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プロローグ 創神


 地獄を見た。砂しかないこの世界で。乾いた風しか吹かない。

 この世界で。

 

 「...」


 僕はただ傍観していた。それがどのようなものだったのかは分からない。ただ、人が綺麗な花を咲かせては倒れていく。その花を丁寧に一本ずつ咲かせていく彼。

 これを傍から見れば地獄というものなのだろう。でも僕は違う。


 「......」


 彼が近づいてくる。今度は僕の花を咲かせてくれるのだろう。僕は震えながら、怯えた目で彼を見上げた。

 そこからは何も、思い出せない。ただ一つ。覚えていることは。


 「彼」は「僕」であったこと_________




 「___カルミスッ!!」


 「痛ッ!!」


 頭を本で思いっきり叩かれるのは、これで何度目だろう。今日も先生の長話で眠ってしまったらしい。いい加減慣れたけど、夢から引き戻される瞬間というものは体がふわっとする感覚があるからすごく気持ち的に嫌だ。

 まぁ、寝なければいい話なんだけどね。


 「また居眠りをして......君は王になりたくないのかい!?」


 「ん...三歳児にそんなことを求めてはダメですよ。せんせい」

 

 グーッと背伸びをし、脱力。床を見れば、寝ている最中に色々やったのか大量の本と羽ペンが落ちている。机の上にはインクが少し。

 ボクの発言が、彼女を再び怒らせることになってしまった。三歳児の脳をしていないから言っているんだ...とかなんとか。三歳児の脳って何。

 

 「だってせんせい、いっつも同じことばかり言ってるんだもん。そりゃあきるよ」


 「重要だから何度も何度も言い聞かせるんだよ!!僕だって、こんな何回も同じこと言いたくないさ!!」


 プイッと、頬を膨らませてそっぽを向く。出た、先生の変な癖。頬を膨らませるのは、怒ったりする時によくやる。意識してやっているとするとムカつくが、無意識でもイラつく。

 こういう場合って放置しておけばすぐ戻るけどなぁ......。さすがに今日は無理かなぁ。なんて考えながら、ボクは窓の外を見た。

 この、世界樹迷宮都市「レヴィリオ」は、この都市の中心に立つ大きな世界樹の加護によって守られている。そしてその世界樹は、この都市の王と契約を結び、常日頃から王から魔力をもらっている。年に一度、「祈祷祭」という都市中の魔力を有する者たちから魔力を吸収する日があるんだけど、魔力が吸収された後、都市中の者たち___特に貴族以上の身分の者達___が動けなくなるという事案が発生する。僕も、昨年、一昨年と魔力を吸われた。

 対して魔力もないから、他の人より長くぶっ倒れてしまっていた記憶がある。もはや気絶しすぎててあんまり覚えていない。


 「...」


 実は言うと、ボクは一度も街に行ったことはないんだ。理由はよく分からないけど、父様に止められている。子供には色んな経験をさせるべきだと父様は言っているけど、街に出ることだけは何故か止められる。理由を教えてもらいたいよ。

 ボクはここから出て、色んなものをこの目で見たい。それがボクの一つの夢だ。一番の夢は、父様のような立派な王になること。一応、これでも王子だからね。「ソレイユ家」の名にふさわしい王になる。

 といっても、どうすれば王になれるのかなんて分からないんだけどね。


 「余所見をしない!!じゃあまた最初から説明だね」

 

 「!?せんせい、それだけは...」


 頼むからやめてくれと言おうとしたが、先生はもう耳を傾けてくれない。はぁ...また同じ話を聞かなきゃいけないのか...。

 

 コンコンッ

 

 「ルインだ」


 すると、先生の話の途中でノック音が鳴った。

 父様だ。


 「あぁ、ルイン...丁度いいところに...」


 聞いてくれよと、入ってきた父様に速攻しがみついて話す先生。すっごく迷惑そうな顔をしてるけど...大丈夫かな。

 

 「また居眠りか。カルミス...」

 

 「とうさま。せんせいったら何度も同じはなしをするんですよ。あきちゃって聞いてられないんです」


 言い訳をしない!!と再び本攻撃された。結構分厚い本で叩かれたから痛いんだよねぇ...。

 まぁまぁと父様がなだめてくれたから、何とか先生の怒りを止めることができたけど...。でもやっぱり、ギロッと睨みつけられた。ツリ目で眼鏡をかけているから余計怖い。

 

 「とうさま。ボクはべんきょうもいいけど、実際にやってみたいんです」


 ボクは父様に、自分の真意を明かした。

 

 「魔法を打ってみたいのか?」


 「はい」

 

 今まで勉強しかしてこなかったから、実際に魔法を打つことに憧れを抱いていた。たまに父様の魔法や先生の魔法を見たりとかしていたんだけど、本当にカッコいいと思う。何よりもその姿が綺麗だ。

 

 「...」


 父様は腕を組んで考え始めた。教えるよりも実際にやったほうが身につくだろうし、ボクにとっては楽しくやれる。なら、その手段を選ばないわけには...。


 「カルミス」


 「はい」


 しばらくして父様は僕の名を呼び、告げた。その言葉が、どれだけ僕の人生を狂わせただろうか。


 「無詠唱魔法を取得しなさい」


 「...は?」


 間抜けな声が出た。出るのは当たり前だ。父様は突拍子もないことを言っている。無詠唱魔法?それを取得しろ...だって...?

 ...それがどれだけ難しいことなのか分かっていて言っているのですか...父様......。


 「今日中に無詠唱魔法を取得しろ。そうすれば他の魔法を教えてやる」


 「......もし、しゅとくできなかったら......?」


 「それは...想像できるだろう?」


 「......」


 父様...それは....。


 











 「酷くないですかぁああああああぁぁあッ!!!!!!!???????」


 もう...嫌だよ...。

 

次回更新予定:10月中

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