見知らぬ場所で
「あなたは何者?」
「それはこっちが聞きたいですよ」
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気が付くと、私は、なんだか知らない場所にひざまずいていました。
辺りは、木がボウボウに生えて、どうやらここはジャングルのようです。
さっきの、記憶室からどうやってここに来たのでしょうか?
しかしマディンゴは、不審そうに私を見つめ、祥明は道のど真ん中に横たわっています。
・・・・場所よりも、マディンゴや、祥明の様子が変です。
「どうしたんですか?そんなに物珍しそうに私を見て」
「いや、珍しいよ!!」
マディンゴが怒るように言いました。
何もそんなに叫ばなくてもいいですのに、マディンゴの声がジャングル中に響き渡っています。
「あなた、今戻ったよね?」
「と、言うのは?」
「さっき幼児だったのに、今14に戻ったよね?」
「何の事ですか?」
マディンゴは一体何を言っているのでしょうか?
そんなこと、私にできるわけがありません。
それに幼児だった記憶も、戻った記憶もありません。
「ああ~重たかった」
呑気そうに祥明が言います。
「祥明さん、どうしたんですか?」
いたって、普通の質問をしていたのに、マディンゴと、祥明は目を大きく見開き、お互い見合わせました。
「今、祥明って言ったよね」
「さっき、『男の人は誰?』って言ってたよね」
「はあ?私はそんなこと、言ってません!」
ただ、否定をしただけだというのに、マディンゴと祥明はさっきの目よりもさらに大きくして、本当にびっくりしたようです。
「記憶がないぞ?」
「う~ん、おかしいわねえ・・・」
「ああ!つまり、さっきの記憶はなくなって、それより前の記憶に差し替えられたってこと?」
「う~ん、そうみたいね、そうとしか考えようがないわ」
さっきの記憶?
私は二人の話を聞いて、一人首をかしげました。
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「う~う~・・・助けてっ~・・・誰か・・・」
私はハッとして周りをキョロキョロ見渡しました。
しかし、このとても怖いうめき声の持ち主は見当たりませんでした。
この声はマディンゴでも、祥明の声でもありません。
・・・・なんだか、気味が悪くなりました。
しかし、マディンゴと祥明はそれでも顔色一つ変えません。
普通、この声を聞けば何かしら反応は現れるはずです。
でも、反応さえもしません。
どうやら、マディンゴと祥明の耳に届いていないようです。
私はますます気味が悪くなりました。
この場を早く去らなければ・・・何かが来る・・・そんなことを思い始めました。
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「なんでだ?」
「もう!あの子はおかしいわ、絶対」
もはや、私のことをおかしいと言っています。
ただ、私はそんなおかしいと言われるようなことをした記憶はありません。
しかし、つまりそれは、私が状況を説明しても「おかしい」と信じてくれないことを表していました。
「さ、進みましょうよ・・・・な、なんかの場所に」
「記憶の山よ」
「そ、そう!記憶の山!進まなければ、何も始まりません!!」
と、私は一番後ろにいたので、マディンゴの背中と祥明の背中を押し、なんとか・・進めました。
「それも、そうだなあ・・・歩きながら考えるか」
・・・・私は、数々の謎を、歩きながら解決させることができるでしょうか・・?