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誤字脱字報告のお礼

誤字脱字報告のお礼の一話。

ヴィティ視点。


どうやらヴィティはみんなに聞きたいことがあるようです。

「トリさん! トリさん! どうやってハリネズミさんが番だってわかったんですか?」

「それ、あたしも気になるわ」


 街で偶然会ったトリさんに挨拶もそこそこに疑問をぶつけてみる。トリさんと一緒にいたハリネズミさんも知りたいみたいだ。

 トリさんは一瞬驚いた顔をしたものの、フッと笑って教えてくれた。


「んーとね、ハリネズミちゃんが生まれてきた時に」

「生まれてきた時っ⁉︎」


 ハリネズミさんが初めて知ったとばかりに声を上げた。知らなかったんですね。


「自分の両親とハリネズミちゃんの両親が友達で」

「あ、そういえばそうだったわね」


 なるほど。友達ならお祝いとかで赤ちゃんの時に会っていても不思議ではない。ハリネズミさんが覚えていないのも納得だ。


「それで初めてハリネズミちゃんを見た時あまりにも小さくて、ああ、食べたいって……」

「んっ⁈」(食べたいっ⁈)


 思わずトリさんの顔を凝視してしまった。ハリネズミさんもビックリして声が出ないみたいだ。


「それから美味しくなるように、髪のお手入れをしたり栄養価の高い果実を食べさせたりして、毎日お世話したんだ」

「んんっ⁈」(美味しくっ⁈)

「ある日我慢できなくて、ちょっとつついて味見したら泣いちゃったんだよね。あの時の泣き顔は本当に可愛かったな」

「んんんっ⁇」(すでに味見済みっ⁉︎)

「他のオスになびくなら本当に食べようと思ってたけど、自分の番になってくれたから()()()()()食べるのはやめたんだ」


 震えが止まらない。とりあえずって何。いつかは食べるんですか?

 トリさんの目が真剣だからこれは嘘ではなく本心だってわかる。だからこそ心底楽しそうに話しているトリさんが怖い。

 そしてハリネズミさんは私以上に震えている。


「なーんてね! ハリネズミちゃんにだけ電流が全身に走る感じがしたんだよね。他の子にはなかったから『あ、番だ』ってわかったんだ。参考になった?」

「あああありがとうございましたー!」


 ダッシュで逃げた私に「半分冗談だったんだけど。やり過ぎちゃったかな」と笑いを押し殺したトリさんの声は聞こえなかった。

 ちなみにハリネズミさんは、最初の段階でトリさんに腕を掴まれていたので逃げられなかった。生きて!




「トラさん! トラさん! どうやってお姉さんが番だってわかったんですか?」


 トラさんにも唐突に質問した。


「あ? あいつが悪口言われた時な、言った奴を尻尾でぶっ飛ばしたんだよ」

「お姉さん、カッコイイですね」

「それな! ついでに足蹴にして大人が止めに来るまでボコボコにしてて容赦なかったぜ」


 お姉さんの事を語るトラさんはどこか誇らしげ。トリさんも楽しそうに話していたし、番の自慢ができて嬉しいのかな。


「なるほど。その勇ましい姿を見て番だって思ったんですか?」

「いんや、普段腰布で見えない尻尾の付け根が見えてな、かじりたいって思ってさ」

「んっ?」(かじりたい?)

「正確には、オレだけの証としてオレの歯形をつけてぇなって、歯が疼いて」

「んんっ⁉︎」(歯が疼く⁉︎)

「気がついたら噛んでた」

「んんんっ⁉︎」(すでに噛んでたっ!)

「そんでボコボコにされ……」

「クマさんに何喋ってんだ!」


 お姉さんに一発くらい引きずられていくトラさんを見送っていると、背後からふわりと抱きしめられる。誰と確認するまでもなく無意識に私も腕をぎゅっと掴む。


「ヴィティ、今日はずっと家にいるはずじゃなかったか?」

「夕飯の材料を買いに。おかえりなさい、ルスト」

「ああ、ただいま」


 首だけ動かしてルストを見上げると、砂糖菓子のように甘い金目とかち合った。そのまま顔が近づいてきて鼻と鼻が触れ合う。猫の挨拶だ。嬉しい。


「今日は遅くなるって言ってませんでした?」

「キツネの訓練が嫌で逃げてきた」


 確かキツネさんに「ダクに取り込まれるなんて情けない。訓練のやり直しよ!」と、言われていたんだよね。あとで怒られても知らないよ。


「あの、ルストはどうやって私が番だってわかったんですか?」

「今まで会った人間の中で一番良い匂いがしたから」


 良い匂いと言われて自分の腕の匂いを嗅ぐがよくわからない。むしろルストのほうがお日様みたいなあったかい匂いがする。猫ルストの時は、焼き立てのホットケーキみたいな甘い匂い。


