クロ登場
「グギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャグギャギャギャ」
おびただしい数の炊飯器が群がっている。プラズマライフルの木の下にある人間の肉を食い尽くさんと、小高い山のように積み上がる。血のりがべったりとついた1体の炊飯器ザルが山を離れ、ゲップと大きな音を立てた。おそらく最初に人間にかじり付いた個体だろう。腹一杯に肉を食べ、満足したようだ。
満腹の炊飯器ザルがふと近くにあったプラズマライフルの木を見上げると、見慣れない、黒い果実がぶら下がっているのに気がついた。果実はどんどん大きくなっていく。食えるものだろうか?腹一杯のはずの炊飯器ザルだが、考えるのは食うことと増えることだけである。そうこうしている間にも、プラズマライフルの木はみるみる枯れて葉が落ち、ミシミシと乾いた音を立て始める。まるで黒い果実に命を吸い取られているようだ。弱っていく木に反比例して、果実はどんどん大きくなった。
やがて炊飯器ザルより大きくなった果実は、木から落ちた。いや、木から離れると、くるりと回転して静かに、4本の足で着地した。
そこにいたのは果実ではない。黒光りする、鋼鉄の犬、であった。
産まれたばかりの鋼鉄の犬は、赤く光る目で周囲をザッと見回すと、少しだけ身をかがめる。すると犬の背中が左右に割れ、中から物騒な銃器が飛び出した。食われている男が持っているものより一回り以上大きい、大口径のプラズママシンガンである。
それは、背中から巨大なマシンガンを生やした犬であった。
正式名称は「マークテック社製 汎用4足型自立兵器BDG-9000 タイプ2」。通称サンダードッグ。純粋な戦闘用の自立兵器である。
肉に群がって大騒ぎしている炊飯器ザルが事態に気がつく前に、すべては終わっていた。犬の背中のマシンガンが、緑の閃光をばら撒きながら一回転する。次の瞬間、周囲100メートル以内に動くものは存在しなかった。
残骸の山から、小さな人影が出現する。マキちゃんのホログラムである。どうやらご主人様の左腕と腕時計は、まだ喰われずに存在しているらしい。
「よしよし、よくやったわね。あとで首輪を付けてあげますからね。それとも犬だから、ご褒美は骨とかがいいのかしら。ちょうどそこに、ご主人様の大腿骨が転がってるけど・・・よかったらどうぞ?」
犬はクゥン、とひと鳴きして首を傾げた。




