目を覚ます
「はあ・・・良かった~目、覚めたみたい」
「・・・・そうだけど、上手く行ったとは限らないだろう?」
なにやら、目の前で紫の女の人と、旅人のようなかっこうをして、大きな帽子が印象的な男の人が話をしていました。
それが誰なのか、そしてここがどこなのか、私は誰なのか、全く分かりません。
「どう?気分は?」
紫の女の人が手を振って話しかけてきました。
「あなたは誰なんですか?また、その後ろの男性は誰なんですか?そしてここはどこなんですか?私は誰なんですか?」
全ての疑問をはきだすととてもスッキリとした気持ちになりました。
しかし、それを聞いた、女の人は困ったように眉間にしわを寄せました。
そして、後ろの人と顔を見合わせました。
「まさか・・・成功なのね・・・」
「でもこんなに早く効果が来るとはなあ・・・・」
「あなた、本当にそう思っているの?まさか、冗談じゃないでしょうね」
「んなわけないじゃないですか?!信じてくださいよ」
それでも訊いてきた女の人は不審そうに私をじっと見ます・・いや、それよりも睨む・・・と言う方が近いでしょうか・・。
「もう本人が本気でそう言ってるんだから、信じて受け入ればどうだ?マディンゴ」
どうやら、この目の前の紫の女の人は「マディンゴ」という名前だそうです。
「あなた、本当に覚えてないの?男の子の古い昔の記憶とか」
「はい?何を言ってるんですか?そんなのないじゃないですか?私は正真正銘の女じゃないですかっ!」
このマディンゴさんは何を言っているのでしょうか?
正真正銘の女の私から、ある男の子の記憶なんか出てくるわけがありません。
つい、私は初対面のマディンゴさんにムキになって言ってしまいました。
すると、それを聞いたマディンゴさんは、更にもっと睨んだり、怒ったり、歯向かったりしないで、今度は眉間にしわを寄せて、困ったような顔をしました。
「どうやら、本当みたいね・・・・でもあの男の記憶のカードはどこへ行ったのかしら?」
それは私よりも、後ろの男の人に問いかけるような言葉でした。
それに、それを私に問いかけたとしても、「記憶のカード」「男の子の古い昔の記憶」とは何のことは分からず、答えることができなかったでしょう。
「さあ?脳内で破壊されたとか、あるんじゃないか?」
「でも、そんなことありえるの?あたしはないけど」
「そりゃあ、そうだろ。でもあり得ないことが起きるのがこの世界なんだよ」
マディンゴさんと、男の人は、私を抜きで二人で話し合っていました。
その姿を見て、なんだか私は悲しくなってしまいました。
しかし、この二人が話し合っていても、私には疑問に思うことがたくさんありました。
ここはどこなのか?
私は何なのか?
なぜ、マディンゴさんと男の人がいるのか?
マディンゴさんとこの男の人は何者なのか?
そして、マディンゴさんの言った「男の子の古い昔の記憶」とは何の事なのか?
記憶のカードとは?
この男の人の名前は何なのか?
なぜ、マディンゴさんは私を不審そうに質問してきたのか?
そして、私が目を覚ます前に何が起こっていたのか?
その質問が頭の中をいっぱいにしますが、誰もこの質問の答えの一つさえ、教えてくれません。
それよりも、マディンゴさんと男の人が深刻そうな顔をしているので私もなかなか言い出せないのです。
言い出したら、また不審そうな目で睨まれそうで・・。
「あなた」
「え、あ、はいっ」
いきなり、マディンゴが私に言ってきたので戸惑いつつも返事をしました。
「これから、記憶の山へ行くわ。付いてきて」
「・・・・・は、はい」
はい、と返事をしたものの、意味が分かりませんでした。
記憶の山とは何なんでしょう?
ここはどうやら、「記憶」に関する世界のようです。
しかし、やっぱりそれでは分かりませんでした。
マディンゴさんは、私がさっきまでなぜかかぶっていた白い丸い球体を、部屋の机に置き、先に部屋を出ました。
次にその男の人が部屋を出たもんですから、私はついていくしか、ありませんでした。
・・・・妙に部屋の棚がキラキラと訴えかけているように、光った気がしますが、きっとそれは気のせいでしょう。
マディンゴさんは三つのカギでロックをかけて、部屋をしっかりと厳重にしました。