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空母狩り、始まる

【前回までのあらすじ】


・野生の空母と戦うことになった

「おお・・・近くで見るとでかい・・・でかいっていうか・・・島だね、島。」


俺は小高い岩山の中腹、1メートルほど突き出した部分に座って、はるか眼下を悠然と歩く巨大な空母を眺めていた。空母の甲板には20機ほどの戦闘機が並んでいるが、あれが敵の戦力の全てではない。艦内にはまだ無数の戦闘機がいるし、空を見上げれば2機の戦闘機があたりを警戒するように飛び回っているのが見える。うかつな行動をとれば速攻でミサイルか機銃を叩き込まれるだろう。


「ふふ・・・ほら見て、人型ロボットもたくさんいるわよ。甲板の掃除をしてるみたいね。」


俺の横で横で楽しげに話しているのは・・・なんと、ユニオン・サリーその人だ。ここにいるのは、むろん俺と一緒に空母と戦うためである。ポニーテールにした長い黒髪を揺らして笑う姿は、こうして見ると10代の少女にしか見えない。セーラー服とか似合いそうだ・・・俺はブレザーのほうが好きけど・・・。


甲板に目をやると、なるほど白いマネキン人形みたいなロボットがあちこちでデッキブラシを持ってウロついている。明らかに量産型で弱そうなロボットだけど、それでも戦闘服で武装した俺より100倍ぐらい強いのは間違いない。あれが5000体もいるとなると・・・かなり家に帰りたくなってきた。ちらりとサリーの横顔を見る。俺の視線に気づいた彼女もこちらを見るが、その瞳はまるで遠足に来た子どものように輝やいている。もっと憎しみに溢れる感じを予想していたのだが、案外楽しそうだ。


「なんか・・・楽しそうだね。」


サリーはふふっと笑って俺の方を見た。


「あなたとの2回目のデートですもの。楽しくないわけがないわ。」


「2回目?でぇーと?」


予想外の発言に俺は目を見開き、マキちゃんは絶対零度のオーラを放つ。1回目ってアレか、俺の首に爆弾を巻いて、帰り際にウォーリーが銃を乱射したヤツか。アレがデートなら、銀行強盗や自爆テロも2人以上でやったら全部デートになると思う。


「2回目のデートなら・・・そうね、エスコート次第ではお泊まりもアリよ。」


「あばばばばばば」


さっきから何言ってんの、この人。こちとら30歳の魔法使いを通り越して500歳の大魔導師だぞ。そういう冗談はやめていただきたい。さっきからマキちゃんが黙ってるのが怖い。無駄に背中を冷や汗で濡らしていると、サリーがふとまじめな顔をした。


「・・・どうして私を助けてくれるの?」


「ん?だって、首都にネッコワークを展開させてくれるんでしょ?」


「・・・それだけ?」


俺が黙っていると、突然マキちゃんのホログラムが出現した。


「ご主人様、素直におっしゃればいいではないですか。サリー氏のことが嫌いではない・・・いえ、好きだと。」


「ななななななななマキちゃんさん⁉︎」


サリーが意外そうに、しかし余裕の笑みを浮かべて俺の顔を見る。


「あら、そうなの・・・?」


マキちゃんの言うことはあながちデタラメではない。サリーはすごい人物である。彼女の功績がなければ今のこの世界は存在しないか、輪をかけて殺伐としたものになっていただろうし、俺もこんなにのんびりとは暮らせていなかっただろう。彼女の長すぎる戦いの片鱗は例の「サリー動物記」からも読み取れた。可愛い丸文字で書かれた「イケメンがいない」「シャワー浴びたい」などの落書きに混じって、戦いで死んでいった人々への感謝と悲しみが無数に書き込まれているのだ。俺のは好意というより尊敬に近い・・・と思うけど。いや、偉大な人物なのにちょくちょく普通の女の子みたいな表情を挟むところにドキドキしなくもないし、短いスカートをチラチラさせられるたびに目が釘付けになるけど・・・敬意、そう、これは敬意だ。短いスカートに敬礼。ちがう。


「あら、私の顔ばかり見て、どうしたの?・・・今さら色仕掛けが効いてきたかしら?」


「ちちちちちちちがっそんなわけ・・・!」


『ご主人様、作戦開始時間ですわ。』


ムスッとしたマキちゃんの声と同時に、頭上を旋回していた2機の戦闘機が爆散した。ナナとウォーリーによる超遠距離射撃。作戦開始の合図である。


「よよよよしサリー、行こう。」


「ええ、行きましょう・・・でも、お泊まりするかどうかはエスコート次第よ?」


「そそそそそういう冗談はやめてってば・・・。」


まんざらでもなさそうな主を見たマキちゃんが、誰にも聞こえないほど小さな声でつぶやいた。


「サリー氏・・・ブラックリストに登録決定ですわ・・・。」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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