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ナナちゃんといっしょ

【前回までのあらすじ】


・みんなで重機狩りに行くッス

・重機の群れが何かに追われて町を踏み潰しそうッス

・ネコ使い氏に作戦があるッス

「それじゃあおとーさん、とぶよ?」


ナナが俺を片手で持ち上げながら言う。彼女は俺の返事を待つこともなく地面を蹴り、俺とナナの身体はロケット花火のような勢いで大きく飛び上がった。正直、恐怖で叫びだしそうになったが、ナナの手前血がにじむほど歯を食いしばって耐える。だっておとーさんだもん。目指すは重機の群れの先頭を走る巨大なショベルカーだ。



さかのぼること5分前。マキちゃんの立てた作戦はこうだった。


「作戦は簡単です。ご主人様が重機の先頭から数台をハッキングして進路を変更するのです。」


俺がぽかんとしながら聞いていると、ランスさんが深くうなずきながら言った。


「なるほどな。ほとんどの重機は群れの流れについてきているだけだ。先頭の何台かの進路を変えることができれば、残りの何十台っつう重機たちはそれについていくってわけか。」


「確かにそれなら重機の進路を変えられそう!弾薬も節約できるから、化物の相手をしなきゃいけないことになっても安心ですね!さすが精霊様!」


ハルも作戦に納得したようで、可愛らしくガッツポーズしながら言った。でも待ってハルさん、大事なことが抜けてるよ。皆が関心して盛り上がる中、俺はおずおずと言う。


「あの・・・ハックって、重機に乗っかるぐらい接近しないといけないと思うんだけど・・・?」


「はい、乗っかるんですよ。ご主人様が。」


マキちゃんが「何を当たり前のことを言ってるのかしら、このイモムシは?」という顔で俺を見る。


「・・・それ、俺じゃなくてもよくない?ウォーリーとかの方が得意だよ?飛び乗るのとか・・・。」


「我は持病の建設現場アレルギーが発症するのデ、重機に乗るのは不可能ですネ。」


「ウォーリー、適当な病気をでっち上げる必要はありません。あなたは進路変更が間に合わず一定のラインを超えた重機が発生した場合にそれをレールガンで仕留める役割があります。ご主人様のクソ貧弱なクソ体格ではレールガンを撃つどころか持ち上げることすらままなりませんわ。」


「ぐぬぬ」


「ランス様、ハル様、ガイ様はご主人様がハックする間、狙撃銃でサポートをお願いします。野生のショベルカーは勝手に背に乗られるとショベルで攻撃してきますので、それを妨害してほしいのですわ。」


「走行できなくなるほど撃ったら意味ないッスからね。ショベルカーのアームだけ撃てばいいってことッスね!」


ガイの言葉にマキちゃんがうなづく。


「クロはウォーリーのサポートをなさい。シロは付近の高台から通信のサポートと戦況の観測。エド様は危険なのでランス様から離れませんよう。」


「はい、先生!」


的確に指示を出すマキちゃんに、俺はまたもおずおずと質問する。


「・・・あの、いくら俺が運動サポート機能がついた服を着てても、走ってくる重機に飛び乗るとか・・・できる気がしないんだけど・・・。」


「ご安心ください。ご主人様の運動神経がナメクジ以下なのは重々承知しておりますわ。ナナ!」


「はーい、ナナはなにするの?おかーさん!」


「お父さんを頼みましたよ。」


「まーかーせーてー!」


「ものすごく嫌な予感がする」



そして5分後の現在。俺はナナと空中にいる・・・あれ、まだ空中にいるんだけど飛びすぎじゃない?


