自宅が一番
【前回までのあらすじ】
・ユニオン大脱出
・マキちゃんのドS炸裂
・ネチネチとマキちゃんサマに怒られてミタイ
「おとーさん、おかえりーーーーーーーーーーーーーーー!」
家の庭先に着陸した飛行機を降りると、ナナが残像を生じるほどの速度で抱きついてきた。背骨がゴキリと音を立てて口から内臓が飛び出しそうになるが、グッとこらえてナナの小さな身体を抱きとめる。後からすぐにハルとエドも駆け寄ってきて、みんなで抱き合って再会を喜んだ。離れたところでクロとシロが日向ぼっこしているのが見える。お前たち俺に興味なさすぎだろ。しばらくそうしていると、ノシノシと店の方からランスさんが歩いてきた。
「信じられねぇが、その様子だと全部終わったみてぇだな・・・。お前さんのことだから、ユニオンを地上から消滅させてきたのか?それとも皆殺しか?」
「ランスさんって俺のこと、なんだと思ってるんです・・・?」
「詳しくは私の方からご説明させていただきますわ。」
マキちゃんがユニオンでの出来事をかいつまんで説明すると、みんなは驚いて聞いていた。今までちゃんと説明していなかったので、ついでに俺が旧文明の人間であることや、基本的に不死身の身体であることも一緒に説明する。「基本的に不死身」っていうと基本プレイ無料、みたいで安っぽい感じがするな。説明を聞いていたハルは俺が不死身と知っても驚かなかった。薄々分かっていたのかもしれない。
「え、歳も取らないの?ちなみに、にーさんっていくつ?」
「450歳くらい。」
「ご主人様、意味もなくサバを読まないでくださいまし。冷凍されている期間を除いて517歳、冷凍期間も加えると推定で4017歳ですわ。」
「ええええええええ!今のが1番びっくりした!20歳くらいだと思ってた!」
「ハル様、精神年齢は10歳くらいですので、問題ありませんわ。」
しばらくぶりにみんなで雑談を楽しみ、その横ではナナがウォーリーの身体を整体師のように曲げたり引っ張ったり伸ばしたりしている。サリーのパンチを食らったウォーリーの合金製骨格はひどく歪んでしまったので、無理やり整形して歪みを補正してやる必要があるのだそうだ。逆にいえば、おおざっぱに補正さえすれば骨格の細かい歪みは使っているうちに治っていくらしい。なかなか優秀な身体だ。しかし全てのパーツや人工筋肉が元に戻るわけではなく、深刻なダメージを受けた部品のいくつかは交換が必要である。どうやって貴重で入手困難なサイボーグの部品を調達したものか。すぐ歩ける程度には回復するだろうけど、不完全な状態では激しい戦闘はこなせないだろう。しばらくウォーリーが活躍しそうな荒事が起きないことを祈るしかない。
「つぎはひだりうで。えーい!」
「ギェェェェェェ!サリー氏のパンチよりも激烈に痛いデス!ナナサマ相手ではさすがに興奮しまセン!いきなり18歳ぐらいに成長してほしいデス!っていうか整体する時は頭部を外させてくだサイ!グェェェェ!」
「つぎはせぼねー!」
「ギャァァァァァァァ!聞いテ!話を聞いテ!」
久々の我が家を楽しんでいると、エドが見てほしいものがあると言って、店の裏手に連れて行かれた。そこにあったのは綺麗に分別されて並べられた人間の頭、それから壊れたサイボーグの身体やそこから外れた部品。数十体分のサイボーグがバラバラにされ、分別されたうえで地面に並んでいる。頭はみんな生きているようだが、どの頭も目だけでこちらをちらりと見ただけで黙っている。
「・・・なにこれ?」
「師匠の留守中に襲撃してきたサイボーグです。みんなでがんばってやっつけたんです。ぼくもピストルを撃ったんですよ!当たらなかったけど。」
そんなことがあったのか・・・と感心しながらエドの頭を撫でてやり、山のような残骸を見た。すると、マキちゃんが神経接続で話しかけてくる。
