触手プレイ
【前回までのあらすじ】
・主人公(不人気、男) × 触手
※ 今日の更新はひとつです。
「そこは・・・そこはダメぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
無数の白い触手が俺の身体を拘束し、這い回る。衣服の隙間から侵入し、俺の敏感な部分を容赦なく・・・よ、ようしゃ・・・あっあっ
「はなして!はなしてぇ!お嫁にいけなくなるぅぅぅぅぅぅぅ!」
触手は妙にすべすべした肌触りで、スルスルと全身を這い回られても痛くないというか、それどころかちょっと・・・あの・・・アレである。しかしズボンの裾から侵入した触手が内股を伝い、いよいよ危険なゾーンに突入してきたので俺は焦った。
「助けて・・・マキちゃん、たすけてぇぇぇぇぇ!」
その時、俺の叫びに触手がビクッと反応した。しばしの沈黙のあと、何もなかったように再び俺のデリケートゾーンに侵入しようとしてくる。・・・なんだこれ、何かがおかしい。
「マキちゃん?」
ピクッ!
「マキちゃんさん?」
ピクピクッ!
この触手、さっきから俺の身体を撫で回すばかりで一向に危害を加える気配がない。俺は痛みを感じないので、ただ気づいていないだけかと思ったけどそうじゃない。どこからも血が出てないし、骨が折れる音も聞こえない。これは明らかに俺を攻撃しているのだ・・・性的な意味で。
「マキちゃん、ちょっと出てきてください。」
「ぬううううううううううううう」
「いいから。白まんじゅうのモノマネでごまかさなくていいから。」
俺が触手に拘束されたまま言うと、マキちゃんのホログラムが出現した。ちなみにさっきの「ぬううううう」は白まんじゅう特有の低い声じゃなくて、普通にマキちゃんの声だった。彼女はいつものポーカーフェイスだが、明らかに薄っすらと頬が上気していて色っぽい。妙に息が荒いのも加わって、抑えきれない色気を出している。俺は努めて冷静に話を続けた。
「マキちゃんさん、いつからですか。いつからあの白まんじゅうをハッキングしていたんですか。」
「・・・5分ほど前ですわ。」
「つまり、この触手は最初からマキちゃんの仕業ですか。」
「はい。おっしゃる通りです。」
まるで悪びれる様子もなく・・・それどころかうっとりと頬を染め、溢れ出す色気を抑えずに言うマキちゃんに、俺はこの人のことを甘く見ていたのかもしれないと反省した。
「はぁ・・・もう、いいです。」
「よろしいのですか・・・!?続きをしても・・・!?」
「そ、そんなわけ・・・あっだっダメだってば・・・あっ・・・あああーーーーーッ!」
しかしこの後、マキちゃんが拘束を解いてくれるまで、30分以上かかった。その間になにがあったのかは・・・ご想像におまかせする。
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「じゃあマキちゃんは、気絶させられていただけで異常はないね?」
俺は衣服を整えながらマキちゃんに聞いた。げんなりした俺とは対象的に、マキちゃんはホクホクした顔で実に満足げである。
「ええ、まるで問題ございません。例の備えのおかげですわ。」
「まぁ、行動は異常だったけどね・・・。」
「ふふふ・・・うふふふふ・・・また録画してしまいましたわ・・・どうしましょう・・・うふふ・・・。」
「えええ・・・」
薄っすらと頬を染めるマキちゃん。やっぱりちょっと壊れてるんじゃなかろうか。俺は変わらず機能停止して真っ黒な画面を映している「左腕」の腕時計を外して捨てると、「右腕」の腕時計を見た。少なくともハードウェアは問題なく動作しているようだ。ついでに「右足首」と「左足首」、それからペンダントのようにヒモを通して首から下げている腕時計もチェックするが問題ない。問題があるとすればマキちゃんの異常な愛情の重さぐらいだ。
これらの腕時計は全て、スキャニャーで複製したものである。全部が連携して動作するマキちゃんの本体であり、一度に全てを破壊しない限りマキちゃんは不滅。今回のように電子的に気絶させられると復帰までに数分かかるが、ハードウェアが壊れたとしても全く問題はないのだ。腕時計が壊れても俺が平静を保っていたのはこういうわけだ。そうでもなければマキちゃんがやられた時点で、俺はたぶん全身から汁という汁を撒き散らして発狂しているだろう。
ふとマキちゃんが真面目な顔に戻り、俺に頭を下げた。
「それにしても私が気絶させられるとは・・・お恥ずかしい限りですわ。申し訳ございません。」
「ああ、マキちゃんが無事ならなんでもいいよ。」
俺の言葉にマキちゃんがまた頬を染め、気絶の経緯を説明してくれた。
「我々がハッキングしようとしたコンピュータは、対ハッキング専用のトラップですわ。」
「トラップ?」
「ええ、この空母は戦闘機や人型ロボットにとっての『安全な巣』です。この巣を乗っ取るために、他の戦闘機や人型ロボットの群れが攻めて来ることがあるようです。」
「ほうほう。」
「その際に空母に住む権利をハッキングして奪うらしいのですわ。なのでああいったトラップがあるのです。」
「天然のハッキング対策か・・・やっぱりこの世界、ぶっ飛んでるね。」
「全くですわね。」
他にもこういう能力を持ったナマモノがいるかもしれない。今は腕時計が量産できるからいいけど、そうする前にマキちゃんを失うようなことにならなくてよかった。
