


1棟は食堂兼台所。


中には水瓶がいくつか置かれて大きなテーブルが並べられ、設置されたかまどの側で男が1人、口笛を吹きながら火にかけられた寸胴をかき回している。


あれは夜食かな。


もう1棟は馬屋のようで、中にたくさんの馬が繋がれている。



それから最後に見張り台。


高く組まれた櫓の上に男が2人程いるのが見える。


ただ見張りといっても、この雨の降る夜中に敵などの襲撃は無いと思っているのかかなりだらけた体勢で、見た限りではあまり真剣に警戒している様子ではない。


倉庫の見張りにいたっては、椅子に腰かけて居眠りをしている。


これなら付け入る隙はありそうだ。




さらに少し進むと、前方の藪が開けた所の地面にロープが張ってあるのが見えた。


おそらく鳴子か何か、音が出て敵襲を知らせる仕掛け。


多分この拠点をぐるりと囲むように仕掛けてあるんだろう。



僕は後ろのケイとユーナに「停止」の合図。


声を出さずに手振りで「ここに罠あり」と「ユーナはここで警戒」と伝える。


ユーナの「了解」の合図を確認して、僕はケイと一緒に拠点の様子を探りながら外周を大回りに移動。




まず最初に探すのはゴミ捨て場。


今回は依頼主であるレンダイ先生の孫娘のリリナさんと誘拐された女性達が、もう既に生きていないことを想定している。


その場合盗賊は彼女達の遺体をどうするか。


もう既に用済みの死体なんて、いつまでも取っておくわけが無し。


ましてやご丁寧に埋葬なんてしてくれているとも思えない。


となると、嫌な想像になるけど考えられるのがゴミと一緒にポイ。


なので、彼女達が亡くなっている可能性を潰すためにも、まずはゴミ捨て場を確認する。



草むらから盗賊の拠点を覗きつつ、警報罠のロープに沿って進んで行くと、森の奥側の拠点からは少し離れた所に、地面に大きめの穴が掘られているのが見つかった。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