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10. かり の かいし

よろしくお願いします。


残酷な描写があります。


ご注意ください。

僕は気が変わった見張り番に、彼が知っている限りの情報を教えてもらった。



仲間は彼を入れて11人。


今は全員洞窟の中で、別行動で外に出てたりする者はいない。


馬は世話のやり方がわかる者がいないため、草喰わせとけば良いだろうと少し離れたところに繋いである。



僕の予想通り、彼らは元は町でたむろしていたヤンキーの集団。


いわゆるストリートギャングというやつか。


腕っぷしを武器に街中で幅を利かせていたのが、ある時暴力沙汰の末に人を殺してしまって町にはいられなくなり、逃げて来たこの場所で野盗のような真似を始めたのだそう。



盗賊を始めてからまだ間もないが、これまで何度か近くの道を通った行商人を襲っている。


その時は財産を奪って商人は殺した。


さっき拐った女性2人は頭と副頭が洞窟の奥に連れていった。


まずはその2人が味見して、済んだら他の仲間にも回してもらえることになっている。


さっきの襲撃が上手くいったので、仲間達は中で打ち上げの宴会中。


見張りは一応2時間交代だけど、あの様子じゃ時間になっても誰も来ないかも。



といったところ。


怯えはしても悪びれはせずに語る盗賊。


胸くそ悪いことこの上ない。


やってることはまさしく獣同然だ。


獣ではなく人間として生まれたなら、その高い知能をもっと他のことに使えなかったのか。


とはいえ、今は腹を立ててる時じゃない。




最後に地面に簡単な洞窟内の見取り図を書いてもらい、入り口以外洞窟に抜け道などは無いことを確認して、彼は解放してあげた。


捕まえた盗賊をそのまま解放とか普通ならあり得ないことだけど、正直に話せば殺さないと約束したんだから仕方ない。


両目と両手の指が全部無い身体で今後どうするのかはわからないけど、彼にはぜひ悔い改めて罪を償ってほしいと思う。



たくさん話して喉が乾いたみたいだったので、近くの川に連れてってあげてそこでお別れ。


なんか戻る途中で後ろから水音が聞こえたけど、魚でも跳ねたかな?




再び洞窟の入り口に戻って様子を確認する。


見張りがいなくなっていることには、まだ気付かれてはいないみたい。


心配だったのが、宴会中の盗賊がトイレなどで外に出てくること。


なんでも人間、お酒をたくさん飲むとトイレに行きたくなるらしい。



でも見張りを尋問しながら洞窟の方にも注意はしてたけど、誰も出てくる様子はなかった。


中にトイレも作ってあるんだろうか。


いちいちトイレで外に出るのがめんどくさいというのは、まあわからないでもない。


きっとトイレ掃除は下っぱの役目だろう。



ともあれ、次は本命の洞窟の攻略だ。


しかしあれこれと考えてはみたけれど、どうも最初に思いついた策以上に良いと思える案が出てこない。


じっくり考えている時間も無いので、ここはこの作戦でいこう。


奥さんと娘さんには、少しばかり煙いのは我慢してもらうしかないか。


さて、燻してやる。




猫、というより動物の戦いというのは、徹底した合理主義なんだと僕は思う。


狼が群れを組んでの追撃戦を行うのも、ライオンがハーレムを指揮しての集団戦を仕掛けるのも、トラやヒョウや、そして猫が奇襲攻撃で一撃必殺を狙うのも、それが最も自分の能力を活かせる戦い方だから。


であれば、猫の心と前世の記憶、そして人間の頭脳と身体を持っている今の僕なら、猫の狩りのノウハウに人間の知恵と前世の知識をミックスさせて、さらに人間の器用な手足をフルに活用して戦うのが理に適っているはず。




僕は最後にもう一度、洞窟内の見取り図を頭に叩き込む。


それから洞窟の入り口の前の地面に剣で穴を開け、さっき削っておいた木の枝を数十本、尖った方を上にして植え込む。


洞窟の入り口にロープを張ろうと思ったけど、ロープを結びつける手頃な所が見当たらない。


仕方がないのでたった今植えた木の枝を1本抜いてロープを結び付け、洞窟の入り口脇の地面に刺し込んで石で押さえる。


仕掛けたロープやトゲには、軽く砂を被せて見えないように。


次の見張りの交代の時間までにはまだ間があるけど、だからといって盗賊が何かの気まぐれで外に出てこないとも限らない。


人が出てくる気配に注意しながら、慌てず急げ。



用意が出来たら、入り口に周りの森から伐ってきた生木や木の枝を積み上げて、更にその上に枯れてない生の葉っぱを被せる。


そしてその上から、ロホスさんの馬車から持ってきた瓶の油をたらたら垂らして火を付けた。


積み上げた葉に火が付き、生木なので凄い量の煙が上がる。


その煙を、さっきの見張りが忘れていった上着でばっさばっさあおいで洞窟の中に送り込む。


そして頃合いを見計らって大きく息を吸い込み、洞窟の中へ向かって思い切り叫んだ。


「火事だ!!」



少し様子を見ていると奥の方で「何!火事だ!?」「おい、なんだこれ!?」「やべえ煙だ!逃げろ!」「邪魔だ!」「どけよ!」てな感じの声が上がり、それが多数の足音と一緒に出口の方へ向かってくる。


脇に避けてロープの端を持って、ボウガンと油の瓶を傍に置き、入り口に意識を集中。


洞窟から次々に盗賊達が駆け出してきたところで、力いっぱいロープを引っ張る!



まず先頭の奴が張られたロープに足を引っ掛けて転び、後から来たのがその体につまづいて次々に転び、転んだ拍子に地面に植えられたトゲで手を刺し足を刺し腹を刺し。


叫び声をBGMに、子供が集団での遊びでやるような人間饅頭が出来上がった。



僕はすかさず瓶に残っていた油を盗賊達にぶちまけ着火。


たちまち火だるまになった男達が絶叫を上げてのたうち回る。


取り敢えず仕掛けは成功だ。


僕は剣を抜いて、盗賊達に端からとどめを刺していった。



えーと数はひのふの……6人か、思ったより釣れたな。


あとは4人。


盗賊なら火事ともなれば、女性なんか放り出して我先に逃げ出すと踏んでいて実際その通りになったけど、残りの盗賊も女性達も出てくる様子は無い。


混乱に乗じて人質を攫って逃げるという手も考えてたんだけどな。


中で失神でもしてるのか。



盗賊なんかはまあ死ねばいいとして、後はマリーノさんとアンナさん。


気絶でもしてるようなら早く助けなければ。


僕は鼻と口を予備のバンダナで覆い、剣とボウガンを構えて洞窟に侵入した。

お読みいただきありがとうございます。


主人公の行動のスタンスは「基本的には人助け、ただしあくまでも出来る範囲で」です。


ただし猫ということで、敵や獲物(と認定した相手)に対する慈悲心のようなものはありません。



また他の動物の知識などについては、主に前世で日曜日の夜に放送されていた、偉人の名を冠した教育番組などから得たものです。

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