おもしろコンテンツ大会
【前回までのあらすじ】
・スマートニャンが流行らないので、おもしろいコンテンツを作ることに
・勝ったら水着
・一生ついていきマス・・・ッ!
※ 長めになったので今日の更新はいっこにしておきます。毎日気軽に読んで欲しいのです。
「それじゃあ始めよう!第一回『おもしろコンテンツ大会~!」
1週間後、俺達はまた家族全員で食卓に集まった。食事ではなく、それぞれが作ったコンテンツを発表しあうためである。
「それじゃあ最初は・・・」
「ボボボボボクが発表したいです!」
エドが元気よく手を上げる。一番最初を自分から買って出るなんて、なかなかの自信だ。みんなが一緒に見られるように、レイのネコがテーブルの上に乗り、空中に大きくウェブサイトを投影した。
「ボクのサイトは・・・『ザ・ワイルド』です!野生のナマモノのデータベースになってて、生態とか身体の構造とか、襲われた時の対処法なんかも載せました!」
おお・・・これはスゴイな。生息地や名前、見た目の特徴どの情報でも検索できるらしい。正直、この世界のナマモノに詳しくない俺にとっては最高のコンテンツだ。俺はエドの説明を聞きながら、マキちゃんに頼んで小さな画面を別に表示してもらい、『ザ・ワイルド』をさっそく夢中になって閲覧した。短期間でよくもこんなに作り上げたものだと素直に感心する。例の『サリー動物記』のデータも盛り込まれているらしく、データ量は膨大だ。
「マキ先生にも手伝ってもらったので、全部自分で作ったんじゃないんですけど・・・。」
「ふふ、エド様、私は少し手伝っただけですわ。これはエド様が頑張った成果です。」
「エド、すごーい!」
みんなに絶賛され、ナナにも称賛されたエドは顔を真っ赤になって照れていた。次はガイだ・・・ん、ガイも参加してたのか・・・。
「オレは・・・なんとこの、『ケーブル☆大図鑑』を作ったッス!」
「ほぉ・・・がんばったね。じゃあ、次はナナ、お願い。」
「もっと興味持って欲しいッスよぉぉぉぉぉ!」
「はーい、ナナは『ねこさんこれくしょん』をつくったよ。」
ナナが可愛らしくピョコピョコ跳ねながら説明してくれた『ねこさんこれくしょん』は、町に放したネコの写真を集めたサイトだった。自由にネコの写真を投稿したり、評価しあうこともできるらしい。ほわほわした女の子らしいデザインと相まって、とても良い雰囲気のサイトに仕上がっている。・・・この町の人間は漏れなくネコ狂いなので、これは流行りそうだ。やるな、ナナ。続いて、ハルが自分のサイトの説明を始める。
「次はアタシね。アタシのサイトはその名も・・・『銃と硝煙』だよ!とーさんの店で扱ったカスタム銃のデータとか、作る時の作業工程なんかを載せてみたの。専用カスタムじゃない、既成品の商品なら通販の注文もできるよ。といっても、商品を届けられる場所はこの町の中だけだけどね。」
なるほど、ランス銃砲店のサイトか。作業工程は写真と動画の両方で見れるようで、銃器に詳しくなくてもけっこう見ていて興味深い。それにランスさんが色々な角度で見れるので、一部の筋肉おじさん好きにもたまらない出来だ。商売している人がこういう通販のサイト、いわゆるECサイトを作れると知れば、こぞって真似したがるだろう。みんな、なかなか良く考えているな。
「次は我デスね・・・。ご覧くだサイ、この『Wの館』を・・・。これは我のオススメするセクシー動画を紹介するモノで」
「コラぁぁぁぁぁ!エドとナナが見てるでしょぉぉぉぉぉがッ!」
ほぼ予想通りのコンテンツが出てきたので、顔を真っ赤に染めたハルの手によってウォーリーのコンテンツ紹介は強制終了した。ちなみにこの世界におけるセクシー動画は、山のふもとなどに自生している野生のメモリチップに動画を記録して売られている。よし、ウォーリーのコンテンツはあとで個人的に見せてもらうことにしよう。っていうかマジメな話、ここでは紹介できなくともネットの普及にアダルトコンテンツの力は大事なのだ。エロは世界を変える。
次はマキちゃんが発表するようだ。マキちゃんがどんなものを作るのか、俺にもまったく予想がつかない。マキちゃんは肉食獣のような目でチラリと俺を見た。その目は完全に「ご主人様(を1日自由にする権利)は頂きましたわ」と物語っている・・・やだ、あたし、どうなっちゃうのかしら・・・!嬉しいような恐ろしいような恐ろしいような・・・。ゾクゾクする俺を尻目に、マキちゃんは説明を始める。
「それでは私のコンテンツも紹介させていただきますわ。いくつかございますので順番に。ひとつ目は『天気予報』。レーダーウサギの観測データから、気象を予測しています。この辺りではめったに雨などは降りませんが、砂嵐や強風、竜巻などは割とありますので有益かと。それから『ニュースサイト』。町のネコたちが見聞きした最新ニュースをお伝えしますわ。次に『検索エンジン』。これは欲しい情報をネッコワークから検索してくれる仕組みですわね。最後にポータルサイトの『Nyahoo!』。ここまでで作成した天気、ニュース、検索エンジンやオススメのサイト情報をまとめた、ネッコワークの入り口となるサイトですわ。」
流れるように出てきた色々なサイトやシステムに、みんな唖然として説明を聞いている。マキちゃんさん・・・かなりガチで勝ちにきてるんですけど・・・。ポータルサイトとか作った時点で、他の人の勝ち目なくない・・・?
