王子殿下と公爵令嬢+男爵令嬢のショートコント「婚約破棄」
ほぼ会話文です。ギャグな小ネタ。
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オヤツ代わりのお暇潰しに。
「たとえ公爵令嬢といえど、もう我慢ならない! お前との婚約は破棄する! そして、私は心優しい彼女と結婚す…」
「ごめんなさい!!」
「ファ―――――!!! 瞬! 殺!」
キメ顔の王子。その台詞に被せるように謝りながら頭を下げる男爵令嬢。それを見て盛大に吹き出しながら突っ伏す公爵令嬢。
一言で言うと大惨事だった。カオスとも言う。
「…ゴホン! 私は公爵令嬢であるお前との婚約を破棄して、この心優しい男爵令嬢である彼女と結…!」
「ごめんなさい!!」
「仕切り直して改めて振られた!!」
「彼女とけ…!」
「無理です! ごめんなさい!!」
「又、念押しのように振られとる!!」
公爵令嬢が涙を流しながら、自身の婚約者である王子を両手の人差し指で指差す。
「や~いや~い! 振られてや~んの~! キメ顔で私との婚約を~破棄~し~た~の~に~? 全く相手にされてな~い! プップー! カッコわる~い! ダッサ~イ! キリッ!『この子と婚約す』『ごめんなさい!!』被せぎみに瞬殺! 最後まで聞いてもらえず瞬! 殺!! ねぇねぇ、今、どんな気持ち? 自信満々に高らかな宣言を遮られて振られたけど、今、どんな気持ちぃぃぃ??」
「やっかましいわっ!! だからお前は嫌なんだよ! だからお前との婚約を破棄したいんだよ!! どうして人の致命傷にまで丁寧に隙間なく粗塩擦り込むような非道なことが出来るんだ!」
「面白いからですが何か?」
「この悪魔! 人でなし!!」
「まぁ! 相変わらず三下格下よく吠えるワンちゃまね!」
「息を吐くようにワンフレーズで罵るのは止めろ!!」
「まぁ、ちょっと黙っててくださいな。今、面白いところですから。今からこの方に何故貴方を振ったのか聞くところですのよ。微に入り細を穿って全てを知りたいですわ。大丈夫。何を言っても不敬には致しませんし、させません。ただの私の興味本位ですのでお気軽且つ率直にお答えになってね!」
「それを止めろと言っているんだが!?」
「止められない止まらない。もうどうにも止まらない。そもそもこういう時の為に婚約者してる」
「だからお前は嫌なんだ!!!」
王子が泣きながら突っ伏したので、とりあえずその背中に優雅に腰掛けながら、公爵令嬢は優しげな微笑みで男爵令嬢に促した。
「確かにこの王子は見掛け倒しで中身は残念無念だけれど腐っても王子は王子。そう、まるで金で出来たウ●コ。金のウ●コなら価値はあっても、いらないかもしれない。けれど、腐った王子なら夢見る女の子が一度は憧れる事も無きにしもあらず。何故振ったの? 中身がザコだから? 生理的に無理だから? それともそもそも存在自体が許せないから?」
「止めろ悪魔! 聞きたくない! 後、ディスりすぎ!!」
「そんな…王子殿下は素晴らしいお方です」
「ああ、やはり君は…!!」
「でも、私にはもう心に決めた人がいるんです。だから殿下とどうこうなることは天地が引っくり返ってもあり得ないんです!」
「グフォッ!!」
王子が情け容赦の一切ないお断りに血を吐いた。
「そうだったの…じゃあ、最初から全く微塵も脈なんかなかったのね…ぶふっ」
「笑うな! 満面の笑みで心の傷口を蹴るのは止めろ!」
「あの人は王子殿下とは違う平凡な人です。二人を同じ土台で比べる事すら烏滸がましい、そんな人です…でも、私にとっては掛け替えのない大切な人なんです!」
「グフォッ!!」
