12. きゅうしゅつ の しまつ
よろしくお願いします。
まず気絶した盗賊の1人を縛り上げる。
続いて、口の中を貫かれて床で痙攣している1人にとどめを刺すと、シーツの上で抱き合って呆然としている女性2人に声をかけた。
「こんにちは、マリーノさんとアンナさんで間違いないですか?ロホスさんの依頼で救助に来ました」
硬直していたマリーノさんだったけど、旦那さんの名前を聞いてはっと我に返る。
「は、はい、そうです!私がマリーノでこちらが娘のアンナです!あ、あの……本当に、助かったんですか?」
「盗賊はそこの奴以外みんな仕留めました。旦那さんも無事です」
それを聞いて気が抜けたんだろう。
マリーノさんとアンナさんは、お互いに抱き合ってわんわん泣き出した。
しばらくそっとしておいてあげることにして、僕は魔法で水を出して顔を洗い、それから2人の服を探すけど見あたらない。
仕方がないので、部屋に敷いてあったシーツを切って2人に被せた。
少し時間が経って落ち着いたようで、2人とも僕に向き直って頭を下げてきた。
「助けていただいて本当にありがとうございました。あの、お1人なんですか?」
「はい、たまたま通りかかったところで旦那さんから助けを求められまして。どこまで出来るかはわかりませんでしたが、助けられて良かった。災難でしたね」
僕はそう言って2人に軽く笑いかける。
改めて安心したのか再び泣き出したアンナさんが、涙声で僕に何度もお礼を言ってきた。
「本当に……本当に……ありがとうございます」
「いえいえ。それよりお2人はこれからどうしますか?僕はこれからロホスさんを呼びに行って、奪われた荷物の回収とかあるのでまたここに戻ってくるつもりなんですが。ここで待ちます?それとも一緒に来ます?」
2人は顔を見合わせて、すぐに一緒に行きたいと言ってきた。
まあ助かった直後でまた盗賊の隠れ家に、しかも気絶して拘束されてるとはいえ盗賊の1人と一緒に残るのは心細いか。
魔物が来る可能性もあるし。
何より少しでも早くロホスさんの顔も見たいだろう。
僕はマリーノさんとアンナさんを連れてロホスさんの所に行くことにして、2人には探してきた桶に魔法で水を溜めて体を洗ってもらう。
服は略奪品の部屋から適当なのをあさってきて着てもらった。
多少サイズが変わるのは仕方ない。
元々着ていた服は盗賊に破かれたらしい。
2人が身体を洗っている間に、僕は気絶してる盗賊を再度、更に厳重に拘束し直す。
そうしていると、着替えを終えた2人が近寄ってきた。
「あの、その盗賊は……?」
「ああ、こいつには後でちょっと用事があるので」
2人を連れて洞窟を出て、ロホスさんが隠れている所の近くまで行くと、名前を呼ぶ前にロホスさんが道脇の藪から飛び出してきた。
「マリーノ!アンナ!」
「あなた!」
「お父さん!」
親子3人抱き合って泣き出す。
僕はそれを見て、静かにほっと息を吐いた。
なんとか助けられて良かったよ、本当に。
僕は落ち着いた3人に改めて泣きながらお礼を言われ、その3人を連れて再び盗賊の隠れ家に戻った。
洞窟に入る前に、まず離れたところに繋がれていた馬を回収して馬車に繋ぎ直し、僕の身体強化も使って草むらから道に引っ張り出す。
やっぱり多少傷ついてはいたけど、走るのに問題は無さそう。
盗賊が馬を洞窟から離して繋いでいたのは、魔物避けか何かだったのだろうか。
とりあえずこの近辺で強力な魔物が出たという話は聞かないし、今のところ辺りに魔物の気配は無い。
それから略奪品の部屋に行き、中にあった物を皆で何回か往復して馬車に積み込む。
量は多かったけど多少捨てたり売ったりした物もあったのか、そこまで桁外れという程でもなかったので馬車には全部積み込めた。
本来であればこういう時に盗賊などから回収した物、いわゆる戦利品は討伐した人の物、つまり僕の物になる。
とはいえこんなの僕1人で運べる量じゃないし、そこら辺は後で相談かな。
そんなことを考えていた僕に、ロホスさんが声をかけてきた。
「大体こんなところでしょうか?」
「そうですね。それじゃあ最後にもうひとつ、皆さん一緒に来てもらえますか?」
皆を連れて洞窟の奥に行くと、縛り上げて転がしておいた盗賊の生き残りは既に目を覚ましていて、僕達を見るなりもがき出す。
拘束は大丈夫そうだったので、僕は拾ってきた木の棒3本をロホスさん達に差し出した。
「ぶちます?」
お読みいただきありがとうございます。