「ふふふ・・・ご主人様を1日自由にできると思ったら、つい本気を出してしまいましたわ。」
照れるように笑うマキちゃんはしかし、目が本気だった。次は俺の番だったが、俺が作った巨大掲示板『ニャちゃんねる』は誰にもピンと来なかったのか、全員が「ふぅーん」という反応だったのでここでは割愛する。
「これで全員のコンテンツが出揃ったかな・・・?あれ、レイのコンテンツ紹介がまだじゃない?」
レイの方を見ると、彼女は意外そうに答えた。
「レイのコンテンツなら、みなさんもうご覧になったことがあるですよ?」
「ん?そうだっけ?」
「はいです。『今日のお姉さま』です。」
「あーーーー!?マキちゃんの盗撮サイト?あれ、そのまま使う気なの!?」
「もちろんです。お姉さま以上のコンテンツなんてありませんです。ただサイト名は町の人向けに『今日の精霊様』にするです。」
レイが胸を張って言う。マキちゃんの写真ばかりを大量に集めたサイト『今日の精霊様』・・・。本気か、コイツは・・・。
「ちなみに写真だけじゃなく、動画も追加しておいたです。」
「ええ・・・マキちゃん、いいの・・・?」
マキちゃんは無言で頭を抑えて首を横に振るばかりで、すっかり諦めているようだ。
「まぁいいか・・・じゃあマキちゃん、みんなが作ったコンテンツを公開してくれる?事前に作っておいたアレと一緒にね。」
「承知いたしましたわ。」
事前にマキちゃんと作っておいた「ホームページの作り方」や「簡単ブログ・ウェブサイト作成サービス」といったものと一緒に、みんなが作ったコンテンツを公開した。同時に町中のスマートニャンの設定をアップデートし、(ちょっとズルいと思うけど)マキちゃんが作ったポータルサイト「Nyahoo!」がブラウザのスタート画面として表示されるような変更も実施した。後は待つだけ、1ヶ月後のアクセス数で勝敗を決定することになる。勝敗はさておき、町の人達がスマートニャンを楽しんでくれるきっかけになるのは間違いないだろう。個人サイトとか出てくるといいなぁ。
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2週間後。俺は自室でエドのサイト『ザ・ワイルド』を眺めながらボケーっとしている。今のところ俺にとって一番おもしろいコンテンツはこれだった。内容が内容だけに更新はないが、何日かけても読みきれないほどのボリュームがあるのでぜんぜん飽きない。エアコンと室外機は同じ生き物のオスとメスなのか・・・なるほど・・・。
「まぁ・・・正直、勝敗はどうでもいいんだけどね・・・。要はネットっていう文化が町に広がってくれれば、それで。」
俺が呟くと、机の上に座っている、手のひらサイズのマキちゃんが言った。
「きっとうまくいくと思いますわ。ここ数日で、スマートニャンの売上が爆発的に伸びているとハル様から伺っています。きっと、この間のコンテンツ公開の成果ですわね。・・・もっとも、どのサイトがアクセスを集めているのかは、ご主人様が調査を禁止されたので把握しておりませんが。」
「途中で順位がわかっちゃったら結果発表がつまらないからね。うーん・・・マキちゃんのポータルサイトが順当だと思うけど、この町の人たちはガチのネコ狂いだからなぁ。ナナの『ねこさんこれくしょん』あたりが人気なんじゃないかなぁ?」
話しながら、みんなが作ったサイトをつらつらと巡回する。ふと『今日の精霊様』を開いた時、山ほどのマキちゃん画像と動画の中に違和感のある動画のサムネイルを見つけた。・・・これは、俺?。いや、マキちゃんが「俺が写っている動画」を見ている・・・ところを背後から盗撮した動画か?再生。ぽちり。
『ああ・・・泣いているご主人様の動画・・・可愛らしくて・・・何度見てもたまりませんわ・・・うふふふふふふ・・・再生回数が100,000回を突破してしまいました・・・うふふふふふふ』
俺の動画を見ながら笑うマキちゃん。ふいに笑い声が止まったかと思うと、次第に彼女の息が荒くなり・・・停止。ぽちり。なんだかすごく見てはいけないものを見た気がする。あれっマキちゃんどこ行った。机の上にいたマキちゃんのホログラムが消えている。
「マキちゃん?おーい、マキちゃん?大丈夫、俺は何も見てないよ・・・ほんとだよ・・・!」
見れば『今日のお姉さま』のサイトはメンテナンス中と表示され、閲覧できなくなっていた。遠くでレイの悲鳴が聞こえる。
「違うんですお姉さまァァァァァァァ!アレは手違い、ちょっとした手違いなんですですですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!アギャァァァァアアアアアア!!」




