テーマパーク勝負
「ようこそDAW研究部へ。私が部長の、三年A組・二階堂清隆です。好きな鳥取県日南町の橋は『巨根橋』です」
文化祭も終わり、アイドルグループの活動も頓挫して、目標を見失っていてもお約束は続く。
「やあアイリスさん、今日もお綺麗ですね。私はあなたにお会いして、初めて『恋』という言葉の意味を理解しましたよ。観賞用や食用に養殖もされている淡水魚ですよね。鯉に恋して濃い気分とはこのことでしょうかね」
「ときめく要素が皆無なのでスルーしますが、相変わらず変態ですね、ダンタリオン」
「誰が変態ですか、失敬な。確かに私も以前は『お前が湖に落としたのはこの金のムチか? それともこっちの銀のムチか?』と聞かれて『いえ、普通のムチです』と正直に答え、ご褒美にすべてのムチで打たれたものですが」
「原作レ●プも甚だしいですね」
「しかし、今の私は女王様に『お前は普通すぎるんだよ!』とのお罵りを受けるぐらいに普通なのですよ」
「女王様が出てくる時点で、もはや普通ではないですね」
「おや、リリスさん。今日もチョコレートパイ持参ですか。奇遇ですね、私もパイは大好きなのです」
二階堂先輩のセクハラは、とうとうリリスにまで牙をむきだした。
「――で、勝負を受けたはいいけど『規模の大きな、きっちり勝敗の決まる勝負』ってどうするんだ? それと勝算はあるのか?」
ここのところ僕たちは、何をするでもなく、会議という名の雑談に明け暮れていた。
しかし、天界に勝負を挑まれ、受けてしまったからには、勝負の内容を考えなければならない。
文化祭も終わり、軽音部の活動もひと段落ついた僕は、今度こそリリスたちの暴走を食い止めるべく、魔界イメージアップの活動に専念している。
「実は今までの活動よりも規模が大きすぎて、言い出せなかったアイデアがあるっス」
「ほう、でも今回はちょうどいいんじゃないか? どんな案だ?」
「まずはそこに至るまでの経緯を説明するっス。文化祭出演の申請も却下され、ライブハウスでは『二度と来るな、このキ●ガイども!』とか『いつの時代のハードコアパンクだよ!』などと言われ、塩まで撒かれて締め出されたリリスたちは、盗んだバイクで走り出し、夜の校舎窓ガラス壊して回ろうかと思っていたぐらい、やさぐれてたっス」
「前略・何度も同じツッコミで大変恐縮ではございますが、昭和かよっ!」
「いっそ憂さ晴らしにボンタン狩りでもしようか、でもボンタンを履いてるヤンキーが見当たらない……そんな時に、なぜかリリスたちの行く先行く先に出没するファンのキモオタを、ルキが罵倒してとっちめたら、『ブヒッ、プレゼントを渡そうとしていただけなんです。ブヒブヒ!』と言いながら泣いて土下座して、東京ネズミ―ランドのチケットを三枚プレゼントしてくれたっス」
「そ、それはファンに対する仕打ちなのか?」
「さっそく気晴らしに東京ネズミ―ランドに三人で行ったっスけど、アイリスはずっと元気がないし、リリスとルキは、誰も死なないどころか刃傷沙汰すら起こらないので、あまりにも退屈だったっス」
「もういっそ海外の紛争地帯かスラム街にでも行けよ……」
「なのに東京ネズミーランドは、人が多くて大人気だったっス」
「なるほど、話が見えてきたな」
「あんな富士額のクソネズミが幅を利かせているような、ボッタクリのゆるゆるお花畑よりも、リリスがプロデュースすれば、百万倍エキサイティングなテーマパークになるっスよ!」
リリスは鼻息を荒げて高々と宣言する。
「お前、あの天下の東京ネズミ―ランドを相手に、何を根拠にそんな自信満々に……」
すると、珍しくルキが口を挟んできた。
「でもアグレアス卿、リリスは確かに以前、魔界の第三セクターに出向して、テーマパークの運営をしていらっしゃいましたわ」
