プロローグ
初の小説になります。
3日毎の投稿を予定しています。
よろしくお願いします。
物心ついたときから、不思議なことに僕には2つの記憶があった。
1つは今の僕が生まれてから現在までの記憶。
もう1つは人間ではない僕が、生まれてから死ぬまでの記憶。
小さい頃からそんな自分に違和感を感じながら、それを無理矢理意識しないようにして生活していた。
それが今の僕が生まれる前の、そう、前世の記憶であることに気が付いたのは、10歳になる少し前のある日。
なぜ急に気が付いたのかはわからない。
何かきっかけになることがあったのかもしれないけど覚えていない。
前世の僕は、日本という国の滝本家という家に飼われていた猫だった。
そう、猫だった。
比喩でもなんでもなく猫だった。
お父さんがメインクーン、お母さんがペルシャで僕はお父さん似。
大きな身体に首回りと尻尾のふっさふさな毛が自慢の、猫だった。
住んでいたのは日本のどの辺りだったのかはわからない。
ただ冬には雪がたくさん降ったから、きっと寒い方の地域だったんだと思う。
周りには山と広い田んぼがあるのどかな所だった。
滝本家の人達は皆優しくしてくれたし、他所の猫はわからないけど僕は本当に可愛がってもらった。
時々外に出してもらうときも、自動車が怖いものだというのは理解していたので道路には出ないようにしていたし、車の方も道が狭かったこともあってかあまりスピードは出さないようにしていたみたいだった。
まあたまに悪さをして怒られたり、ネズミを取り逃がして落ち込んだり、病院に連れていかれて注射を打たれたりしたけど、それでも幸せな一生だったと思う。
前世の僕は20年くらいまで生きたけど、こちらの世界の猫は、たとえ飼い猫であっても10年と生きないのがほとんどだ。
最後の記憶は、いよいよお別れの時。
僕の様子に気づいた家の人達が集まって、皆で泣きながら僕を見ているところ。
皆が代わる代わる声をかけてくる中、意識が落ちそうになるのを堪えて最後に皆に「ありがとう、幸せでした」と伝えようとしたけど、声が届いたかどうかはわからない。
そうして次に目が覚めた時、僕はアト王国の貴族、ルシアン伯爵家の次男リーオ・ヒル・ルシアンとして生まれていた。
この世界に日本という国は無い。
テレビもエアコンも冷蔵庫も自動車も無い。
あるのは剣と弓矢と魔法と魔物。
異世界、ということになるらしい。
お読みいただきありがとうございます。
また評価、ブックマーク等いただき誠にありがとうございます。