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25. はいきょ の しゅうげき

よろしくお願いします。


残酷な描写があります。

ご注意ください。

僕達は激戦の続く村を大きく迂回して森の中を移動し、最初にゴブリンを見つけた廃村跡に到着していた。


森の中に潜んで様子を見る僕達の視線の先には、村内を徘徊するゴブリン達の姿。


やっぱり主力の他に居残り組はいたらしい。


そこまで数は多くはなさそうだけど、それでも十数はいるだろうか。


武装はしている様だけど、見たところ上位種の姿は無い。


今の戦力でも撃破は出来るだろうけど、可能な限り逃がしたくはないということで打ち合わせの結果、部隊を2つに分けて手前と奥から攻撃を仕掛けることになった。



現在は僕を含めた分隊11名がこの場に残り、ゴウラ小隊長率いる本隊10名が、廃村跡を迂回して奥側に移動している。


本隊の攻撃開始と合わせて僕達も突入する手筈だ。


幸い村内のゴブリンが外に出ていくことも、外から別のゴブリンが来ることもなく時間が過ぎ、やがて村の奥から鬨の声が上がる。


それに呼応して僕達も森から飛び出し、奥に注意の向いたゴブリン達に背後から襲いかかった。



どうやら村内のゴブリンに上位種や腕の立つ者はいなかったらしく、僕達は特にピンチに陥ることもなくゴブリン達を殲滅することができた。


そして現在僕達は、ゴブリンの死骸の片付けをしている。


ついでにこういう所は、そのままにしとくとまた魔物やら盗賊やらの拠点になる場合もあるので、出来る限り破壊しておいた方が良い。


そんなわけで廃村跡を調べて回っていた僕達の目に、それは飛び込んできた。




「うっ!」


「これは……」


「ひでえ……」


「……クソ!」


廃屋の中で見つけたそれは、ずたずたに引き裂かれた人間の死体。


人としての原形はほぼ留めていないけど、おそらくは10人分くらいでまだ新しい。


一息に殺さず、時間をかけてなぶり殺しにされたのが見て取れる。


そして、遺体にまとわり付いている服や鎧など装備品の残骸と、かろうじて確認できる彼らの顔立ち。


僕、この人達に見覚えがある。


避難者達を連れてドーヴに戻る時に会った、先行偵察隊の人達だ。


ということは……



「アークさん……」


間違いは……ないな。


兵士や冒険者達の遺体の中に、アークさんの遺体もあった。


確かに、全滅したって話は聞こえてきてたけど……


信じたくはなかったなあ。



「……知り合いがいたのか?」


ショックを受けている僕の肩を、ゴウラ小隊長が軽く叩く。


僕が頷くと彼も頷き返して、絶句している僕達に声を上げた。


「犠牲者が出たのは残念だ。だが今は呆けている時ではない。仕事に戻ろう。彼らの敵を討つぞ」


小隊長の言葉に、頷いた隊員達が次々外に出ていく。



小隊長の言うとおりだ。


悲しいけど、彼らの死を悼むのは後。


今第一に考えるべきは、任務を達成して無事に帰ること。


僕も切り替えないと。


「遺体はどうするか」と言う小隊長に「マジックバッグがあるんで、僕が持って帰ります」と答えて、僕は遺体をマジックバッグに収納していく。


確か先行偵察隊は10人くらいだったはずだから……ん?これは……え、なんで?



「どうかしたか?」


「あ……いえ、大丈夫です」


作業の手が止まった僕に小隊長が尋ねてきたので、僕はなんでもないと返事をする。


「そうか。兵士の遺体はこの件が片付いたら軍で引き取るから、すまんがそれまで頼めるか?」


「わかりました。大丈夫です」


僕は12人分の遺体の収納を終えて、小隊長と廃屋の外に出た。


さて、まだまだ仕事は山積みだ。




ゴブリンの死骸を粗方建物跡に放り込むと、僕はマジックバッグからドーヴで買ってきた油樽3つを取り出した。


「用意の良いことで……」と半ば呆れ顔で僕を見る兵士の人達に、無理矢理笑顔を作って応える。


ついでにゴウラ小隊長に「作戦に使った物ですけどこの油の代金、軍で持ってもらえたりなんかは……」とねだってみると、ちょっと疲れた顔をしながら「一応具申はしてみる」との回答だった。


さてどうなるかな。


そんな感じで兵士の皆にも手伝ってもらい、ゴブリンの死骸や廃墟、そして村跡にもせっせと油を撒く。


火を付けて森に燃え移ったりしてはいけないので、そこは森に近づき過ぎないように注意する。



隊員の中には水魔法を使える魔法使いの人もいるけど、だからといって森に火を付けていいことにはならないので慎重に。


油樽が全部空になったところで、僕は小隊長にちょっと提案してみた。


「どうせなら火を付けるの、少し待ってもらってもいいですか?」


「?何だ?」


「ここはゴブリンの拠点になっていたので、向こうでやられたゴブリンが逃げて来る可能性があると思います。戻って来たところで火を付ければ一網打尽に出来るかなと」


僕の提案に、兵士の人達の「うわぁ……」という顔が返ってくる。


「なんというか、容赦がないな」と呟く小隊長。


何か変かな?


「動物は必要以上の殺しはしない」なんて言う人いるけどそんなことないぞ。


肉食でも草食でも「敵は可能な限り殲滅」が生存本能の鉄則だ。


ちなみに「なんか、魔物の討伐じゃなくて獣の駆除をやってる気分になってきた」とは、隊員1名の談。


まあ提案自体には了承してもらえたので、僕達は廃村内に油を大量に撒き、周囲の森から集めた枯れ枝を所々に積み上げ、ついでに僕がこっそりと火の魔石の粉末もあちこちにふりかけてと仕掛けの設置作業。


急いで準備を終えたら、再度森の中に隠れて待機することにする。



しばらく待っていると、遠くで聞こえていた戦いの喧騒が次第にこちらに近づいてくるのがわかった。


討伐隊がゴブリンを押しているみたいだ。


さらにしばらく待っていると、やがて村内に1匹2匹と、ゴブリンが駆け込み始めた。

お読みいただきありがとうございます。


また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。

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