「えへへへへへーーーーー!とびすぎちゃったぁーーーー!」


「ナナ、なんだか楽しそうだね?」


「うん、おとーさんといっしょだから!はりきっちゃった!」


イタズラっぽく舌を出すナナは本当に可愛らしく、青空をバックに彼女自身が太陽のように輝いている。・・・俺、この戦いが終わったら娘と遊びに行くんだ。今決めた。ようやくジャンプが頂点に達し、身体を強烈な落下感が襲う。慣れない自由落下と迫る地面に尿的な何かが漏れそうになるが、下半身に力を込めてなんとか耐える・・・耐え・・・あっあっ


「はいちゃくちー!だいせいこうだよ、おとーさん!」


ナナは着地の瞬間に長い髪の毛先からプラズマパルスを放射してふわりと地面に降りた。見事にショベルカーの車体の上である。俺はさりげなく自分のズボンを触るが・・・大丈夫だ、そんなに量は出てない。パンツで止まってる。大丈夫だぞ。


「ご主人様、私は気にしたりしませんわよ。」


「・・・俺が気にするんだよ・・・。」


ショベルカーの運転席にあたる部分には、シートもハンドルもレバーもない。代わりに大きな黒くて四角い箱がドカンと設置されている。これはショベルカーの脳にあたるコンピュータだと、マキちゃんが教えてくれた。


「マキちゃん、野生の重機の構造に詳しすぎじゃない?」


「ユニオンにハッキングした際、ついでに大量に保存されていた文書データを拝借してきたのですわ。そこに野生の機械の調査報告書が多数含まれておりました。手書き文書をスキャンしただけの雑なデータでしたので、私の方で構造化したデータに再編しましたが。」


その再編したデータ、ユニオンの人たちにプレゼントしたら喜ばれそうだな。それはさておき、頭上から大きな物体が迫ってきた。ショベルカーのアーム、まさにショベル部分が俺たちを叩き落そうとしているのである。俺の知っているショベルカーはこんなに柔軟にアームが動いたりしないものだが、野生の機械ともなると勝手が違うらしい。ショベル部分をよく見ると、口のようなものが見える。


「おおっ食われる!食われるよ!」


「これは草食機械ですから食べられたりはしませんわ。叩き落されるだけです。」


「草食機械ってなに!?初めて聞いた!」


ナナが片手で軽々とショベル受け止めると、すぐにアームの関節部分が撃ち抜かれてへし折れてねじ切れ、地面に落ちていった。ランスさんたちによる狙撃だ。


「見事な射撃ですわね。ナナ、コネクタの露出作業をお願いします。」


「はーい、おかーさん!」


脳にあたるコンピュータは目の前にあるが、遠隔ハッキングするにも接続できるコネクタがないとどうにもならない。ナナが運転席に鎮座する大きな箱の真ん中あたりを指でほじくると、見慣れたコネクタが姿を現した。完全にコネクタを塞いでいた金属の装甲を指先のプラズマで優しく取り除いたらしい。揺れる車体の上でやるにしてはかなり細かい作業、軽くやっているが相当な離れ業である。うちの子すごい。


「それではハッキングを開始します・・・完了しました。」


早っ。1秒もかかっていない。


「ネッコワークに同期しましたので、ある程度は離れてもコントロール可能です。次の重機に飛び移りましょう。ナナ、お願いね。」


「はーい!おとーさん、いくよ!」


ナナが俺を軽々と持ち上げ、ジャンプの体制に入る。だが待てよ。俺はひとつ、重大な事実に気づいてしまった。


「待って!待って!・・・これ、ナナとマキちゃんだけでよくない?俺、いなくてもよくない⁉︎」


「・・・。」


ナナはそっと俺を地面に降ろす。その顔を見ると・・・あれっ泣きそう!歯を食いしばってプルプルしている。


「ナナナナナナナナナナナナちゃん⁉︎どうした⁉︎」


「おとーさん、ナナといっしょ、いやなの・・・?」


「そそそそそそそんなわけないだろー!おとーさんはナナが大好きだよ!ずっと一緒だ!おかーさんも!な!な!」


「・・・ほんと⁉︎ほんとに⁉︎」


「ええ、もちろんですよ、ナナ。」


「やったぁー!ずっといっしょ!おとーさん、おかーさん、だいすき!」


ナナは勢いよく俺を持ち上げ、先ほどより張り切ってジャンプした。踏み台にされたショベルカーの車体が大きく歪み、俺たちの身体は爆発するような勢いで空中に飛び上がる。俺はまた歯を食いしばり、下半身に力を込め・・・込め・・・あっあっ


「最低でも5台はハッキングする必要があると推測されます。張り切って参りましょう。」

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勇者様はロボットが直撃して死にました
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