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ゾンビウサギ

【前回までのあらすじ】


・プラズマライフルの木で好きなもの作りたいけど、すごいスキャナが必要だよ

・町の近くの洞窟にあるらしい

・これがYURIの世界・・・ナァルホド・・・

「ここが例の洞窟です。・・・あれ、入り口のところになにかいるですね。」


俺たちはいつものようにトラックに乗って、スキャナがあるかもしれない洞窟の前にやってきた。メンバーは俺、ハル、エド、レイ、それからナナとシロクロの犬猫コンビである。ウォーリーも連れてきたかったが、ランスさんの手伝いが忙しそうなので置いてきた。



数時間前、ランスさんの店。ウォーリーは深刻な声で言った。


「もし、我のいない間に例の女性型アンドロイドが出たら・・・心配デス。」


「ウォーリー・・・お前・・・。」


「本当に何も出なければいいのデスが・・・。」


その言葉に胸が熱くなる。ウォーリーにはいつも守ってもらってばかりだ。ありがとう、ウォーリー。


「・・・そうだな、前回はお前の活躍がなければ全員無事に帰ることはできなかった。今回は付近をレーダーウサギが監視してるから大丈夫だよ。」


「そうデスか・・・。しかし、あのぱつんぱつんスーツを着た女性が出たら、いったい誰が高画質で録画するのデショウか・・・。」


「黙って店番してろ。」



トラックを洞窟から少し離れた位置に止めて、残りは徒歩でやってきた。ちなみに停車中のトラックが襲われると困るので、荷台にクロとシロを残す。いつものようにイヌのクロが寝そべり、その頭の上でネコのシロがアクビをしていた。彼らはいつも平和である。俺たちは今、洞窟の入り口から100メートルほど離れたところで様子をうかがっている。


「入り口のところにいるの・・・レーダーウサギじゃない?」


ハルが岩陰から身を乗り出し、双眼鏡を覗きながら言った。


「いやいや、レーダーウサギは全部ネッコワークで繋がってるから、いれば最初からわかるでしょ。なぁ、レイ?」


ホログラムのレイが顔をしかめている。


「・・・死んだはずの『ウサ156号』と確認したです。」


「・・・は?」


「洞窟の中で消し飛んだ4体のウサギの1体、ウサ156号と確認したです。・・・そんなはずはないのです。ちょっとこっちに呼んでみるです。」


レイが信号を送ると、ウサギはピクリと身体を震わせて、それからこちらに向けて跳ねてきた。俺たちの前までやってきて止まり、じっとこちらを見上げている。


「異常ありませんです。ネッコワークに接続、この通りコントロールも問題ないです。マジでウサ156号なのです。」


「電子的な異常は見られませんわね・・・。ご主人様、念のためにハードウェアを目視でチェックされることをお勧めいたします。」


静かにナナとついてきていたエドが、元気よく声をあげた。


「あ、先生!分解ならボクがやりますよ!」


うん、ハードウェアならエドに任せるのが1番だろう。俺の1000000倍ぐらいできるし。エドはさっそく背負っていたリュックを下ろし、工具を取り出す。


「エド、がんばってねー!」


「ううううううん!見ててね、ナナ!」


ナナの応援でやる気を出したエドが、携帯用のプラズマカッターを片手にレーダーウサギに近づく。身体の表面をくまなくチェックするが、特に異常はない。続いて内部をチェックしようとカッターを近づけた・・・その瞬間。


「うわっ!」


レーダーウサギの身体から、数本の黒い触手・・・触手というかケーブル・・・が飛び出し、うねうねと生き物のようにうごめいた。そしてケーブルの先端を一斉にエドに向けると、赤い光線を発射する。


「おっと!」


しかしエドは熟練のボクサーのような動きで上体を逸らして数本の光線を避ける。その反射速度はまるでナナを見ているようだ。エドに当たらなかった光線は、そのまま延長線上にいた俺の頭に穴を開け、貫通してどこかに飛んでいった。


