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脱出

「起きてくださいご主人様。私は物理的な身体がございませんので、『目覚めたら、美人メイドのひざ枕でドッキリ!』ができませんわ。」


目覚めると、山のような炊飯器ザルの残骸と、見覚えのない黒い犬ロボットが目に入った。地面には血だまり。これは俺の血だろう。


自分の身体をチェックするが、怪我はもうどこにもない。感覚もしっかりしている。


「おはようございます、ご主人様。当面の危機は排除いたしましたので、ご安心ください。マキの素晴らしい手腕をお褒めいただいても結構ですし、褒めていただけない場合は口汚く罵りつつ、その冷たい態度を記憶領域の最深部に保存して、300年は恨みがましい発言を行いますのでご承知おきくださいませ。」


ホログラムのマキちゃんがいつの間にか現れていて、状況を説明してくれる。どうやらプラズマライフルの木から自立兵器を生産して、敵を皆殺しにしてくれたらしい。ここは素直にべた褒めしておく。


「ありがとうマキちゃん。キミがいなかったら俺は死んでいたかもしれない。心からお礼を言うよ。素晴らしいメイドを持って、俺は幸せだ。」


「どうしてご主人様は素直にお礼が言えないんですか・・・って、えっ・・・あっ・・・?」


「キミは最高だ。カワイイし。」


「おっ・・・おおおおお・・・?」


「死ぬほど感謝してる。」


「へっ・・・ふへへへへへ・・・メイドとして、当然のことですわ・・・当然の・・・ふへへ」


俺のリアクションが思っていたのと違ったらしい。よく考えたら褒めるのは100年ぶりぐらいかもしれない。真っ赤になって、とろけそうである。なんかこういう時は可愛いなコイツ。また100年ぐらい褒めないでおこうかな。


しばし休憩しつつ、マキちゃんからプラズマライフルの木について、分かったことを説明してもらう。


今まで発見したプラズマライフルの木は、どれもプラズマライフルしか実らせていなかったが、実際にはかなり多様なものを作り出せるらしい。犬ロボットのような自立兵器、パワードスーツ、爆発物、テレビや冷蔵庫・・・。色々なモノの設計図がコード化されて、木の中に保存されているようだ。場合によっては、こちらから新しいデータを木にアップロードして、望むものを生産させることができるかもしれない。これはおもしろいな。後で試してみよう。


「ところでご主人様、その度を越したナチュラルファッションはなんとかしてくださいまし。ご主人様の貧相な身体は大好物ですが、他に人間を発見した際に不都合かと思います。」


言われて気づいたが、俺の身体は食いちぎられたボロ布がわずかに残っているだけで、ほぼ全裸である。万能のナノマシンも、衣類までは面倒を見てくれないようだ。


「先ほどワンちゃんに周囲を偵察してもらいました。300メートルほど東に、別のプラズマライフルの木がございますわ。ここにある木は枯れてしまいましたから、あちらで何か作りましょう。」


犬ロボットを連れて移動し、新しいプラズマライフルの木から適当な衣類を生成してもらう。見た目はなんの変哲もない服だが、運動機能のサポートや光学迷彩機能などを搭載した、れっきとした戦闘用スーツなんだそうだ。


「衣服を生成したぐらいでは、プラズマライフルの木への影響も少ないようですわね。ついでに自立兵器も増やしておきましょうか。本当は私のボディを生成したいのですが、さすがにアンドロイド用機体のデータはありませんわね。」


「えっ、別に腕時計のままでいいじゃん・・・。マキちゃんが実体持ってたら確実にウザ」


「なにかおっしゃいまして?」


「なんでもないです。」


そこからの旅は順調だった。道中、またプラズマライフルの木を発見したので、犬ロボットを増産する。全部で3頭の犬ロボットが、俺の周りを囲むようにして歩いていく。最初に産まれて炊飯器を片付けてくれた個体をクロ、次に産まれたのを2号、最後のを3号と名付けた。


「ご主人様、モブっぽい名前をつけると、すぐにお別れすることになりますわよ。」


人工知能のくせに、ジンクスを気にする。やはりマキちゃんは変なヤツだ。


また何時間も歩き続けるが、先ほどまでの危険はまるで感じない。時々、何かの危険な機械が襲ってきていたようだが、俺の視界に入る前に3連のプラズママシンガンが火を噴いて片付けてしまう。ちなみに犬ロボットに対してマキちゃんが設定した保護優先順位は、


最優先保護対象:マキちゃん(腕時計)

通常保護対象:俺


だそうだ。俺が不死身なことを考えれば合理的だが、なんとなく釈然としない。


それからまた何時間か歩いていくと、徐々に樹木の密度が減ってきた。動くものの気配も少なく、あたりもなんだか明るくなる。そして・・・


「抜けた・・・!ついにジャングルを抜けたぞ!」


「ご主人様、数日ぶりにヌケてよかったですわね。」


目の前に広がるのは、荒涼とした大地である。茶色く乾いた地面がどこまでも広がり、地平線の彼方には大きな岩山がいくつも見える。ジャングルを抜けたからといって、すぐに生きた人間に会えるわけではなさそうだ。それでもジャングルの閉塞感から解放され、とても気分がいい。


空には雲ひとつない、見事な快晴である。熱いくらいの日差しを堪能しながら荒野を歩いていくと、それは突然現れた。


轟音とともに目の前の大地が割れ、巨大なモンスターが地面から飛び出してきたのである。全長が30メートルはあろうかというそれは、よく見れば手足のついた大型のドリルであった。トンネル掘削用の重機が、ここでは地面の下で自由に生活しているらしい。いわば巨大モグラか。


「・・・俺たちをお迎えにきてくれた・・・わけではないよな?」


「ご安心ください。ご主人様はそんなに人に好かれるタイプではございません。それでもマキはいつも側にいて差し上げますわ。」


巨大なドリルが、信じられないほどの高速で回転し始める。ドリルの表面にプラズマ放電のイナズマが走る。これはドリル表面をプラズマで保護し、何百キロもメンテナンスなしで穴を掘り続けるための機能だ。もちろん、生身の俺が触れれば一撃で消し炭である。


その時、敵性存在を検知した2号と3号が、通常保護対象である俺と敵性存在であるドリルの間に素早く飛び出し、巨大モグラに向けて苛烈なマシンガン攻撃を開始した。しかし、ジャングルでは無双を誇ったプラズママシンガンも、巨大ドリルの前ではあまり効果的ではない。モグラのプラズマ防護を破れず、発射したプラズマ弾が霧散していく。


「2号、3号、下がれ!逃げるぞ!」


「ああこれ悪い予感がしますわね。ダメなヤツですわこれ。」


モグラが鼻先の巨大ドリルを横にひと振りすると、俺の目の前で2号と3号はまとめて木っ端微塵になった。


「にごうーーー!!さんごーーーーーう!!」


「だから言ったじゃありませんか。モブっぽい名前はダメだって。」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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