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第二章 負の感情と魔法

わーい(⌒∇⌒)


 「!?」


 激しい揺れ。急にだ。しかも魔法発動による爆発。

 ...カルミス。本当に完成させたのか。

 現時刻は十四時。丁度昼の時間だ。太陽の光がぎらぎらと地上を照らしているなか、街は人で溢れかえり賑わっている。

 まだ、そんなに時間は経っていない。昼前に言ってから三時間ほどしか...。

 もし...だ。もしこれでカルミスが[無詠唱魔法]を完成させていたとしたら____。


 「カルミス!!...!!」


 カルミスが修行していた庭に向かう。

 そこには、すごい量の煙のみあり、周りが見えなかった。


 「[疾風の襲来ゲイルインベイジョン]」


 風魔法で全ての煙を消し去る。視界がひらけたところで改めて見回すと。


 「これは...」


 抉れた地面。破壊された城壁。燃える植物。炎で焼き尽くされていた。かろうじて残っている植物もあるが、相当大規模な魔法だったのだろう。燃えているのが大半だ。

 まだ残っている魔素を視る。この色...そしてこのにおい...。

 間違いない。カルミスの魔法だ。ここまでの魔法を完成させるとはさすがに驚いたが、無詠唱魔法が出来たとは限らないし、この被害を考えると暴発も考えられる。

 もし暴発だとすれば、それをしっかり正さねばならない。


 「カルミス!!どこだ!!」


 煙を消したのにも関わらず未だに息子の姿が見えないのが気がかりだ。目一杯に声を張り上げカルミスを探す。すると。


 「と...父さん...」

 

 別の入り口からレルミスと共に出てきた。二人とも体がボロボロで、少し火傷をしていた。

 

 「大丈夫...ではないようだな」


 明らかに見た目からして大丈夫ではなさそうだったので、治癒魔法である程度の傷を治す。

 

 「何があった。カルミスの魔力が漂っているが」

 

 分かってはいるが、確証がないため一応聞いた。

 するとレルミスが驚いた顔で、


 「父さん...兄さんやばいよ」


 と言った。

 驚き過ぎて語彙力が皆無になっている姿を見るに、やはり無詠唱魔法を完成させたのだろう。

 

 「やったのか...カルミス」


 ぽつりと呟き、頭に手をやる。

 最初からこの子ならできるだろうとは思っていたが、本当に...こんな短時間で完成させたのか。

 正直言って、信じられない。

 

 「もうさ、ヤバかったよ!!ボクがちょっとアドバイス言っただけなのにすぐにできちゃって」


 何故か当の本人より喜んでいるレルミスを見て、少し笑ってしまった。

 一方、カルミスのほうを見ると、かなり大規模な魔法を撃ったせいか、息切れが激しく意識が飛びそうになっていた。

 

 「大丈夫か、カルミス」

 

 「...うん...いや、平気じゃない......」


 このままだと倒れそうだったので、自分の魔力を少し分け与えた。これで立てるくらいまでにはなっただろう。

 

 「ちょっと...やりすぎました。完成したのはいいものの......城に被害が...」

 

 「まぁいいさ。街のほうに被害がないからな」

  

 よくない。全然よくない。我々ソレイユ家の大事な城であり国の象徴である城の一部に傷がついたのだ。こんなところ国民に見られたら大変なことになっている。あと、うちの使用人。

 

 「それにしても早かったな。どうやってやったんだ」

 

 「感情を込めろと言われたので、負の感情を混ぜてみました。そしたら魔力は大して集まっていないのにその負の感情に応えるかのようにエネルギーが膨張して......」


 感情だけでこんなにもなるものなのだろうか。まぁ確かに、漂っている魔力を視るかぎり、あの爆発にしては量が少なかった。

 感情にもエネルギーというものがあり、負の感情は特にそのエネルギーが高い。時に世界を壊してしまう危険性がある。かつてある男の負の感情が溢れ出てしまったせいで、街一つが消滅したという事件があった。あの時私はまだ幼かったが、本当に感情というものは危険なのだと本能的に感じた。

 カルミスも一歩間違えればそのような事態を引き起こしていたかもしれない。

 

 「負の感情は非常に危険だ。あまりにも魔力に込めすぎると取り返しのつかないことになるぞ」


 その私の言葉を聞いてカルミスとレルミスはゾッとしていた。失敗では許されない。それだけ魔法などは危険だということだ。本来、魔法というのは精霊の力を借りて発動させる奇跡の力。それを精霊の力を借りず、我々は言葉に宿る言霊のエネルギーを使っているだけ。感情を込めるのは高度な魔法のみで、初級の魔法などには一切感情を入れない。感情を作り出すのにも体力がいるのだ。

 無詠唱魔法の場合、言霊のエネルギーがない分感情で補わなければならないかもしれない。カルミスはレルミスの言う通りにやっただけかもしれないが、だが被害のことを考えれば感情を必要以上に込めるのはダメだ。

 それだけ魔法は危険なものであり、調整が難しい。


 「とりあえず、よくやったカルミス。明日からは私が魔法の実習を担当しよう」


 「本当ですか!!」


 そこまで喜ぶことかというくらいカルミスは走り回った。

 さて......使用人達に見られる前に早くここを直さねばな......。そう思っていた時だった。


 「陛下」


 「どうしたんだ...これ」


 後ろから護衛の声が。使用人を引き連れて目の前の光景に驚いていた。


 「......カルミス様ですか」


 「...あ、あははは...」


 その後、陛下が見張っていればこんなことにはならなかっただとかなんとか、長い長い説教を受けましたとさ。

次回更新予定:五月中

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