5. ほうしゅう の がく
よろしくお願いします。
僕達が案内されたのは、冒険者ギルドの来客用の応接室。
なんでもキサイギルドマスターは、今日は所用で出かけているらしい。
「ただいまご用意しますので、少々お待ちください」と部屋を出ていったソランさんを3人で長椅子に腰かけて待っていると、やがてソランさんともう1人、ゴブリン討伐に同行したホードさんが戻ってきた。
2人は僕達の対面に座り、テーブルの上に書類とお金の入った袋などを広げる。
「お待たせしました。この度は貴重な魔物素材を、当ギルドにお持ちいただきましてありがとうございます。解体と査定が終了しましたので、お支払いの手続きをさせていただきます」
「おはようございます。先日はお世話になりました。早速ですが、こちらがお持ち込みいただいた素材のお支払い額とその明細です」
そう言って差し出された書類を確認支払い額は……総額で白金貨6枚に大金貨3枚。
これまたすごい金額だ。
明細を見てみるとやっぱり魔石の価格が大きい。
1級モンスターの素材というのは、やっぱり価値のあるものなのだ。
後はそこから解体の手数料に僕達の装備品を作る素材に、その職人さんの手間賃に、ガンユさんや『斬羽ガラス』の取り分と、その他もろもろが差し引かれてそれでもこの金額。
僕達大金持ちになってしまったわけだけど、まあそれでもさっき『斬羽ガラス』に言った通り、大金はあれば嬉しい反面あまり良くないモノも引き付ける。
アリサとユーナともよく話し合って、あまり羽目を外さないように気を付けよう。
幸い3人共、あまり身分や権力やお大尽暮らしに興味がある方ではない。
こうして色々な所を観て回る以外は、生活に困らない程度に稼いで慎ましく暮らせればそれで良いのだ。
後は魚にさえ不自由しなければ。
僕達は支払いの書類にサインしてお金を受け取ると、万が一落とした時などのために半分をギルドに預けて、もう半分は3人で分けて持ち歩くことにする。
そうしていると次にソランさんが、他にテーブルの上に置いてあった肩掛けの鞄を差し出してきた。
「それからこちらが、ご注文いただいてましたマジックバッグです。できるだけ高性能なものをというご要望でしたので、早急に手に入る中で最も等級の高い物をご用意いたしました」
アリサ用に頼んでおいたマジックバッグだ。
価格は白金貨1枚で、これは僕達が受け取ったお金から既に差し引かれている。
性能としては、容量が僕がコモテの町で買ったマジックバッグよりも荷馬車1台分程多いくらい。
内部の時間経過は僕のとほぼ同じで、外の時間の10分の1程とのこと。
十分過ぎる性能だ。
「いかがでしょうか?もしもっと等級の高い物をご希望でしたら……」
「いや、これで十分だ。ありがたく頂戴する」
アリサはそう言って、差し出されたマジックバッグを受け取った。
これで僕達3人全員マジックバッグ持ちになったな。
今日は宿に帰ったらお金の分配と荷物の整理をしよう。
「それから、ご注文いただいている装備品については、すみませんがもう1ヶ月程お時間をください。ユーナさんの昇級とほぼ同じ頃の予定ですので、合わせてお渡しすることになるかと思います」
「ああ、それがあったね……」
ユーナが、せっかく忘れていたのに思い出してしまったという顔をする。
まだ2級へ上がるのに抵抗感のようなものがあるらしい。
これについては僕達の3級と合わせて、面倒事が寄ってこないことを祈るばかり。
さて、後は特にギルドに用事も無いことだし、僕達はこれでお暇しようかな?
僕はソランさんに、
「それじゃあ今日はどうもありがとうございました。装備品が完成したらその時はまたよろしくお願いします。では、僕達はこれで」
と言い残して席を立つ。
そそくさと部屋を出ようとした僕を、ソランさんの「お待ちを」という声が引き留めた。
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