見つける、そして走る
〈ざっくりな前回までのあらすじ〉
祥明とマディンゴと私は、記憶の山を探しに『空想の世界』へ行きました―。
「マディンゴさんは、5日前に来たときは、記憶の山はどこにありましたか?」
「もうちょっと先」
どうやら、祥明の来た、2年と、マディンゴの来た5日の間に大分記憶の山は動いたようです。
そりゃあそうです。
記憶の山は一日一回動くそうですから。
しかし、記憶の山にたどり着くまでの間、あまりしゃべらなかったのは辛いものです。
とかいって、私は誰なのか、そしてここはどこなのか、私はどこで生まれたのか、など、記憶はあまりないので、会話の材料はあまりありません。
せいぜい、記憶の山とか、記憶のカードとかの話ぐらいしかできません。
「あっ、あそこ」
「にあったんですか?」
指をさしたのは、祥明ですが、きっと5日前に訊いたってこともあります。
念のため、訊くと、マディンゴは渋い顔をしました。
「いいえ、今あるのよ。見えないの?」
「あっ・・・」
確かに、黒っぽい山のようなものが、指をさしたところにあります。
あれが、記憶の山なのですか・・・!
「でもおかしいわね、あたしは来た時こんなところになかったわ」
記憶の山があるところは、ジャングルの真ん中の道をすごく外れており、左の奥の方にひっそりと存在していました。
しかし、その量はひっそりどころではありませんでした。
もう、量がとても多いのです。
「どういうことだ?」
「前、来たときはもっと、もっとも~っと先にあったはずなのに・・・。記憶の山は前進しかできないはずなのに・・・」
・・・・どうやら、おかしなことが起こり始めているようです。
マディンゴは、困ったように頬に手を当てました。
少し前の怒った表情はまるで嘘のようでした。
しかし、ここで突っ立ていても、何も変わりません。
私は道をはずれ、記憶の山に向かって一直線に走りました。
すぐ近くだと思っていましたが、実はとても遠いことが分かりました。
後ろを向くと、祥明とマディンゴは、まだあの道の真ん中に立っていました。
ただ、どうも私を見る目が変です。
マディンゴは口を大きく開けて、祥明は眉間にしわを寄せて見ているのです。
私はなにか、おかしなことでもしたのでしょうか?
祥明は、何か言っていましたが、この距離では聞こえませんでした。
・・・・・・・・・・・・なぜだか人影が一つ増えました。
「助けてえええええ」
ただ、やっぱり見えません。
多分、先ほど私を怖がらせたあの人なのでしょう・・・。
そう、感じるとまた恐怖が私を襲いました。
また、道ではなく、それは私を追いかけているようにも感じます。
そうなると、私はもう背筋が寒くなりました・・・。
なんなんでしょう、この感触は?
なんで私を追うのでしょうか?
なぜ、マディンゴと祥明は感じないのでしょうか?
―もう、走り続けるしかないようです。