硝煙香るアイラブユー
【前回までのあらすじ】
・アリノス救出作戦始まる
「パワードスーツ部隊、何してるゥ!このクソネコどもをなんとかしやがれぇぇぇぇぇ!」
野盗たちは、突如として現れた謎のネコ集団にパニック状態だ。ついさっきまでノリノリで女たちが詰まったでかい装甲車をいたぶっていたのに、気がつくと虎の子の戦車が2台とも火を噴いてスクラップになっている。一見無害そうなネコの集団だが、バギーに乗った野盗の1人と接触するやいなや数匹で群がり、たちまち運転手の姿が見えなくなった。群がったネコが解散すると、残ったのは血に染まったネコの群れ、無人で走っていくバギー・・・完全にホラーである。戦場を見渡せば、そこら中で同じようにバギーがネコに襲われている。
「なんだなんだ、なんなんだこれは!死ねぇぇェェェェネコどもォォォォォ!」
パワードスーツの腕には火力の高いガトリングガンが装備されており、至近距離で弾丸をバラ撒かれればネコ軍団とて無事では済まない。しかし、パワードスーツが銃を構えた瞬間には、すでにその腕と身体はつながっていなかった。
「腕・・・俺の腕がぁぁぁぁ!」
ネコの軍団に混ざる1匹の黒いナマモノ。そいつから発射された緑のプラズマ弾が、パワードスーツの弱点である関節部分を正確に撃ちぬき、ガトリングガンごと腕をもぎ取っていた。パワードスーツが慌てて残った腕での反撃を試みるが、大きくジャンプした黒いナマモノが機体に飛び乗ってきて、背中の巨大なプラズママシンガンを器用に身体の下、パワードスーツのコックピットに向ける。
「やっやっやめ」
至近距離でプラズママシンガンのバースト射撃を浴びたパワードスーツは、機体に大きな穴を開けて崩れ落ちた。地面に着地したナマモノ・・・クロは、頭の上にシロが乗っていることを確認してから、次の獲物を求めて走りだす。その尻尾は歓喜に満ちてちぎれんばかりに振られ、頭上のネコは我関せずと言わんばかりに大きなあくびをした。
アリノスの屋根の上では、狙撃銃を構えた女性が突然の援軍に呆気にとられていた。手に持っていた愛用の銃を落としそうになって我に返ったのはファイアーアントのリーダー、ミリィである。ほとんど絶望的な状況・・・部下たちは野盗に捕まるぐらいなら、と車内で自害の準備をしていた・・・そんな状況がみるみるうちに覆されていく。
無限に湧いてくるかのようだったバギーはあっという間にネコの群れに食い尽くされ、こちらの火力ではキズひとつ付けられなかった3機のパワードスーツはいつの間にか1機しか残っておらず、しかも今は黒いナマモノから逃げ回っている・・・あ、死んだ。
背後に張り付くように迫っていた装甲車は、攻撃はしてこないがどこまでもピッタリとアリノスにくっついていた。汚らわしい野盗を満載しているであろう装甲車は不気味で恐ろしく、ミリィや仲間たちの精神力を確実に削いでいた。しかしその装甲車も今、側面から強力な砲弾を打ち込まれて爆発し、搭乗員ごと木っ端微塵に吹き飛んだ。戦況は逆転し、しかもほぼ決していると言えた。残った僅かな野盗たちはネコの群れから逃げ回り、悲鳴をあげて去っていく・・・いや、去ろうとしたところで後ろから撃たれていた。この様子では、ひとりも生き残らないだろう。
収束しつつある戦場の中、ネコの集団をかき分けてアリノスの近くに走ってきたのは・・・見覚えがある一台のトラックだった。
「あれは・・・ランス銃砲店のトラック?」
「そうデスよ。ミリィサマ、助けにきまシタ。」
声に驚いて振り返ると、いつの間にか背後に見慣れない男が立っている。その顔はどこまでもイケメンだ。
「こんなにアゴがとがってる知り合いはいないけど・・・その声、ウォーリーなの?」
「おっとそうデシた。我はイケメンに生まれ変わってしまったのデス!」
「そ、そうなの・・・?わたしは・・・前の方が良かったかなぁ・・・。」
「えっ・・・マジでスカ?」
ホログラムが消えて、ウォーリーの顔が元の四角い箱に戻った。戦場の音に混じって、「おかしいですわね・・・こんなはずは・・・」というマキちゃんの声が聞こえた。
「わざわざ助けに来てくれたの?・・・いえ、それよりもどうしてここが?」
「ふふん!ミリィサマのピンチなら、いつでもどこでも我には分かるのデス!」
胸を張るウォーリーを見て、ミリィは笑った。戦場に似つかわしくない、ぱっと華やかな花が開いたような、そんな笑顔だった。
「あはははは・・・どうして?どうしてわかるのさ?」
ミリィの質問に、ウォーリーはひざまずき、手を差し出しながら言った。
「それは・・・アナタを愛しているからデス。」