「え? そうなの? それは失礼なことを言ってしまったな」
「リリスが出向なさってからは、入場者が激増して、特にリリスの考えたアトラクションは連日長蛇の列だったのですわ。まあ最終的には諸事情により経営破綻いたしましたけれど」
「……ふむ、魔界でのこととはいえ、一応は実績があるということか」
「というわけで、天界が喧嘩を売ってきたなら話は別っス。さすがに今回は使用MPも半端じゃなくなりそうっスので、魔界の元老院にも話を通さないといけないっスけど、テーマパークで勝負するっス!」
そしてあの人の眼鏡が鋭く光る。
「ふむ、そういうことでしたら、DAW研究部よりもテーマパーク研究部のほうがいいですね。アイリスさん、お願いします」
「いえ、その部活だけは自分でプレートを交換してくださいな、ダンタリオン」
「ああ、そうでした。テーマパーク研究部の部員は私だけでしたね」
二階堂先輩が部長をしている部活にはことごとく入っていたアイリスが、テーマパーク研究部だけは所属していないという。
「なんで?」
「人混み……嫌い……」
急に『文芸部および通常モード』の蚊の鳴くような声でアイリスが答えた。
「ようこそテーマパーク研究部へ。私が部長で唯一の部員の、三年A組・二階堂清隆です。好きな中東の空港は『オマーン国際空港』です」
◇ ◇ ◇ ◇
見習い天使アルメルスと僕たちの勝負は、どんどん話が膨れ上がり、もはや天界と魔界との代理戦争の様相を呈するようになってきた。
そして双方協議の結果、次の内容とルールが定められた。
・勝負の名称は『天界ランドVS魔界ランド』とする。
・勝負内容はテーマパーク対決とする。
・勝負期間は開催初日から半年間とする。
・勝敗は期間内総来場者数の多いほうが勝ちとし、収益は一切考慮しない。
・来場者が両方の施設を訪れた場合、滞在時間の長い方への来場にカウントする。
(場内限定のカウンティング魔法で管理する)
・テーマや内容は自由。
・開催地は東京湾内に巨大な浮島『東京メガフロート』を建設し、そこで行う。
・それぞれ同じ面積になるように敷地を中央で分割する。
・自陣内では自由に施設を建設できる。
・大規模空間魔法により建設期間を短縮させ、開園は同一日時とする。
・休園日は自由。期間内の施設及び設備の新改築も自由にできる。
・相手陣営への営業妨害や相手陣営施設への破壊工作は禁止する。
・強引な客引き(キャッチ行為)は禁止する。ただし宣伝広告は自由に行える。
・霊力や魔力を使用した、洗脳や記憶操作などによるリピーター確保は禁止する。
・バックヤード(舞台裏)での転移門の設置は自由に行えるものとする。
・ただし来場者の転移(天界または魔界への転移)は禁止する。
東京メガフロート建設に当たっては、日本円で数十兆に及ぶ建造費用のすべてを僕の相続した遺産から捻出し、かわりに人間界への根回しや必要な記憶操作などは天界が担った。
魔界政府には、魔界の威信をかけて、施設建築やスタッフの派遣などの全面的なバックアップをしてもらうことになっている。ただしこれも財源は僕の相続した遺産からなのだが。
魔界陣営は、いつものメンバーが魔界ランドの概要を決めることとなった。
リリスたちのトンデモぶりを見る限り、魔界の重鎮などにしゃしゃり出て来られると、ますますロクなことにならないと僕が判断したからだ。
魔界政府側も、僕が私財を投げ打っていることや、リリス以上に人間学に精通している者はいないことなどから、しぶしぶながらも了承してきた。
そして僕たちは、テーマパークの内容に関する会議をすることとなった。
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