「レイ!やりますわよ!」


「は、ハイッ!お姉さま!」


次の光線が発射される前に、身体から数本の触手を生やしたウサギは雷に打たれたようにしばらく身体を痙攣させ、パタリと倒れる。ネッコワークに接続されていたので、レイとマキちゃんによるハッキングで電子的に破壊されたのだろう。


「エド、だいじょうぶだった?けがしてない?」


ナナがエドに駆け寄り、上から下まで身体を触って無事を確かめている。エドは顔を真っ赤にして、しかしされるがままになっていた。


「だだだだ大丈夫だよ、ナナ。ナナの投げるボールに比べたら、レーザーなんて遅すぎて目を閉じてても避けられるさ。」


光学兵器が遅いわけねーだろ、とツッコミたいところだが、脳に穴を開けられたせいでイマイチ頭が回らない。っていうか弟子がナナを好きすぎて人類の壁を超え始めている。まだ7歳なのに。


「危なかったですが、ハードウェアを強制的に焼き切りましたので完全に無力化できたはずですわ。エド様、調査の続きをお願いできますか?」


「はい、先生!」


エドがテキパキと工具を取り出し、ウサギの解体を再開する。マキちゃんが俺を振り返って言った。


「今のウサギ、ネッコワークへのハッキングも同時に行っていました。もちろんこちらのセキュリティ対策は完璧ですので被害はまったく受けませんでしたが・・・。とにかくこのウサギ、普通の状態ではありませんわね。・・・あ、撃たれた場所は大丈夫でしたか?」


「そんなついでみたいに心配するなら黙っててくれた方がマシだよ・・・。」


エドがウサギから部品を取り外して、地面に整然と並べていく。触手がどこから生えているのかを観察してみたら、体内の黒い器官から伸びているようだった。


「この黒い器官ってなに?」


俺の質問に、エドは首を振った。


「わかりません。器官というか、寄生しているナマモノみたいですけど・・・。」


「寄生?ウサギはこの黒いのに寄生されてたの?」


すると今度はレイが出てきて疑問をぶつけた。


「でもご主人さま、ウサ156号は5日前にが死んでるです。粉々になって。」


「んー・・・んー?じゃあなんなのこれ?実はウサ156号じゃないとか?」


「ウサ156号です。間違いないです。ね、マキ姉さま。」


「そうですね・・・確かに個体の識別コードも一致しますし、その後の行動記録と照らし合わせても、洞窟に浸入する直前のウサ156号と細かいキズなどが一致します。ウサ156号と考えて間違いないですわ。」


粉々になって死んだウサギが、何かに寄生された状態で生きていた?みんなが頭を抱えていると、ナナの元気な声が響いた。


「おとーさん、いこうよ!いったらわかるよ!」


ナナが元気に洞窟を指差している。うん、一理あるな。ここで頭をひねっても答えは出そうにない。


「よし、洞窟内を調べよう。俺が光学迷彩で先行するから、みんなは十分に安全な距離をとってついてきてくれ。」


こうして俺はまず、単独で洞窟への浸入を開始した。すでに服に搭載された光学迷彩を起動し、姿を消している。焼け付くような日差しが差し込む荒野から一歩洞窟に入ると、ひんやりとした空気が顔に触れた。まるで別世界だ。


『洞窟の入り口付近に動くものの気配はない・・・このまま進むよ。みんなはもう少し、洞窟の外で待機して。』


声を出せないので、俺が神経接続でマキちゃんに話しかけ、それをネッコワークでレイに転送して通信している。


『わかった。気をつけてね、にーさん。』


『師匠、危なそうならすぐに戻ってくださいね!』


『おとーさん、わるいやつがいたらナナにまかせてね!』


みんなの応援の声が聞こえてきて、洞窟の雰囲気に負けそうな心が温かくなった。


『にーさん。』


『どうした、ハル?』


『光学迷彩を見破るナマモノもいるから、本当に注意してね。・・・あ、さっき撃たれたところ、大丈夫だった?』

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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