『ナナとクロの戦闘記録によれば、襲撃してきたサイボーグの総数は88人だそうです。そのうち75人がナナ、残りがランス氏、クロ、シロによって撃破。大半は深夜に浸入したところをナナが静かに処理した模様です。』
『深夜に静かに、ってことは・・・。』
「毎日寝て起きると、壊れたサイボーグが山ほど庭に転がってるんですよ。クロってすごいんですねぇ!」
エドはクロがやったものと思っているらしい。好きな女の子が素手でサイボーグを引きちぎる姿を目撃せずに済んだ彼の初恋はまだまだ続きそうだ。まぁナナが人間じゃないと分かったところでエドの気持ちは変わらない・・・それどころか余計に燃え上がるような気もするけど。
それにしてもこのサイボーグたちはおそらく、サリーの命令で俺の家族を誘拐しにきた連中だろう。人質にしようとしたのか、それとも町を消滅させるついでに殺してしまったら俺がヘソを曲げると思っただけか。それはサリーにしかわからない。
「しかし綺麗に分別してあるな。これはサイボーグ用の小型ジェネレーターの山。こっちは比較的損傷が少ないボディの山・・・おっ、あっちは千切れた人工筋肉の山かな?」
「はい、師匠が使い道を決めやすいように分別してみました!使ってもよし、売る時も素材ごとにまとまっているので簡単ですよ!」
「おお・・・なんてできる弟子なんだ。」
「本当に、エド様はご主人様の3^57741倍は気が利く方ですわ。」
「な、何倍だって?」
それにしても助かった。これだけ部品があったら、あと100回はウォーリーの身体がくの字に曲がっても修理できそうだ・・・保管場所を確保する必要はあるが・・・。考えを巡らしながら山を見ていると、生首の中に見覚えのある顔を見つけた。
「ポッチさんじゃん?お久しぶりだね。」
「うるさい、殺せ。」
それは最初に俺を誘拐しにきたポッチ少佐だった。あの時は怖かったけど、今となっては親しみすら感じる。その時、ウォーリーの整体を終えたナナが駆けてきた。
「あ、おとーさんとエド、こんなところにいた!キャッチボールしよー!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!やめろ!なんでも喋る!助けて!」
すっかりキャッチボールがトラウマらしい。なんかごめんよ。
生首には用がなかったので全てまとめて乗ってきた垂直離着陸機に詰め、自動操縦でユニオンに送り返すことにした。飛行機を手放すのはもったいない気もするけど、大量の生首を手元に置いておくよりいいだろう。
「またね、ポッチさん。」
「スライダーは嫌だスライダーは嫌だスライダーは嫌だカーブはもっと嫌だ・・・」
ポッチさんはブツブツ呟いていて会話にならなかった。残念。さて、あとはウォーリーの身体を修理してやれば問題は全て解決、今まで通りの生活に戻れるはずだ。
「ウォーリー、そこにいたか。サイボーグの部品が山ほど手に入ったよ。傷んだ部分の部品を交換するからランスさんの作業場を借りよう。」
「承知デス・・・。ぜひ頭を取り外してから作業して欲しいデス。」
「もちろんですわ、ウォーリー。さすがに頭部を接続したまま去勢するのは残酷ですもの。」
「ゲッ・・・マジで勘弁デス!我の大事なおちんちん!」
まだぎこちない動きのウォーリーが逃げ出そうと歩き出す。追いかけようと庭を見た時、ナナが妙に大きなボールでエドとキャッチボールしているのが目に入った。エドはキャッチする度にボールの重さに負けて尻もちをついている。
「ちゃんととってよぉ、エドぉぉぉぉ!」
「そんなこといったってナナ、これボールじゃないし、なんかヌルヌルするし・・・」
げっ。どうやら生首をひとつ、飛行機に詰め損ねていたらしい。
「カーブは嫌だカーブは嫌だカーブは嫌だカーブは嫌だカーブは嫌だカーブは嫌だフォークはもっと嫌だ・・・」
政府の脅威編おわり。次回から新章です。




