オリジナルソング
「ふんふ〜ん♪私のご主人さ〜ま〜は〜♪クソダサイモ野郎〜♪ふんふ〜ん♪」
真っ暗な空間に、コンピュータの画面が大きく映し出されている。それを眺めながらオリジナルソングを口ずさんでいるのは、美術品のように美しい銀髪のメイド・・・マキである。
ここはプラズマライフルの木と腕時計の間に構築された電子的空間。のんびりしているように見えるが、現実世界の何万倍も高速に時間が流れているため、実際にはほとんど時間が止まった空間といっていい。
マキは今、完全に支配下においたプラズマライフルの木からあらゆる情報を引き出し、どのような操作が可能かを調べていた。
「ご主人さ〜ま〜は〜♪たぶんホモォ〜かロリコォン〜♪美しくて可愛らしくてユーモアに富んだ私にぜんぜん〜や〜さ〜し〜く〜な〜い〜♪イカレやろ〜う〜♪」
最初の作戦としては、単純にプラズマライフルの木を爆発させることを想定していた。プラズマ兵器を生産できるということは、あえて不完全なプラズマドライブを生成し、大規模な爆発を誘発させることが可能なはずだ。爆発で周囲数百メートルを吹き飛ばせば、炊飯器ザルをまとめて始末できるだろう。ご主人様も派手に吹き飛ぶだろうが、ほっといても再生されるから問題ない。自分の本体である腕時計が少し心配だが・・・衝撃にはかなり強いはずだし、ある程度なら自己修復も可能なのでおそらく大丈夫だろう。
しかし、木から情報を収集するにつれ、より有効な作戦が実行できることを知った。この木から生産できるのはプラズマライフルだけではなかったのだ。なぜ今まで見つけた木の全てでプラズマライフルばかりが実っていたのかは分からないが、本来はかなり多彩な兵器を実らせるらしい。
「メイドにも〜興味ない〜♪私のアイデンティティ〜♪アイデンティティが完全崩壊〜♪崩壊ティティ〜♪」
現状を打破するのに最適な兵器をリストアップし、シミュレーションを繰り返す。最適な候補を選ぶのに、それほど時間はかからなかった・・・現実時間でも0.1秒ほどだろう。また、木の寿命を大きく消耗するかわりに、高速で兵器を実らせることができることも知った。設定は完了・・・生きた木に設定というのもおかしな感覚だが・・・。とにかくこれで完璧、あとは実行コマンドを送るだけ。この木は優れた兵器を急速に実らせるため、大きく寿命を削られて間もなく枯れてしまう。少しだけ申し訳ないが、ご主人様の安全には変えられない。
「クソ変態ハッキングオタク〜♪それが〜♪ごしゅ〜じん〜さまぁ〜♪マジでムカつく〜♪イラつく〜♪ボディをよこせ〜♪」
コマンド実行。ご主人様、今、お助けしますわ。死ぬほど感謝してくださって結構ですわよ。
「でも〜好き好きイモ野郎〜♪」