13. どうこう の さいかくにん
よろしくお願いします。
レンダイ先生とロウダイさんから事件と、先程の騒動のあらましを聞いた僕達。
正直、なんと言って慰めればいいのか。
ただ、今ここで僕達が何か言っても白々しくなるだけという気もしたので、「この度は誠に大変なことで」とだけ伝えて、後はつとめて冷静に確認だけをする。
「その、フロイグ教というのは……?」
「この国に昔からある小規模な宗教だ。説明したいところだが、この後予定が入っていてな。すまないが詳しくはそちらで調べてほしい」
「先程拘束されていたゴーフェ氏についてはともかく、このことで同じフロイグ教の人間から救出の妨害が入る、などということはあり得ますでしょうか?」
「我々もフロイグ教について詳しく知るわけではないが……ここ最近で、フロイグ教の者達が何かおかしなことをしたという話は、今までに聞いたことは無い」
まあ確かに、カルトとして知られているような宗教だったら、発覚した時点で雇用を続けるようなことはしてないか。
レンダイ先生は午後からまた仕事の予定が入っているとのことで、そろそろ僕達も話を切り上げることにする。
ゴーフェ氏の処遇については、これは依頼とは関係の無いことだし僕達が関わるべきことでもない。
後は何か質問することはないかとアリサとユーナを見るも2人共特には無さそうだったので、ここでお暇することに。
最後に僕達3人立ち上がって、レンダイ先生とロウダイさんに頭を下げた。
「了解いたしました。言い難いことを色々お伺いしたご無礼をお詫びいたします。それでは僕達はギルドに戻って報告の後、早急に準備を整えて行動に移ります。良いご報告が出来るよう力を尽くしますので、どうかよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしく頼む。朗報を期待している」
と、同じく立ち上がって頷くレンダイ先生とロウダイさん、それに秘書のセインさんにお暇を告げ、必要書類とリリナお嬢さんの似顔絵を受け取って僕達は屋敷を辞去した。
玄関から外に出ると、ちょうどそこに外出用の馬車が着くところ。
帽子を取って会釈してくれる馭者さんに挨拶を返して、レンダイ先生の屋敷を後にした僕達。
まずは冒険者ギルドに戻って、ソランさんに依頼の詳細を報告する。
屋敷で出くわした騒動や、フロイグ教関連の話については先生の個人的な事情になるため報告はせず、「ヤッヒル村にてレンダイ先生の家族が盗賊に誘拐されたので、その救出及び可能であれば賊の殲滅」という依頼内容と、依頼人が他言無用を希望しているということを伝えて了解を得た。
それからギルドのホールで待っていた『斬羽ガラス』の3人にも依頼内容を説明し、秘密厳守であることを伝える。
「その上でもう一度確認するけど、皆本当に一緒に行く?危険だし、魔物じゃなくて人間相手だし、それに多分、かなり嫌なもの見ることになるよ?」
ユーナの問いかけに3人は一瞬迷いを見せたけど、すぐに僕達を真っ直ぐに見据えた。
「でも冒険者としてやっていくなら、いつかは向き合わなきゃいけないことなんだろ?頼むよ」
「出来るだけ迷惑かけないようにするから」
「もし邪魔になったら、すぐに追い返していただいてかまいません。お願いします」
3人の返事にアリサが頷いた。
それでは今回は、僕達と『斬羽ガラス』の合同で依頼を遂行するということで僕がソランさんに報告。
その間にアリサが彼女達にこの後の説明をする。
「わかった。では今回はよろしく頼む。で、さっきも言ったが私達は、普段はともかく作戦行動中はコタロウがリーダーということになっている。こいつの指示を最優先で聞くようにしてくれ」
これは、このドーヴ市に着いてから改めて定めたこと。
ホウロでのオーク戦や、山道でのブラッドレクス戦の経験から、戦闘や作戦行動の際は僕の指示に従うのが一番生存確率が高そうだということで、アリサとユーナ同意の下そのように決まった。
「戦いの際は思い切りが良い」「判断に迷わない」などといった評価は、実は実家にいた時から受けていた。
一方で「外に遊びに行きたい。でも雨が降ってるどうしよう」みたいな判断については、窓から外を眺めながらけっこうな時間悩んだりもして、これは前世の猫の時から変わらない。
ちなみに普段の生活については、立場的に僕が1番下である。
とにかく、今回の依頼について皆と合意が成ったところで、僕達は今後の準備に入る。
今日1日は準備に当てて明日の朝出発ということにして、まずはアリサがヤッヒル村行きの馬車の手配に運輸ギルドに向かい、残りの僕達5人は買い物に街へと繰り出した。
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。




