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4. おおもの の ほうしゅう

よろしくお願いします。

それからまたしばらくの間、僕達は武器のメンテナンスや補充に訓練、それから3人で町でデートしたりして過ごした。


僕のククリは1本ゴブリンジェネラルに折られてしまったので、新しいククリを注文した武器屋に「もう1本作ってくださぁ~い」と鳴きついて、蛇貫石製のをもう1本作ってもらうことに。


合わせてギルドでもらったリシルド鋼の剣の整備と調整と、ついでにゴブリンジェネラルが持っていた剣ということで教会での浄化も頼んである。


ゴブリンジェネラルとの戦いで、僕もまだまだ力不足だというのを改めて実感したので、日々の訓練は今まで以上に念入りに行うようになった。


たまに採集依頼などを受けたり、新作火炎瓶の開発とテストをしたり、時間がある時には3人で町を観て回ったり、美味しいもの食べに行ったりしながらのんびり暮らす日々。


気づけばドーヴに来てから1ヶ月程が過ぎていた。




その日も僕は朝目を覚ますとアリサの枕元で、ケチな男がご飯を食べないという奥さんと結婚した結果えらい目に遭うという昔話を始める。


終盤の、男が奥さんを問い詰めたところで話を切ってみたら彼女、「……続きは?」と言って起きてきた。


「続きは後で」と言って宿の庭先で、3人で日課になりつつあるアリサズブートキャンプのメニューをこなす。


その日は特に予定なども無く、そろそろ持ち込んだブラッドレクスやタイタニックアダーの査定が終わる頃かなとギルドに顔を出してみることに。


朝食をすませた後皆で、朝方の昔話の続きを話しながらギルドに向かい、建物に入って受付にいたソランさんに声をかけようとすると横から声がかかった。



「よっ!しばらくだな!」


見るとそこには『斬羽ガラス』の3人が立っていた。


前で片手を上げているのはケイで、その後ろにリヴとシュナが笑顔で立っている。


「おはよう、元気そうだね」


「ああ、なんとかぼちぼちやってるよ。アンタらは、今日は依頼受けに来たのかい?」


「いや、前に頼んどいた例の大物の解体と算定、そろそろかなあと思って」


僕の返事に、ケイは納得した顔になる。


「ああ、それならもう終わってるよ。タイタニックアダーのお金、アタシらも昨日もらったんだ」


「そっか、それは良かった」


以前ギルドに頼んでおいた、タイタニックアダーの素材の売却額の3分の1を彼女達の報酬にするという話、無事支払われたみたいだ。


「大金貨8枚だって。こんな大金初めて見たわよ。何度も訊いて悪いけど、本当にもらって良いの?」


どこか申し訳なさそうに尋ねてくるのはリヴ。


「もちろん。でも使うのにはくれぐれも注意するんだよ?大金を持っていると知られたら、どうしても変な人間が寄ってきたりするからね」


ユーナの言葉に、3人は若干緊張した顔で頷く。




以前ユーナに聞いた話では、彼女が3級に昇級してある程度お金に余裕が出てくると、途端に周囲の冒険者達からまとわりつかれるようになったらしい。


パーティに勧誘してきたり口説いてきたりというのはまだ良い方で、中には勝手に彼氏顔をするようになったり、知らないうちにパーティに参加したことにされてたりと、色々嫌な目にあったのだそう。


その時はもう、ほとぼりが冷めるまでひたすら逃げ回り続けていたのだとか。


彼女は1人で活動していたのでそこまで交遊関係も広くはなかったことも幸いし、依頼先や宿に押しかけられるようなことは無かった。


とはいえギルドマスターから言い寄られていたことと合わせていい加減嫌気が差していて、僕と出会ったのはそんな折だったということだ。


僕も一時期、新人に見合わないマジックバッグなんて物を持っているということで、周囲にばれたら面倒なことになると気を使っていた時期があったし、やっぱりこういうのには注意するにこしたことはない。




それはともかくとしてもう算定は終わっているということなので、早速受付にいるソランさんに声をかけてみた。


「おはようございま~す。ソランさん、お願いしてた魔物素材の査定終わりました?」


「おはようございます!ええ、査定が先日終わりまして、皆さんをお待ちしていたところだったんですよ。ただ金額が高額なので、お支払いについては奥でさせていただきます。ご案内しますね」


そう言ってソランさんはカウンターを閉めて立ち上がって、そこでふと何か思い出した様子で僕達を見た。


「あ、そうだ。それとコタロウさん、合わせてちょっといいですか?緊急で依頼が入っているんですが」


「あ、すみません僕はこの後日向でゴロゴロするのに忙しいので、お金だけもらったら帰ります」


「ええ~、ダメですか?」


困った顔をしているソランさんに、ユーナが後ろから進み出て何事か耳打ちをする。



一瞬苦笑いを浮かべたソランさん、ユーナと僕の後ろに向かって軽く頷くと、やや棒読み気味に声を張り上げた。


「そ、そんな!私を捨てるんですか!?」


「ひどーい」


「あんまりだー」


「責任取ってよー」


「捨てないでー」


「貴方しかいないのー」


なんかソランさんとユーナに、後ろにいたアリサに『斬羽ガラス』の皆までそろって声を上げている。何やってんの……



そろそろ周囲の冒険者(主に男性)の視線が痛くなってきたので、やむを得ず了承することに。


「わかりました。話聞かせてください……」


「ありがとうございます!それではこちらへ!」


満面の笑顔を浮かべるソランさんに案内されて、がっくり顔の僕と笑う奥さん2人はギルドの奥に通されたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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