16. さくせん の けってい
よろしくお願いします。
僕達は作戦としては、当初はまず少人数で偵察して、盗賊の拠点を特定してから全員で行動というのを考えていた。
でも、
「どうやら急がなきゃいけなさそうだね」
ユーナの言葉に全員が頷く。
集めた情報から、盗賊はどうやら近日中、下手をしたら今夜にでも再度の襲撃をかけてくる可能性が高くなってきた。
となれば僕達も、ここでのんびりしているわけにはいかない。
敵が襲撃を行ってそのまま遠くへ逃げるつもりであるなら、移動の足枷になる被害者の女性たちは、たとえ今生きているとしても行動開始前に間違いなく殺される。
少しでも生きている可能性のある内に、確認もしくは救出したい。
「それじゃ作戦は、今夜暗くなったところで森に入って盗賊の捜索。敵の拠点を見つけたら皆は待機して、僕と……そうだな、ケイが近づいて様子を探る。可能であれば被害者の救出。敵の殲滅が出来るかはその状況次第で判断。皆はもし拠点で何か騒ぎが起きたら即逃げる。くれぐれも僕とケイのことは気にしないように。ということで良いかな?」
本当ならもう少し時間をかけて敵の情報を掴みたかったけど、今回は仕方ない。
ぼやぼやしてると次の襲撃が来る。
「意義なし」
「わかったよ」
僕の作戦に頷くアリサとユーナ。
それに対して、ケイとリヴとシュナは少々呆気にとられた表情を浮かべていた。
「何ていうか……凄いしっかり作戦立てるんだね」
「そう?わりと行き当たりばったりだと思うけど」
僕の返答に、そろって首を横に振る『斬羽ガラス』の3人。
「いやいや、私達こんなしっかり打ち合わせしたことなんて無かったよ?いつも目的地まで行って敵を倒す、ぐらいしか話してなかったし、他のパーティも大体そんな感じだと思うけど……」
「そうなの?」
僕がユーナを見ると、彼女は苦笑気味に首肯する。
「まあ、ここまでしっかり詰めることはあまりないかな。ホウロでのオーク討伐あったでしょ?作戦立てるっていっても、せいぜいあんな感じなんだよね。私が前に参加した盗賊討伐でも、とりあえず現地に行く→盗賊を見つけたら倒す、みたいな大雑把なものだったし」
だからホウロで僕がギルドマスターや事件の関係者を質問責めにしたり、襲撃を受けた集落の地図を作ろうとしたりするのを見て、内心面食らっていたのだそう。
全然そんな素振りは見えなかったのだけれど。
一方でアリサの方を見ると、彼女も首を横に振る。
「軍でもそういうことは無かったな。私が参加した小規模な盗賊の討伐程度であれば、綿密な作戦などは必要ないという考えだった。まあ私は大きな戦いがあったとしても、作戦会議に顔を出せる程の立場ではなかったが」
実際アリサも、ホウロでの僕の行動に戸惑うものはあったらしい。
ただもう騎士の身分というわけではないし、冒険者としては先輩の言うことだからと言う通りにしていたら、予想外に上手くいったことで内心驚いていたのだと彼女は言っていた。
なるほど、他でもそういうものなのかな。
思い返してみれば確かに、僕が実家にいた時に参加した盗賊や魔物討伐でも似たような感じだった。
その際も僕も、アリサと同じように作戦に口出し出来る立場でもなかったので、思うところはあったにせよ大人しく父上に付いて行動していた。
まあ昔はともかく、今はこれが僕達流ということで。
ちなみにこのやり方、前世のテレビで見た戦争映画や災害映画の作戦会議場面も参考にしている。
作戦立案で心がけているのは、想定はネズミのように小心に、実行はライオンのように豪胆に。
ライオンて実際豪胆な動物なのかは知らないけれど。
そんな僕達にケイ達は感心半分、呆れ半分の目を向けてくる。
「アンタら、いつもこんな念入りに準備と打ち合わせしてんの?」
「まあ、余裕がある時はね。こないだのタイアダやブラレクみたいに、いきなり遭遇した時はさすがに無理だけど」
「そりゃまあそうだろうけどさ」
「でも、確かに理には適ってるのかな」
「徹底的に敵の情報を集めて、その上で可能な限りの準備をする、ですか……」
「敵の規模や能力、戦闘スタイル、得意なことや急所、好きなものや苦手なもの、そういったものがあらかじめわかっていれば、たとえ敵との戦力差があったとしても案外対処出来たりするんだよね」
「う~ん、なるほど……」
難しい顔で腕を組んで考え込むケイ達。
何か今後の冒険者活動のヒントになるものがあったかな?
あれば良いのだけど。
とりあえず他に報告事項などが無ければ会議はここでお開き。
夕方の出発の時間までは休憩ということにして、僕達は解散となった。
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。




