なでる
今日もかなり短めです(笑)。
もう、どこまで進んだか、分かりません。
そして私たちは、 無言です。
なんだかこの空気、とても気まずいし、気持ち悪いです。
私は、その空気を振り払おうと、
「もうどこまで進んだんですか?」
と、明るい声で祥明に話しかけました。
マディンゴに話しかけるのには抵抗があったのです。
それに見るからにマディンゴの周りには『話しかけんな!』と言わんばかりの負のオーラが漂っていましたから。
「うん・・・・20㎞くらいかな」
「ここの地図はないんですか?」
「ないよ、ここは空想の世界だから」
不機嫌そうに、マディンゴが答えました。
なにもそんなに無理に答えなくてもよかったですのに。
「え?」
とはいえ、私はびっくりしました。
「空想の世界?」
確認するように復唱しました。
「そ。マディンゴティは、実際にあるけど、ここは空想の本当にはない世界だから」
「じゃあ、ここのジャングルも空想の・・・?」
「うん」
空想の世界・・・。
そしたら、私も想像したものが現れるのでしょうか?
・・・・しかし、それよりも記憶の山に行かなければならないのです。
もっと情報はあるはずです。
「前、来た時にはどこの辺りに記憶の山があったんですか?」
「う~ん・・・それがね、僕がここに来たのは2年前なんだ・・・今は結構動いてると思うけど・・・」
「マディンゴは・・?」
「5日前」
「5日前?!結構、最近・・」
これは、情報がつかめそうです。
「祥明さんは、来た時にどこにありました?」
「う~ん・・・説明しにくいんだけど・・・あっ、ここだよ」
祥明は、足を止めました。
ずっと、ジャングルが続いていましたが、そこはなぜだか急に祥明側である、右の木が途切れて、岩や石が飛び出ていました。
その岩や石はとても鋭いです。
「ここにあったんですか?」
「そうだよ、来たときはこんなトゲトゲじゃなかったんだけどね・・・。それに山ってほど山じゃなかったし。その時は、とくに気も留めないで通り過ぎてしまったくらいで・・・」
それを聞いて意味はありませんが、その中でも一番大きく、一番鋭い岩をなでました。
2年前、ここには記憶の山があった・・・。
しかしなでても、手がチクチク痛むだけでした。
「助けて・・・助けてったら・・・聞いてるの?助けてえっ・・・!」
いいえ、それだけではありませんでした。
また、あの不気味な声が聞こえてきたのです。
しかし、今回はどうやら女の人の声のようです。
私はつい、ピクッと反応して、ゆっくり後ろを向きました。
後ろには、祥明、マディンゴ、そしてとても奥の方に黒い人影・・・。
どんどん近づいている・・・と感じました。
私は、岩から手をどけ、さっさとジャングルの道を戻りました。
「さあ、じゃあ行きましょうか!」
急に明るくなって、先頭に立ったのと、先ほどの私を見て、祥明とマディンゴはきょとんとしています。
きっと、頭の中には?しか浮かばないのでしょう。
「それは私も同じですから!」
つい、声に出してしまい、祥明とマディンゴはますます不思議になるばかりでした。