業務効率化
【前回までのあらすじ】
・エドに気を使われる
「ハルおねぇぇぇぇちゃゃゃゃゃゃん!」
「ナナちゃん!?エド?・・・それに、にーさんも。何してるの?こんなところで?」
男と話しているハルに気を使うエドを華麗にスルーしたナナが当たり前のようにハルに飛びつき、ハルも当たり前のようにナナを抱っこする。エドもいつの間にかハルの近くに立って、自然に頭を撫でられている・・・。なんだ、親子か?親子なのか?ハルと話していた男性職員がその様子を見てガックリしていた。いやいや、親子だと勘違いするには子どもが大きすぎるだろ・・・。それはさておきハルに話を聞くと、どうやら毎日この倉庫に来て、翌日の食料の注文を確認しているらしい。
「毎日・・・?ハル、それって大変じゃない?せっかく食料の輸送はエドが自動化したのに。」
「そうね。でも、直接顔を合わせた方がいいこともあるし・・・声だけでやりとりする電話じゃあやっぱり限界があるわ。人間同士だもの。」
さすがハル。ビジネスになるといつも彼女に丸投げしているが、本当にしっかりやってくれている。そしていつも丸投げしていて申し訳ない。でも知らない人と話すの、怖いし。俺が微妙な顔をしているのに気づいたのか、ハルがそっと俺の手を握り、覗き込むように俺を見た。ハルのほうが少し背が低いので自然と上目づかいになり・・・その大きな瞳に見つめられると、場所もわきまえずドキドキしてしまう。目の端で、さっきの男性職員が涙を浮かべて去っていくのが見えた。なんかすみません。
「にーさんは気にしなくていいんだよ?アタシ、にーさんのおかげで毎日が充実してるんだ。大きな仕事を任せてもらえて、すごく嬉しいの。」
「うん・・・いつもありがとう・・・ハル。」
ふとハルが目を閉じて顔を寄せてきたので、俺は思わずそのくちびるを・・・と思ったところで、ナナがじぃーーーっと、エドが両手で自分の目を隠しながら、指の隙間からこちらを見ているのに気がついたので、咳払いをしてハルから離れる。ハルが微笑みながら小さな声で「にーさんの意気地なし!」とささやくのが聞こえた。
家に帰った俺は、解決策を考えた。ハルは気にしないと言うが、毎日いくつもある卸売会社に顔を出すのはホネだろう。そうでなくても、ネコの店の経営も丸投げしているのだから。俺はマキちゃん(5時間ぐらい経ってたのに、まだレイを説教中だった)に相談し、とある計画を練った。ネッコワークとスマートニャンを活用して、ハルの仕事を簡単にする計画だ。
まず、スマートニャンを15体ほど作ってもらう。これはプラズマライフルの木を使うだけなので、一瞬で終わった。
それからマキちゃんとレイに協力してもらい、卸売会社から食料の注文を受ける、簡単なシステムを組んだ。会社の担当者がスマートニャンを操作して翌日の注文を入力すると、その注文を受けてプラズマライフルの林が自動的に食料を生成するのだ。生成された食料は、これまた自動的に冷ゾウ庫が輸送してくれる。そこに人の手は入らず、紙をやり取りする必要はない。ゆえに間違いも起きない。注文履歴の集計・検索も思いのままだ。完璧。マキちゃんとレイが30分ほどで作り上げてくれた。早すぎる。
そしてスマートニャンを持っている者同士の間で、テレビ電話機能を使えるようにした。このテレビ電話は平面ではなく、ネコの顔にある2つのカメラ(というか目)を利用して、ある程度3Dのホログラムとして相手を見ることができる。まるで実際に目の前にいるかのように、相手をホログラムで目の前に見ながら通話できる。
受発注を自動化し、いちいち顔を会わせなくてもまるで会ったかのように話ができる。問題はすべて解決だ。
「さすがだね、マキちゃん。完璧で、しかも早すぎる仕事っぷりだよ。」
「ふふっ・・・お褒めにあずかり光栄ですわ。」
「レイもお手伝いしたですよ!」
「おお・・・レイもありがとう。助かったよ。」
「ふふん!あ、ご主人さま。褒めるついでに、こないだみたいに『かわいい』って言ってくれてもいいですよ?」
「えっ」
どす黒いオーラが立ち昇る・・・迫りくる闇の気配・・・これが、死か・・・?
「ご主人様・・・レイを口説かれたのですか・・・?」
「い、いや、ただかわいいって言っただけで」
「私にはそんなことおっしゃらないのに・・・?レイには・・・?ほほう・・・?」
「」
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翌日、15体のスマートニャンを連れて、卸売会社にこの「食料受発注システム」と「テレビ電話」の説明に行った。使い方を説明するのは・・・もちろんマキちゃんだ。何度も言うが、この世界の精霊信仰は根強い。説明会と称して倉庫の空きスペースに集められた卸売会社の人々は、ホログラムのマキちゃんが出現すると驚き、どよめき、人によっては涙を流しながら真剣に説明を聞いていた。
「・・・以上が簡単ですが、本システムの使い方になります。さらに詳しい使い方は別途、冊子でもお配りさせていただきますわ。ご質問があれば、ご遠慮なくいただけますよう。・・・はい、そちらの方。」
「あ、あ、あの・・・一緒に記念撮影をお願いできますか?」
「・・・はい?」
こんな具合で食料の受発注システムは瞬く間に浸透した。慣れないシステムは受け入れられるのに時間がかかるかと思ったが、実際には「精霊様の御業を体験したい」ということで、みんながこぞってシステムを使いたがったらしい。テレビ電話機能も浸透し、ハルが毎日卸売会社まで足を運ぶ必要もなくなった。卸売会社は複数あるが、噂を聞きつけた会社が次々と「ウチにも精霊様の加護を」と連絡してきて、半月足らずで全ての取引先がこのシステムを導入することになった。はからずもスマートニャンは一般利用に先立って業務向けに展開することとなったが、一気に一般ユーザーに向けて展開するより、限定した人々の好意的な反応が見れてかえって良かったのかもしれない。
「ご主人様、なかなか素晴らしい計画だと思いますわ。まずは業務向けにスマートニャンを導入することで、後の一般利用への踏み台にしたのですね。」
「うん・・・まぁね・・・あと、ハルが大変そうだったから・・・うん・・・。」
「・・・?浮かないご様子ですわ。どうかしまして?・・・あっ、なんだかこの落ち込むパターン覚えがありますわ。」
「・・・そう、そうなんだよ。俺はこのシステム、お腹が空いたネコをイメージして『ネコペコシステム』が良いっていったのに、みんなエドがつけた『キャット・フード』がいいって言うんだ・・・。」
「私も『キャット・フード』のほうがオシャレで好きですわ。」
「・・・かわいいは正義じゃなかったのか・・・。」




