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第一章 無詠唱魔法

やっと受験終わった!!はぁ!!


 あれから何時間くらいたっただろうか。いっこうに魔法が打てない。というか、魔法無経験の子供がいきなり無詠唱魔法を取得しろと言われてできるほうがおかしい。

 

 「...あ、またふはつ......」

 

 さっきから魔力マナを消費するだけで、なかなか完成しない。魔法なんて魔力の塊を色んな物質に変えて打つだけみたいなものだから、何となく魔力集めてイメージすればいいかなぁ......なんて思ってはいたけれど.........。

 そう簡単にはうまくいかないよな。

 そもそも、魔法というのは術者の放つ言葉に宿る[言霊]のエネルギーに反応して起こる奇跡の力である。それなのに、媒体となる言霊をなくして魔法を発動させるなんて...無理な話だ。

 あぁ。かわいい顔して逃げればよかったな。そんなことを思っているうちに、気づいたら昼になっていた。


 「何してるの、にいさん」

 

 「ふぁっ!?」


 試行錯誤を繰り返し魔力を集めていたところに、一人の少女が僕の背後から現れた。

 僕と同じ金髪碧眼で、長い髪は下ろしてある。王女と疑ってしまうほど身軽な服装をしており、しかも男装。

 彼女は僕の四つ子の妹、ソレイユ王家第一王女。レルミス=クレア=ソレイユである。

 

 「まただんそうか......。母様に怒られるぞ」


 「別にいいじゃないか。だんそうの何が悪いっていうんだ」

 

 出ました言い訳。いい加減にしてよ...。


 「あのさぁ......。一応女の子なんだから、もう少しレディのたしなみってものをさぁ...」


 「にいさんみたいになればボクはそれでいいんだ!!あと、一応ってなんだよ!!」

 

 僕はれっきとした女の子だ、と言うが、それを壊しているのはお前だろうがと突っ込みたい。

 なんでも、僕の真似をして少しでも僕に近づきたいんだとか。というか僕は大した人物ではないのに...何故...。


 「で。何しにきたのさ」

 

 「にいさんのジャマをしに来たんだ」


 「帰れ」

 

 僕は再び魔力を集め始める。イメージはできるのにそれを形として表すのが難しい。これが筆が止まってしまう画家の気持ちなのか。


 ボンッ


 「あ......」


 また不発。可愛い爆発音を立てて、魔力は分散していった。

 一体何がいけないのか、全く見当もつかない。直そうにも直しようがない。

 疲れてしまい、僕は馬鹿でかい溜息をついて地面に寝そべる。芝生がチクチクして痛かった。

 するとレルミスが、何かを考えるように口元に手を当て、僕に言ってきた。


 「魔力が固まっているだけで、生きてないよね。にいさんの魔力」

 

 意思がない、と彼女は言った。

 魔力が生きていないとはどういうことだろうか。一足先に魔法の実技をやっているレルミスは、僕より魔法に関して長けている。僕がレルミスより馬鹿だから先を越されているわけではない。ただ僕は第一王子として父様の後継者の有力候補として、妹達より学ぶものが多いだけだ。

 

 「ボクもムズかしくて最初はくせんしてたんだけど...。アン姉さんに教えてもらって、[自分の魂を魔力の中に込める感じ]って言ってた。そうすれば、ほとんどの魔法は完成するってさ」


 自分の魂を...何だって?アンブレラ先生、この子は一体何を言っているのでしょうか。というか、貴方は何を言っているのでしょうか。

 全くもって理解ができない。自分の意識を魔法に移すってことなのか?でもどうやって? 


 「......はぁ。仕方ない。ならボクがトクベツにバカにいに教えてあげよう」


 「誰がバカにいだオイ」


 思わず王族らしからぬ言葉が出たわ。全く......。

 レルミスが言うには。自分の内に秘める感情_______負の感情がやりやすい________を魔力と一緒に調合するイメージだという。

 うん。さっぱり分からん。とりあえずやってみよう。


 「ん~~~~!!」


 右手を構え、メッチャ力を入れて目を瞑った。そんなことやってたら横からレルミスにチョップ。


 「力を入れちゃダメでしょ。魔法のきほんだよ。...そんなことも分からないの」


 「うるさい」


 笑われた。うざい。後で見返してやるからな。

 おふざけはここまでにして、改めて僕は右手を構えゆっくりと目を瞑った。

 イメージ...イメージ.........。

 少しでも集中を切らしたら魔力が分散しそうだ。勉強してればなんとなくできるかなと思ってたけど、そうもんだなぁ...。

 というか、父さんがいきなり無詠唱魔法とかやらせるからだよ。いくら王位継承者候補だったとしてもすぐできるものじゃない。

 でも逆にこれができれば。他国の王子と差がつけられるということだ。そのための訓練だと思えばいい。今はね。


 「...ふ......」


 レルミスが隣で見守る中、僕は周りにある魔力をひたすら集めた。同時進行できないのであれば片方ずつやればいい話だ。器用じゃないから...。

 ...よし。こんなもんか。あとは感情?を乗せるだけだ。

 感情たって...どんな感情がいいんだろう。レルミスは負の感情がやりやすいとか言ってたけど...。あれか。感情は通常詠唱の言霊の代わりか。

 詠唱を強く荒々しく唱えれば威力が増し暴走しやすくなるように、感情も同じだ。感情をこめればこめるほど、殺意や怒りに近ければ近いほど威力が増し暴走しやすくなる。

 きっとそういうことだな。なら、試しに怒りを...。


 「...ッ!!」


 不謹慎だけど......もし兄妹が...レルミス達が目の前で殺されてしまったら。

 怒り。憎悪。絶望。ヤバい。次から次に溢れてくる。

 

 「ッ!!」


 その瞬間。


 ドゴォオォォオォオォオオォオォ_______


 自分の右手にあったはずの魔力が無かった。行方を追えば、地面は削れ、かなり遠くにある城の壁が壊れている。

 打てた。魔法を。それもただの魔法ではない。[無詠唱魔法]を______。


 「...」


 隣のレルミスも驚いている。僕本人も驚いている。

 やった...。でも。








 __________やりすぎた。

次回更新予定:三月中

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