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第1話「合成種族」

 空から降る異形の生物。突然の出来事にレオンの四肢は固まり、ただただ黙ってそれを見上げている。

 死ぬ――――。レオンはそう直感した。その直感は、異形の生物が見るからに膨大な質量を秘めていた事に起因する。


 しかし轟音と共にそれが地面に墜落した時、レオンの体はそこには無かった。


「なっ……!?」


 レオンは予期せぬ移動に目を丸くする。その後、自らの体が何者かに抱えられている事に気付いた。


「誰だ!?」

「落ち着きなさい。私は味方だ」


 長めの銀髪に薄いフレームの眼鏡。男はこの状況でも静かに、冷静に言葉を連ねる。


『ガルルルルル…………!!!』


 その巨大な唸り声は地面を揺らし、レオンの脳に響く。


「やれやれ、少しは場所を考えて下さいよ。一般人を巻き込む訳にはいかないでしょうが」


 銀髪の男はゆっくりとレオンをその場に降ろした。

 異形の生物はもう一度、大きく咆哮を上げる。三メートルはあろうかという巨体、鋭い牙、厚い体毛。

 銀髪の男はそれと正面から睨み合い、そしてゆっくりと腰元の剣を抜いた。


「ただの下級キメラか……」

(剣…………!!)


 異形の生物は鋭く尖った右手で銀髪の男を襲う。その足音は地響きを引き起こし、その眼光はただ破壊を求めている。


『ガアアアアア…………!!!』


 ――男の銀髪が風で靡いたかと思えば、異形の生物の体は真っ二つに引き裂かれた。

 土台を失った上半身が地面に堕ち、司令部を失った下半身が少し遅れてゆっくりと地面に倒れ込んだ。


「………………!!」


 レオンは声を失い、その場に尻餅をついた。

 銀髪の男は振り返り、その様子を見て優しく微笑む。


「やあ。驚かせちゃったかな」

「…………、歴代ランキング一位」

「はは、ごめんごめん。ここじゃ何だし、ちょっと場所を変えよう」



 ***



 古びれた内装、寂れた空気。レオンが常連として店主と顔馴染みになっている酒場に、レオンと銀髪の男はやってきた。


「僕はアルロワ=リバーウッド。よろしく」

「……レオン=クリオールです」


 そう言って、レオンはアルロワの差し出した右手をとる。


「さっきの……何だったんですか」

「うん、当然の疑問だね」


 アルロワは爽やかに笑い、コーヒーカップをテーブルに置いた。


「……それを話すには、まず世界の歴史について知ってもらわないとね」

「歴史?」

「約百年前、この世に悪魔と呼ばれる種族が誕生した。悪魔は類を呼び、共に世界を滅ぼそうと人間を襲い始めた」

「世界を…………」

「更に悪魔はその過程で合成種族(キメラ)を創り出し、最早生身の人間に対抗する術は無かった」


 レオンは静かに喉を鳴らした。


「……お? 『じゃあ何でまだ世界が滅びてないんだ』って顔だね? レオンくん!」

「あ、まあ……。いや、いやいや、て言うか、悪魔なんかこの世に存在する訳無いじゃないですか!」


 アルロワはまたコーヒーカップを口元へ運び、中身を一気に流し込む。


「悪魔っていうのは、百年前の人々が彼らを恐れてつけた呼び名なんだ。それ程悪魔の存在は脅威なのさ。今レオン君が想像してる悪魔とは違うよ」

「……じゃあ、今までどうやって悪魔から世界を守ってきたんですか? その悪魔は百年も前から存在しているんですよね……?」


 レオンは恐る恐る尋ねる。それを見てまた、アルロワは優しく微笑んだ。


「悪魔を抑える為、神はこの世に『神の使徒』を産み出した。その数108人。神の使徒は皆生まれながらに特殊な能力を持っていて、彼らだけが唯一悪魔達に対抗する事が出来たんだ」 

「神の使徒……」


「そう……悪魔が勝てば世界は滅び、神の使徒が勝てば世界は守られる。神の使徒vs悪魔の、世界を懸けた聖戦だ」


「そしてレオンくん。君こそ、悪魔から世界を守る神の使徒なんだ」




 レオンの持つコーヒーカップの中身が静かに揺れた。

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