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大統領は本能寺にて


 本能寺の寝所前に突如として現れた男は自らを大統領と名乗った。

 見た事のない異国の着物を纏ったその姿はまさに異形と呼ぶしかない。どれだけ鍛えたのか、肉体が岩山のようにゴツゴツと盛り上がっており、鋼より硬いのではと錯覚してしまう。


 明智光秀は知る由もないが、大統領が身につけているのは最高級のマッスルビジネススーツである。筋肉に磨きをかけた紳士スーツなのだ。


「大統領……とな?」

「左様、ここへはとある虫を追ってきた。この辺りで妙なものは見なかったか?」

「貴様が一番妙な者であるぞ」

「HAHAHA、これは面白い返しだ! ジャパニーズジョークは素晴らしいな」


 さてどうしようか、と大統領は右の人差し指で額をトントンと叩きながら考える。すると、その隙をついて背後から光秀の配下の一人が刀を振りかぶり、上段から大統領を唐竹割りしようと振り下ろした。


 光秀はその様子を見てほくそ笑んだ。よくわからない男に付き合うつもりは無い。恨みはないが万一信長と通じていても面倒なのでこのまま斬り伏せるのも悪くはない。


 しかし、彼等の思惑は予想外の結果で外れることとなる。いや、ある意味では予想通りと言えるかもしれない。

 刀は大統領の頭を切る事ができなかったのだ、それどころか刀身の方が折れてしまう始末。


「なっ! 貴様やはり化生だな!」

「驚く事ではないだろう。私の髪の毛は少々筋肉質ゆえに硬いだけだ」


 それでは仕方ない。


「改めて問おう。私以外で妙なものは見なかったか?」


 光秀は部下を見渡して目で合図を送る。誰一人としてそのようなものは見ていないらしい。

 素直にそう答える事にした。光秀は大統領と戦う事は得策ではないと判断したのだ。


「いや、見ていない」

「そうか、ならばここから見てみるか」


 徐に寝所を振り仰ぐ。既に全体へ火の手が上がっており、肌を焦がす程の熱気が朝の風に乗ってまとわりついてくる。

 ぼんやりと見つめていたその時、不意に寝所の奥から炎を突っ切って苦無が飛んできた、その苦無は大統領の頬を掠めていく。


「ここから先へは通しませんよ」


 女人のような高く透き通った声が炎の中から発せられた。よくよく目をこらすと、そこから一人の男が優雅に歩いてきたのだ。

 白粉を顔にまぶしてほんとに女人のようではあるが、体型は男そのもの。

 髪型は髷を「森」の形に結っていた。そこで大統領はピンときた。


「わかったぞ、お前は織田信長の寵愛を受けたという……フォレスト・蘭丸だな!」

「いえ、森蘭丸です」



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