ファザコン娘は、筋肉が違うパパを偽物だと言い出した。
帰ってきたら、パパの筋肉が肥大していた。
いつも通りにパパの帰宅直後に抱き着いたら、胸筋が今日の朝と違う。
ジムで筋トレしたって、こんな早くに効果は出ない。
え、この人、誰?
「ねぇ、あなた、誰?」
「え......パパだけど」
「違う、明らかに筋肉が肥大してる」
このパパ擬きはすっとぼけているが、この私には偽物だってことが分かるから無駄な抵抗だ。
「違う、だって朝抱きついた時にはもっと胸筋小さかったもん」
「そんな事言われても......あ、ちょ、何するんだっ......!」
私は、胸筋以外の場所も確認していく。
上腕二頭筋、三頭筋、変わってない。
「え......?何してるの......?」
背筋、ちょっと大きい。
「ひぁっ......!」
腹筋、僅かに大きい。
「......ふぅ、ねぇ、何してるの......?」
腹斜筋、だいぶ大きい。
「あっ......くっ、ふぅ.......あぁ......!」
大臀筋、ちょっと小さ......ん? これは......だいぶ大きい。
「ひっ......そこはセクハラだぞっ......! やめろ、揉むな!」
その先の大腿筋を揉み......確認しようとしたら、ストップがかかってしまった。
うん、中々に良い筋肉だったから、この先も揉めなかったのが悔やまれる。
特にヒラメ筋! 触って見たかったぁ......
無理矢理外されてしまった手の余韻を感じていると、そのパパ擬きから声がかかった。
「おい、なんであんなことをしたんだ」
「え? だってあなた偽物じゃん、筋肉がパパとどこまで違うか確認しただけだよ」
「......はぁ、あのなぁ......」
そのパパ擬きが何故か近づいてきて、目の前でスーツを脱いで見せた。
「筋肉を触るなら、直接じゃなかったのか?」
「......あれ、パパ......なの?」
「そうだよ、次は筋肉は直接触らせてあげるって約束したでしょ?」
「..............パパだ!! ぎゅーってして、ぎゅーって!!」
「あぁ、いいぞ」
◇
本日、遂にヒーローレッドを捕らえ、複製体を作成した。
その複製体はコピー体としての強化をしているため、その日の内に実戦投入できた。
仲間が助かった、と勘違いし、油断したヒーロー達に絶望を与えられた。
しかし、これでは味気ない。
そうだ、この複製品を日常生活に投入してみよう。日常の中から絶望を与えるのだ。
容姿は全く変わらないため、バレることもないだろう。