サリー先生
【前回までのあらすじ】
・空母が爆発します
・ミサイルで飛ぶわよ
「やだぁぁぁぁぁ!空飛ぶとか落ちるとか、お腹がヒュンってするヤツ、やだぁぁぁぁぁぁ!」
ジタバタする俺を完全に無視して、サリーは俺を引きずっていく。極太のミサイルに向けて。あんなので脱出するとか、マジでどうかしてる。爆発に巻き込まれた方がマシなぐらいだ。
「暴れると、頭を切り落として持っていくわよ。大人しくしていなさい。」
「助けてよ!マキちゃん、なんとか言ってよォォォォ!」
マキちゃんは俺をチラリと見てから、何事もなかったようにサリーに言った。
「サリー様、ミサイルのコントロールは私が引き受けますわ。」
「あら、助かるわ。まっすぐに飛べなかったらどうしようかと思っていたのよ。」
「無視しないでぇぇぇぇぇ!やだよぉォォォォ!」
俺は泣きながらマキちゃんに助けを求めたが、すぐにそれが大きな間違いだったと気づくことになる。俺の方をチラリと見たマキちゃんは・・・薄っすらと頬を染め、瞳が熱っぽく潤んでいた。そしてその形の良いくちびるから、絶望的な言葉が紡がれる。
「嫌がるご主人様を無理やり・・・うふふふふ・・・うふふふふふ・・・ッ!」
ミサイル決定。今日のマキちゃんはなんていうかとてもアレだ。触手をきっかけに、何かに目覚めたとしか思えない。いつの間にかサリーが落ちていたロープを使い、手際よく俺の身体をミサイルに縛り付けていた。サリーもミサイルに・・・というか仰向けに縛られた俺の上にまたがって、振り落とされないようにしっかりと掴まれる出っ張りを探している。何度か手元を確かめると、きっぱりと言った。
「よし、いいわよ。」
「よくないよ!だいたいこれ、地面に転がった状態から発射できるの!?」
「やったことないもの。知らないわ。」
「爆発したらどうすんの?」
「その時はその時よ。」
「やだよォォォォォ!怖いよォォォォォォォォォ!」
「・・・もう、うるさいわね。」
「助けてぇぇぇぇぇぇムグッ!?」
サリーが俺の口を自分のくちびるで塞ぐのと、ミサイルが点火して爆音とともに甲板の上を滑りだしたのは同時だった。俺の頭から恐怖が吹き飛び、柔らかい感触が世界の全てになる。その間もミサイルはガリガリと甲板の上を滑っていたが、ふいに機首が持ち上がって空に飛び出した。しばらくは凄まじい加速のGに目をつぶって耐えていたが、十分に速度が乗って安定したので目を開けると、ただ風を切る音とぬけるような青空、それから俺にまたがるサリーが見える。ゴウゴウという風切音の中、サリーが大声で言った。その顔は楽しそうに笑っている。
「あはははははは!最高!最高よ!」
すでに空母ははるか彼方。目の端にキノコ雲が上がるのが見える。少なくとも空母の爆発に巻き込まれて消滅するのは避けられたらしい。
「俺は!こわいよ!どうやって着地すんのこれ!」
「んー?なあに?怖いの!?」
俺の言葉は風切音にかき消されてうまく聞こえないらしい。しかしサリーは満面の笑みのまま、グッと俺に顔を近づけて・・・また強引にくちびるを奪った。
「んー!?んんー!?」
どれくらいそうしていたのか、いつの間にかミサイルは高度を下げて、どこまでも広がる砂漠地帯に軟着陸した。爆発することもサリーを振り落とすこともない、マキちゃんの神的コントロールである。
そして俺は・・・相変わらずサリーに襲われている。サリーは空母を倒すという積年の夢が叶い、完全にハイになっているようだ。くちびるを奪われながら、ミサイルに縛り付けられているにもかかわらず、どうやったのか俺の上半身は裸にされていた。
「あっあっあああああ・・・!?」
「いいのよ、そのままで・・・あなたのミサイルは私が爆発させてあげるわ・・・。」
どこまでも色っぽく迫るサリーに、俺の精神は陥落寸前だが・・・ふいに聞こえた咳払いにそちらを見ると、どす黒いオーラを放つマキちゃんが溢れ出す殺気を隠すこともなくサリーを睨んでいる。
「サリー様・・・おイタはそこまでにしてくださいませ。」
サリーはしかし、ニヤリと笑ってマキちゃんを見返す。
「マキさん・・・私に任せてくれれば、今までに見たことない彼の姿を見せてあげられるわ。これでも3000歳だから、経験はそこそこあるのよ?」
ぺろりとくちびるを舐めるサリーの仕草は果てしなく色っぽく・・・その言葉が偽りでないことを裏付けている。
「なななななにをバカなことを言って・・・マキちゃん?マキちゃんさん?」
マキちゃんはいつものポーカーフェイスを崩し、頭を抱えて今までに見たこともないぐらい真剣に悩んでいた。ちょっと待て。そこは迷わず助けてほしい。
「しかたありませんわね・・・1時間、1時間だけですわよ?」
「十分すぎるわ・・・ふふ、10回・・・いえ、目標は20回ね。」
「なななななななななな・・・嘘だろ!マキちゃん!そこは嫉妬するところだろ!こんな時ばっかり!20回ってなんだ!?」
しかしわずか数分後、俺のズボンが半分ほど脱がされたところで救世主はやってきた。ほんの数分にもかかわらず、サリーによる大人のハッキングは早くも俺を追い詰めて虫の息だったが・・・まだ大丈夫・・・うん、まだ大丈夫だ。マキちゃんは息を荒くしながら、尊敬の眼差しでサリーを見ている。なんでだ。
青空からゆっくりと降下してきたのはサリーの兵員輸送機である。着陸するより早く後部のハッチが開き、30メートルほどの高さから飛び降りてくる小さな影は・・・もちろんナナだ。ふわりと長い髪を揺らして静かに着地し、砂を巻き上げて走ってきた。輝くような、どこまでもまぶしい笑顔・・・汚れたパパでごめんよ。まだパンツは履いてるから許してほしい。
「おとぉぉぉぉぉぉさぁぁぁぁぁぁん!おかぁぁぁぁぁぁさぁぁぁぁぁぁん!」
「ナナ!ナナ!無事でよかった!来てくれて本当にマジで最高にありがとう!愛してる!げふぅ!」
ミサイルに縛られたままナナの体当たりを食らい、口から血が吹き出す。でもそんな衝撃に感謝の気持ちが溢れ出した。いや、少し残念だったような・・・いやいや、録画とかされるし・・・。
サリーは苦笑しながらマキちゃんと顔を見合わせ、小さくつぶやいた。
「ふふっ・・・残念ね。また次の機会にしましょう。」
「そうですわね、先生。」
先生ってなんだ。




