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ドラゴンに首輪は、必要ですか!?   作者: takkaの包み
第1章 花冠の契約
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真意

微妙な距離感を保ったまま、一切視線を合わせようとしない二人。

呆れたような眼差しを二人に向ける女性が一人。

そして、茹ダコのように目を回しながら抱えられている少女が一人。


幾分かマシになったであろう空間に、待ちに待った進展が訪れようとしていた。




「もう、痴話喧嘩は・・・っと、()()()失言だったな。今のは気にしないでくれ」




ラクラから発せられた言葉に反論しようと身を乗り出したリンは、その口を開く前に片手で静止させられる。

二人の反応を楽しみたい反面、一向に話の進んでいない状況をラクラは憂う。流石に、このまま朝日を拝むのは馬鹿げているからだ。




「とりあえず。いま、二人の関係を深く掘り下げることはしない。必要であれば聞くこともあるが、まずはこちら側の説明を聞いてほしい」


「・・・わかったわ」





リンは納得がいかないような素振を見せるが、それはまさに〝素振”でしかなかった。自身の過失、失態は認めている。





「よろしい、ならば本題に戻る。さっきも言ったが、〝精霊墜し”という言葉の意味をチヒロは知らないな?」


「はい。ただ、文字通りの解釈なら・・・想像はできるかな?」




読んで字のごとく。そのままの意味ならばニュアンスは伝わってくる。

しかし、なぜそう呼ばれるのかは見当もつかない。その言葉を真に理解するには、到底及びもしない。




「そうだな。〝文字通り”で大体の説明は付く。ただ、すこし噛み砕いて言うならば・・・〝高次元体を我々の(くらい)まで墜す”ということだ。契約とは同位、つまりは人間同士では起こり得ない」


「・・・はぁ」



「わからんか?ここで目を回している()()()も、我々よりもはるかに高次元の存在だったんだぞ?」




「ゥエッ?!」





信じられないといった眼差しを遠慮なくぶつける。

あどけなさの残るこの少女(マール)が高位な存在だとは信じられなかった。

いや、チヒロにとっては天使と呼んでも差し支えはないのだが・・・。





「彼女は〝ドライアード”。森の守護者と呼ばれていた。存在自体が冗談みたいなやつだ。今はこんな(なり)をしているがな・・・」



(・・・だった?それなら、今は違うということか?)



自分と同じ次元まで墜す。だから、精霊墜し。ーーーそんなことが可能なのだろうか?


リンは〝あの時”、なんて言っていた?

どの次元を指している?

分からないことだらけだ。

マールに関してもそうだ。ドライアードといきなり言われても理解が追い付かない。

チヒロの頭は限界を迎えようとしていた。




彼女は困惑しているチヒロを視界に入れ、諦めたかのように言葉を紡ぐ。





「・・・私も似たようなものね。私とチヒロを混ぜ合わせたの。もう一度、世界の理から()()()()()()



「〝世界の(くさび)”。やはりマールと同位の存在・・・世界によって歪められた者か」






ゆっくりと瞼を閉じ、同意を示す彼女の横顔は酷く寂しげだった。

その表情がチヒロの冷静さを取り戻す。すべてを理解する必要はなかったのだ。今はリンと自分のことだけ分かればそれでいい。





「つまり、リンは何か途轍もないものに囚われていた?それから逃げるために俺を利用したってことか?」


「ーーーっ、そうよ。私は自分の為に、チヒロごと世界の鎖から外れたの。あなたを利用してっ・・・」





彼女は懺悔するように、許しを乞うように訴える。必死だった。

チヒロがそんなリンに対して思うのは、『彼女らしくない』という違和感だ。それならば。


自分に出来ることといえば・・・これぐらいなものだろう。






「ーーーなんだ。俺と同じじゃないか」


「へっ?」



目を白黒とさせているリンが面白くて、つい笑みがこぼれるのを止められない。

そんなことで悩んでいたのか、と。


リンは優しく、あまりに不器用だ。わかっていたのに、それに気づけない自分が情けない。





「リン。俺はあの時、助けて(殺して)くれって言ったんだ・・・もう、忘れたのか?そのときからずっと。俺はお前の物だーーーってアレ?」





照れ隠しのように顔を背け、頬を掻く。正直な気持ちは伝えることができた。

しかし、この反応はなんだろう。


いうなれば、蒸気機関車を思わせるような。モクモクと湯気を発し、真っ赤に顔を染め上げたリンの姿があった。


チヒロはどうも、自分が思っていた以上に直情的だったようだ。それは彼の貪欲さがなせる技なのか、ただ単純に天然なだけなのか。

ただ、先ほどと異なるのは彼女が一方的に恥ずかしがっているということだけだ。


ならば想像に容易い。この状況に置かれた彼女が取るべき行動は。

・・・鉄拳制裁(愛情の裏返し)だ。





「ア、アンタは・・・いっぺん死ねっ!!」



「っご?!、げふぅっ」




音速を超えた鉄拳はチヒロの腹部を抉ると、そのまま空中へ放り出す。


ラクラはげっそりとした面持ちで、二人の行く末を見守った。彼女といえども、これ以上は耐えられない。達観した彼女の眼差しはなんの感情も映してはいなかった。

ただ一つ幸いだったのは、マールが二度目の昏倒を回避できたことだろう。今はまだ夢の中。





「もぅ~、お腹いっぱいですってば~」





ダグリス亭の夜明けはまだ来ない。



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