さて、いつまでものんびりしているわけにはいかない。・・・また襲われたら困るし。誰にとは言わないが。なんかさっきから、白くてウネウネしたものが視界に入るんですよ。
「よしマキちゃん、脱出しよう。サリーへの冥土の土産に、このジェネレーターをぶっ飛ばしてやろう。・・・いわば、メイドの・・・土産だね。。」
「・・・30分後に爆発するようにセットしますわ。」
「・・・あれっ、スルー?」
俺は駆け出し、来た道を戻る。ちなみに触手・・・もとい、白まんじゅうは長時間連続して動作できないロボットらしいので、置いていくことにした。それにほら、ちょっと汚れてるし。マキちゃんを説得するのに若干の労力が必要だった。
進みだして間もなく、マキちゃんを気絶させた黒いコンピュータのある部屋にたどり着いた。俺の目の端に「サリーだったもの」が目に入る。
「マキちゃん、ちょっと待って・・・。」
真っ黒でカサカサで、いまだに再生が始まらないということは、彼女はもう・・・。黙って通り過ぎようとしたが、やはりできない。俺はそれを両腕でそっと抱き上げて、また走り出した。完全に燃えカスになっているそれは触れれば崩れそうで、とても人間と思えないほど軽い。
「ご主人様・・・念のため申し上げますが、両腕が使えないと危険ですわ。周りはまだ敵だらけです。」
「うん・・・。でも、こんなとこに置いていくのもかわいそうだよ。できるところまででいいから連れてって・・・できれば首都に帰してあげたい。3000年も戦った人を放置なんてできないよ。」
マキちゃんはなにも言わず、脱出ルートの案内に専念してくれた。ソナーで敵の位置を察知し、隠れるタイミングを教えてくれる。・・・思ったより時間がかかり、もう少し爆発まで余裕のある時間を設定すべきだった気がしてきた。
「ふう・・・やっと格納庫まで来たね。」
俺はたぶん、焦っていた。急がないと空母の爆発に巻き込まれるのだから仕方がない。しかし焦りのために、あまり警戒せずに広い格納庫に飛び出してしまった。行きの道中では敵がいなかったからといって、帰りも同じであるとは限らないのだ。暗闇からプラズマ弾が飛び出し、俺の肩と脚に命中する。
「うぉぉぉぉびっくりしたぁぁぁぁ!!」
慌てふためき、サリーだったものを抱きながら転がるように近くの壁に身を隠した。銃撃された方向に目を凝らすと、数体の人型ロボットと、例のブレードで二刀流に武装した1体の白まんじゅうが見える。
「ここにも白まんじゅうか・・・!」
「接近しだい、すぐにハッキングをかけますわ。ご安心を。」
しかし敵は学習していた。先ほど別の白まんじゅうをハッキングしたことを知っていたのだ。いつの間にか空気中に、キラキラと光る金属片が浮かんでいるのに気がついた。
「これは・・・空気がキラキラしてる・・・?」
「ご主人様、電波妨害効果のあるチャフのようなものが展開されています!遠隔ハッキングが使用できません!」
「と、いうことは・・・?」
いつの間にか白まんじゅうが目の前に立っている。その手に持った巨大な電子ブレードの刀身が、暗闇にぼんやりと青白いスパークを放って浮かんでいた。ほとんど無意識に横っ飛びすると、パワーサポートが機能して砲弾のように身体が飛んだ。直後にブレードが振るわれて、さっきまで自分がいた地面をスパークとともに破壊する。
「あっぶねぇぇぇぇ!ひょええええええ!」
「ファインプレーですわ、ご主人様。」
俺は転げそうになりながら、サリーの亡骸を抱きしめて走った。暗闇からプラズマ弾が飛んでくるし、背後からは白まんじゅう。唯一の武器であるハッキングは使えないし、誰かが助けに来てくれる可能性はゼロだ。まずい、考えると下半身が緩みそう。さっき・・・色々されたし。
「ああ、最後にご主人様と触手プレイができて幸せでした・・・。」
「マキちゃんやめて!人生に満足した感じにするのやめて!」
マキちゃんに気を取られていたら、足元の何かにつまずいて前のめりに転倒してしまった。勢いのままにゴロゴロと転がり、壁にぶつかってようやく止まる。グルグル回る頭を抑えて顔をあげると、目の前にまたブレードを振りかぶる白まんじゅう。サリーを抱いたまま横に飛び、またもギリギリで回避する、本日2回目のファインプレー。壁が斜めに切り裂かれて、壁に開いた細い切り口から外の風と光が吹き込んでくる。
「しししし死んだかと思った!今日の俺、すごくない?」
「ええ、素晴らしかったですわ・・・本当に。」
「・・・プレイの話じゃないよ?」
俺が飛んだ先は、部屋の角だった。白まんじゅうが前に立ち、完全に追い詰められた形である。顔のない真っ白な巨人が、ゆっくりと巨大な2本のブレードを振りかぶった。2回も奇跡のファインプレーで生き残った俺だが、3度目の正直ってヤツだ。
「・・・あ、これ、死んだわ・・・。」
「ご主人様、天国でも触手プレイがしたいですわ。」
「俺はやだよ・・・。」
こんなしょうもない会話が最後なのか。死ぬ前ぐらい、もっとラブラブな感じとか、カッコつける感じにしたかった。マキちゃん、愛してるぜ・・・私もですわ、ご主人様・・・ポッ。みたいな。今からやっても間に合うかな?いや、この人なんかもう触手で頭がいっぱいだからな。っていうかもう遅いね。「マキちゃ」まで言ったあたりで真っ二つにされるよ、これ。ああ残念な最後だった・・・。
だが次の瞬間、俺の腕の中から声が響いた。
「その触手プレイ、私も興味があるわ。」