「それってどんな匂いですか?」

「新鮮な水のような、朝露に濡れた蕾の香りみたいな? 色々。とにかく良い匂い」


 またルストは色々で片付けてしまう。


「それがどうかしたのか?」

「今日、外を歩いていたらルスト以外のネコさんを見かけたんです」

「……ほぅ」

「猫耳がくるんとしていて、アメリカンカールみたいな可愛い耳でした」

「ほほぅ」


 ルストの返事がフクロウみたいだなと思っていると、私を抱きしめている腕がどんどん締まってくる。

 あの、ルストさん。ちょっと苦しいです。あ、クマ耳ガジガジ噛まないで下さい。


「そ、それで、可愛いとは思ったんですけど、ぐぇっ……ルストみたいに触りたいなぁとは思わなくて、これが番なのかなと」


 前世の私なら猫ならどんな子でも「可愛い! 撫でたい! モフり倒したい!」と思うはずなのに、可愛いだけで終わった事に一番驚いた。


「参考までに他の人はどういう基準で番とわかるのか意見を聞いて回っていたんです」


 私の言葉に納得したのか腕が緩んだ。

 よかった。中身が飛び出るかと思ったよ。


「そうだ、番がいる相手に番の事を聞くのは問題ないが、キツネだけはやめた方がいい」

「えっ、キツネさんにも聞こうと」

「絶対やめろ。ヴィティのためだ」

「ええっ?」

「キツネにその話を振ったら朝まで離してくれないぞ」

「えええっ?」

「しかも、少しでもキツネの番である神官長の事を褒めてみろ。『まさか……狙ってる? どうしよ。消すしか』とあらぬ疑いをかけられる」


 ルストの顔がどんどん青白くなっていく。もしかしたら経験談なのかもしれない。


「獣人の番に対する執着は強いが、その中でもキツネは特に」

「呼んだ?」


 振り返るとキツネさんが立っていた。「足音も気配も気付けなかった」と、ルストが小刻みに震えている。


「なんの話をしていたの?」

「番について話していました」

「……ヴィティ、正直に言うな」


 ルストが大袈裟に溜め息をついた。キツネさんに嘘をついたらバレそうだから仕方ない。


「それで思ったんですが、キツネさんに愛される番は幸せ者ですね」

「えっ! そうかな。でも、最近忙しいみたいで会いにきてくれないのよ」


 キツネさんは自分の尻尾を抱えて俯いてしまった。

 何それ。可愛い。私は抱えるほどの尻尾がないから羨ましい。


「キツネさんから会いに行くのはどうでしょう? お仕事中ならお茶や差し入れを持っていけば、会う口実になりますし」

「迷惑じゃない? ワガママって思われない?」

「私だったら好きな人のワガママは嬉しいですけど。あとはお手紙とか……」


 私の何気ない一言にキツネさんの耳がピンッと立ち上がった。目もキラキラと輝いている。


「手紙! いいね! やってみるよ! 早速書かなきゃ。ありがと、クマちゃん!」


 風のようにキツネさんが去っていった。

 ルストを追いかけて来たんじゃないのかな。


「さすがヴィティ。キツネに見つかったのに無事だった」

「そんなつもりなかったんですけど」

「……ヴィティは俺のワガママも嬉しいか?」

「もちろんです!」

「なら今日はずっとくっついていたい」


 家の中だと割とくっついていると思うけどそれ以上? ルストが喉を鳴らす勢いで嬉しそうだから、いっか。


 今日は尻尾を堪能させてもらおう。



おまけ


「ハリネズミさん、ハリネズミさん! トリさんが番ってどうしてわかったんですか?」

「クマさん、あたしにも聞くの? いいけど。発情期が来た時、トリの事しか考えられなかったのよね。家に置いてあったトリの服を……」

「えっ⁉ 家にトリさんの服が置いてあるという事は、番になる前から一緒に住んでいたんですか?」

「えっ、あっ、違うわ。たまに泊まりに来るから着替えがあっただけで」

「家に着替えがある時点でそーゆー事ですよねぇ」

「カンガルー! うるさい!」



「お姉さんはトラさんがどうやって番だってわかったんですか?」

「トラに名前を呼ばれても不快じゃなかったんです。あとは最近気がついたんですけど、触っても平気だった事が判断基準でした。トラ以外を吹っ飛ばした時、不快で吐きそうでしたもーん。あの時はただイライラしているだけだと思ってたんですけどぉ」

「トラさん以外のオスは気持ち悪いと!」

「そうですぅ」

「りあじゅーばくはつしろ」

「ハリネズミさん、うるさいですぅ」


「あれ? なんでその言葉知っているんですか?」



終わり。

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