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26. ひのなか の ごぶりん

よろしくお願いします。

やっぱり元の拠点であるこの廃村跡を頼りにしてきたか。


ゴブリン達はさらに続いて数匹、十数匹の集団が逃げ込んでくる。


遠目に何か、他のよりも少し身体の大きなゴブリンがいたような気がしたけど上位種だろうか。


逃げて来るゴブリンが一瞬途切れたところで、横の隊員が「やるか?」と尋ねてきたので僕は「もう少し待ちましょう」と答える。


どうせなら出来るだけ多く巻き込んで片付けたい。



その後も廃村跡には続々と駆け込んで来るゴブリン達。


数的にはもうそろそろ50に届こうかというところ。


もっと逃げて来るかと思ったけど、案外そうでもない。


向こうでは皆が頑張って逃がさないように戦っているんだな。


油を大量に撒いたので多少の臭いはしていると思うのだけど、今のところゴブリンが気づく様子は無い。


まだ興奮状態で臭いを気にする余裕が無いのか。


とはいえ、倒した居残り組の死骸はそのまま建物に放り込んであるだけなので、見られたらすぐに異常があったと気づかれる。


あまり待ちすぎるのもいけない。



そうして見ていると、廃村内では逃げ込んでくるゴブリンが途切れた様子。


大体集まった感じかな。


百はいなさそうだけど、大体50いるかいないか。


……よし。



僕は皆に「いきます」と合図をして、了解を確認すると側にあるロープを油に漬けて作った簡易導火線に着火。


ロープの上を火が走り、廃村内に撒いてあった油に引火。


たちまち大きな炎が巻き起こり、廃村の中央付近に集まっていたゴブリン達を飲み込んだ。




「かかれ!1匹たりとも逃がすな!!」


小隊長の命令で、僕達は一斉に廃村内に突入。


炎に包まれ、絶叫を上げてのたうち回るゴブリンを次々に斬り倒し、突き殺していく。


ちなみに僕達の中で1人だけ、水魔法を使える魔法使いの隊員だけは攻撃に参加せず、離れた場所で火が森に燃え移らないよう監視をしている。



「火から出てくる奴を狙え!中で燃えているのはそのまま焼き殺せ!!」


小隊長の指示の下、飛び出してくるゴブリンを狩り立てていると、廃村の入口の方から声が上がった。


「新手が来たぞ!数は20!」


「迎え撃て!ここでまとめて片付けろ!!」


その声を受けて、次々と隊員達が廃村の入口に向け走って行く。



僕も目の前にいたゴブリンにとどめを刺し、さてそちらに向かおうかと踵を返したところで、不意にぞくりと背筋が総毛立った。


突然背後から襲ってきた凄まじい殺気と、頭の中でがんがんと鳴り響く危険信号。


慌てて振り向くとその先には、燃え盛る炎の中ゆっくりと起き上がる、1匹のゴブリンの姿が見えた。



あいつは……


先日見たホブゴブリンとは違う。


成人男性よりも一回り大きく、盛り上がった筋肉に覆われた体躯に金属の軽鎧をまとい、どこで手に入れたのか材質の良さそうな剣を持っている。


ゴブリンナイト?でもゴブリンナイトは成人男性と同じか少し小さいくらいで、あんなに大きくはないはず。


ということは……



ホブゴブリンやゴブリンナイトのさらに上位種、ゴブリンジェネラル。


百単位の集団を指揮する能力を持ったランク2級モンスター。


さっき戦場から「ゴブリンキングが出た」と聞こえたけど、そちらは軍が対処してるはず。


こいつはそのキングの側近だろうか。


こんな奴、いつの間にここに来た?


さっき十数匹程のかたまりが逃げ込んできたのがあったけど、その集団にでも紛れていたのだろうか。



炎の中から出てきたゴブリンジェネラルは、これ以上は無いって程の怒りと殺意のこもった目で僕を睨んでくる。


どうやら火を付けたのが僕だということに気づいているらしい。


身体に燃えた様子が無いのは、着ている鎧の効果か、それとも他のゴブリンを盾にでもしたのか。


後方の隊員の人達は他のゴブリンにかかっていて、こちらには手が回らない。


ただ対峙する僕とゴブリンに気づいた人もいて、「おい、あいつ!」「ジェネラル?いやでも、あれ……!?」「なんでここに!?やべえ!」などと焦った声が聞こえてくるけど、今すぐこちらに来てもらうのは無理そうだ。


それに、敵がわざわざこちらの援軍を待っててくれることなどあるわけもない。


ゴブリンジェネラルの剣を持つ手に力がこもるのが見えた。


あの剣、僕は剣に詳しいわけではないけど、あれは相当な業物なのではないだろうか。


なんにせよ、今こいつの相手を出来るのは僕しかいない。



僕は黒曜鋼のククリを片手に構え、ゴブリンジェネラルは剣を両手持ちに振りかぶる。


武器を手に睨み会うのはほんの刹那の間。


次の瞬間僕とゴブリンジェネラルは、お互いに向かい、相対した相手を殺すため、地面を蹴って突進していった。

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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