「褒めているようでお呼びじゃない! 卑下しているようで惚気ている! 上げて落とす! 嫌いじゃない! 嫌いじゃないわ、そういうの!」
「もう止めろ! 可哀想だろ! オレが!!」
「あの人は殿下とはまるで違う…背も低ければ爵位も低い、頭もそんなに良くないし、剣の腕もへっぽこだし、オマケに足も臭いです。そして、その臭さは殺意が湧くほどです」
「君は本当にその男が好きなのか!?」
「勿論です。殿下と比べれば月とスッポン、イギ●スとキリギリス、亀とカメムシ、ウ●コに蠅…でも、私は…!」
「ちょっと待て! 最後のちょっと意味が変わってくるから!」
「…分かるわ、その気持ち。私も同じだもの」
「え?」
「お前…」
公爵令嬢が寂しげに微笑む。
「その足が臭すぎて殺意が湧く気持ち」
「お前はどこに共感してるんだ!?」
「殿下と同じ馬車に乗る時は扇子の内側でハンカチ必須。基本は息を止めているもの」
「お前、何を話しかけてもいつも無視すると思ってたら息止めてたのか!?」
「ウッカリ吸ってしまった時は気絶するかと思った…いつも脳内で三十回は刺してるわ」
「怖い怖い怖い!!」
「分かります、その気持ち。無性に腹の立つ臭いですよね」
「同意しないで! 傷つく!!」
「そんな殿下と比べればオケラのような人ですけど、私はあの人を愛しているんです!!」
「君も割とマイペースに進めていくな!? いや、それよりも君は本当にその彼を愛しているのか!?」
「心から愛しています!」
「愛しているのにその言い種なの!?」
「オケラに似ているというのは顔が? 中身が?」
「どこに食いついてるんだ、お前は!!」
「顔も中身も存在もオケラです!!」
「君はもう少し婚約者を労ってやってくれ! 何故かもう他人事とは思えない!!」
「顔も中身も存在も…? っく…!」
「突然蹲ってどうした!?」
「く、ふ、か、顔も中身も存在もって…だ、だってそれもうオケラじゃないの…?」
「はい」
「いや、はいって…そんな真っ直ぐな目で…」
「…………、ブッフォッ!!」
公爵令嬢は王子の上から転げ落ちるように床に蹲り、涙を流しながら王子を見上げた。
「王子なのに! オケラに負けとる!!!!」
「やかましいわ!!!!」
「ヒィーヒィー! さ、最高! 本年度の王国一笑わせた大賞は貴女で決ま、ブボフゥッ!!」
「本年度の王国一極悪人で賞はお前だがな!!」
「殿下、ごめんなさい。でもミミズもアメンボも皆みんな生きていますから」
「それ慰めてるつもりなの!?」
「よっ! ミミズンボ殿下! 手のひらを太陽に翳してご覧なさいな!」
「一瞬で変なアダ名つけるじゃない! 本当にもうお前は弄れる場面見逃さねぇなぁ、おい!」
「真っ赤に暴かれる~僕の赤っ恥~」
「だからお前は嫌なんだ!! 破棄だ破棄!! お前との婚約なんて破棄だ――――!!!」
泣きながら崩れ落ちる王子殿下の横で、意気投合した公爵令嬢と男爵令嬢はアドレスを交換した。
ああ、王子殿下に幸あれ。
おしまい。
《人物紹介》
【王子殿下】
不憫。優秀でイケメンだが、いつもSっ気のある女子に引っ掛かる。何だかんだ婚約者の公爵令嬢とは付き合いが長い。いつも泣かされてる。Mの素質あり。不憫。
【公爵令嬢】
優秀で美人な王子殿下の婚約者。自覚のあるドS。楽しいこと大好きで毎日楽しい。王子殿下をおちょくることにかけては他の追従を許さない煽りのプロ。今までに三十五回婚約破棄を切り出されているが、面白すぎるので王子を手放す気は更々ない。
【男爵令嬢】
優秀で可愛い女の子。無意識ドS。田舎にいる婚約者が大好き。だけど、いつも無意識にその婚約者を泣かせてる。公爵令嬢とはソウルメイトになった。